130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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G. General Session

[1poster39-68] G. General Session

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM G1-1_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[G-P-25] Vertical displacement of an active fault discovered at the western side of Lake Nojiri-ko, northern part of Nagano Prefecture

*Yoshihiro TAKESHITA1, Megumi SEKI2, Yoichi KONDO2, Kuniaki HANAOKA, Tadashi MIYASHITA, Chizuko NAKAGAWA3, Daisuke HIROUCHI1, Geological Research Group for Nojiri-ko Excavation (1. Shinshu Univ., 2. Nojiriko Naumann Elephant Museum, 3. Iiyama High School)

Keywords:Active fault, Vertical displacement, Nagano Prefecture, Lake Nojiri-ko, Tephra

長野県北部の野尻湖西方において,断層露頭と北東南西方向に6kmほど追跡できる変動地形が発見され(竹下ほか,2020;廣内・竹下,2020),向新田断層と仮称された(竹下ほか,2021).断層露頭では約30kaの姶良Tnテフラ層の降灰層準が断ち切られている.本研究では向新田断層の垂直方向の変位量を明らかにすることを目的として,トレンチ調査およびボーリング掘削を実施した.
 向新田断層西側(上盤側)の向新田(標高657.40m地点)において,幅約2m,長さ約10m,深さ約2.5mのトレンチ(MT22)を掘削し,地層断面を観察した.MT22は離水した段丘上に位置し,地表から深さ約1.5mと2mにおいて赤褐色スコリア層と赤褐色スコリアまじり暗灰色石質火山礫層が,砂質シルト層(陸水成層)中に挟まれることを確認した.これらのテフラ層は,その層相と他のテフラ層との層序関係から,野尻湖地質グループ(1984)の[赤スコ]と[青ヒゲ]にそれぞれ対比される.さらにMT22では[赤スコ]と[青ヒゲ]が,直径30cm,深さ10cm程度の窪みを埋めている様子も確認できた.詳しい形状(足印)や行跡は確認できなかったものの,それらの大きさや長さ10mしかないトレンチの断面に多数の窪みが確認できたことから,この窪みは足跡化石である可能性が高い.なお,池尻川低地東側の国道18号野尻バイパスにともなう発掘では[赤スコ]に覆われるナウマンゾウの足跡化石が多数見つかっている(長野県埋蔵文化財センター,2004).以上のことから[赤スコ]や[青ヒゲ]が堆積した当時,MT22の周辺は砂質シルトが堆積し,それらが変形可能な場所,すなわち岸辺のような環境(水際)であったと考えられる.一方,断層東側(下盤側)の池尻川低地(標高651.07m地点)でボーリング掘削を実施し,全長18mのコア試料(IJ20コア)を採取した.本コアの深度8.0~7.8mで泥炭層に挟まれる[赤スコ]と[青ヒゲ]を確認した.以上のような状況から,[赤スコ]と[青ヒゲ]が堆積した当時,MT22とIJ20周辺はほとんど標高差がなかったと推定される.それが現在では,MT22の[赤スコ]は標高655.90m,[青ヒゲ]は標高655.40mに,IJ20の[赤スコ]と[青ヒゲ]は標高643.30mに位置するため,下位の[青ヒゲ]を基準とすると両地点間で約12mの標高差が認められる.なお[青ヒゲ]は約4.4万年前に噴出したと見積もられている(長橋・石山,2009).
 さらに向新田断層の下盤側にあたる赤川左岸の低地(標高645.40m地点)と上盤側の伝九郎新田(標高645.33m地点)においてボーリング掘削を実施し,AK21コア(全長18m)とDS22コア(全長10m)を採取した.AK21コアの深度16.18~9.70mとDS22コアの深度7.05~1.75mは、角閃石斑晶の目立つ安山岩礫が多数含まれる亜円礫層で構成される.角閃石斑晶の目立つ安山岩礫は,両コアを採取した地点の近くを流れる赤川の河床にはほとんど見られないため,この礫層が堆積した当時,現在とは異なる水系が存在していたと推定される.両コアの礫層は,同じ河川によって形成されたと考えられ,堆積当時の礫層の上面はほぼ同じ高さにあったはずである.しかし,現在この礫層の上面は,下盤側のAK21コアで標高635.70m,上盤側のDS22コアで標高643.58mに位置しているため,約8mの標高差がある.さらに,AK21コアの亜円礫層直上の黒褐色砂質泥炭層(深度9.70~9.65m)から約3.3万年前の14C年代値を得た.したがって,向新田断層は,約3.3万年前以降,垂直方向に約8mの変位をもたらしたと考えられる.
 以上のように,向新田断層を挟んで上盤側と下盤側の地下地質を調査した結果,本断層は断層露頭の北東側では最近の約4.4万年間に約12m,同露頭の南西側では最近の約3.3万年間に約8m,垂直変位をもたらしたことが明らかになった.これらの値に基づくと向新田断層の垂直方向の変位速度は約0.25mm/yrとなる.しかし,断層露頭では断層面がフラットに近いため,真の変位量はより大きくなる可能性が高い.

引用文献:廣内・竹下(2020)日本活断層学会2020年度秋季学術大会講演予稿集,24-25.長橋・石山(2009)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,17,1-57.長森ほか(2003)戸隠地域の地質,産総研地質調査総合センター,109p.長野県埋蔵文化財センター(2004)一般国道18号(野尻バイパス)埋蔵文化財発掘調査報告書3,208p.野尻湖地質グループ(1984)地団研専報,27,23-44.竹下ほか(2020)日本活断層学会2020年度秋季学術大会講演予稿集,22-23.