[J1-P-11] Simple way of measuring volcanic gases using alkaline filter paper method at Sakurajima Volcano area.
★日本地質学会ジュニアセッション優秀賞★
研究者氏名:(地象気象班)吉井 由,近森たお,長瀬楽々,川田代航汰,河元千代乃,鎌田美舞菜
私たちが住まう鹿児島県には11の活火山があり、火山防災は喫緊の課題といえる。そこで火山活動を把握し、最終的には活動の予知を行いたい。そして、そのために火山ガスの組成(種類と濃度の割合)を求めることにした。それは桜島がHF,HCl,SO2等の火山ガスを常時噴出しており、東京工業大学の平林が、火山ガス組成と火山活動の関係性に関して報告しているからである。一方、鹿児島県、市はSO2については大気観測所で観測を行っているがHF,HClは計測を行っていない。そこで高校生が,濃度比から噴火活動との関連を調べ、広域な火山ガス(HCl,HF,SO2)の濃度分布を把握するために簡単に火山ガスの濃度を測定できて、大気観測において実績のあるアルカリろ紙法による火山ガスの簡易捕集法と自作吸光度計による測定を行い、データを蓄積して、火山活動と照合した。
アルカリろ紙法とは、塩基が付着したろ紙に酸性ガスを中和反応で吸着させるものであり、Na2CO3 水溶液(70g/L)にろ紙を入れた後に簡易デジケータ内で乾燥させたろ紙(10×2cm)をつけて、一晩乾かしたものを用いた。そして、降灰や降雨からろ紙を守るために簡易曝露架台「ソーダ君」(図1、2)を作成、その中にろ紙を入れ、1週間から1ヶ月ほど県内15か所で調査を行った(図3)。
屋外設置を終えたアルカリろ紙からサンプルを作成して、「輝ちゃん」(図4、5)を用いた化学分析を行った。青色LEDと受光素子であるSiフォトダイオードを用いた。基板,針金とハンダを用いて組み立て、遮光には,黒色の薄いプラスチックを用いた。使用する際は,光を完全に遮断する。
HClには硝酸銀水溶液を用いて塩化銀比濁法を行う。SO2には塩化バリウム水溶液を用いて硫酸バリウム沈殿法にて濃度を行う。HFにはSPANDS試薬を用いて赤色の褪色を用いて濃度を測定した(図6)。
いずれにおいても試薬との反応前後の測定値を記録し、吸光度を求め、検量線(図7~9)に代入し濃度を求める。検量線は標準溶液(HClにはNaCl水溶液、SO2にはNa2CO3水溶液)を用いて作成した。
昨年4月から12月までの各地の火山ガス採取量の質量をまとめたものが図10である。また図11は桜島南岳火口から最も近い赤水における火山ガス観測の結果である。これらの結果から我々のアルカリろ紙法でHCl、HF、SO2の測定が可能だということが分かる。
また、火山ガスの比率と噴火活動を照合するために、火山ガスの捕集量から求めた、Cl-/SO2、F-/SO2、 Cl- /F-の三種類のモル比/日と期間内の噴火回数の1日辺りの平均値を比較した。東京工業大学の平林は、HCl/SO2比が大きくなる時に火山活動が活発になることと、 それ以外にCl-/F-と、Cl-/SO2には逆相関があることを報告している(図12)。それを踏まえて我々の結果を見てみる。図13は桜島内の赤水における3種類の比率と期間内の噴火回数を求めた物で、棒が噴火回数、折れ線が比率を表し、縦が比率と回数を、横が観測期間を表す。Cl-/SO2が小さいときには噴火数も小さくなることが分かり、また、Cl-/F-が大きくなった後に、噴火が増え、 Cl-/F-が小さくなった後に噴火が減少する傾向が見られ、これも平林と一致し、我々は独自の方法で火山ガスの捕集を行うことができ、さらに測定した値から火山ガスの比率の振る舞いを割り出すことができ、将来的には火山ガスの予知ができるかもしれない。
今後の目標としては、現在のソーダ君は流入する空気の量が一定でないので、強制換気機能付きサンプラーを作成することや火山ガスのみでなく、火山灰にも注目し、火山灰を化学分析してみることなどをしたい。また、火山ガス観測を妨害しうる、海塩粒子や風向きによる影響を検証していきたい。
キーワード:火山ガス、アルカリろ紙法、簡易曝露架台、自作吸光度計、比濁法
私たちが住まう鹿児島県には11の活火山があり、火山防災は喫緊の課題といえる。そこで火山活動を把握し、最終的には活動の予知を行いたい。そして、そのために火山ガスの組成(種類と濃度の割合)を求めることにした。それは桜島がHF,HCl,SO2等の火山ガスを常時噴出しており、東京工業大学の平林が、火山ガス組成と火山活動の関係性に関して報告しているからである。一方、鹿児島県、市はSO2については大気観測所で観測を行っているがHF,HClは計測を行っていない。そこで高校生が,濃度比から噴火活動との関連を調べ、広域な火山ガス(HCl,HF,SO2)の濃度分布を把握するために簡単に火山ガスの濃度を測定できて、大気観測において実績のあるアルカリろ紙法による火山ガスの簡易捕集法と自作吸光度計による測定を行い、データを蓄積して、火山活動と照合した。
アルカリろ紙法とは、塩基が付着したろ紙に酸性ガスを中和反応で吸着させるものであり、Na2CO3 水溶液(70g/L)にろ紙を入れた後に簡易デジケータ内で乾燥させたろ紙(10×2cm)をつけて、一晩乾かしたものを用いた。そして、降灰や降雨からろ紙を守るために簡易曝露架台「ソーダ君」(図1、2)を作成、その中にろ紙を入れ、1週間から1ヶ月ほど県内15か所で調査を行った(図3)。
屋外設置を終えたアルカリろ紙からサンプルを作成して、「輝ちゃん」(図4、5)を用いた化学分析を行った。青色LEDと受光素子であるSiフォトダイオードを用いた。基板,針金とハンダを用いて組み立て、遮光には,黒色の薄いプラスチックを用いた。使用する際は,光を完全に遮断する。
HClには硝酸銀水溶液を用いて塩化銀比濁法を行う。SO2には塩化バリウム水溶液を用いて硫酸バリウム沈殿法にて濃度を行う。HFにはSPANDS試薬を用いて赤色の褪色を用いて濃度を測定した(図6)。
いずれにおいても試薬との反応前後の測定値を記録し、吸光度を求め、検量線(図7~9)に代入し濃度を求める。検量線は標準溶液(HClにはNaCl水溶液、SO2にはNa2CO3水溶液)を用いて作成した。
昨年4月から12月までの各地の火山ガス採取量の質量をまとめたものが図10である。また図11は桜島南岳火口から最も近い赤水における火山ガス観測の結果である。これらの結果から我々のアルカリろ紙法でHCl、HF、SO2の測定が可能だということが分かる。
また、火山ガスの比率と噴火活動を照合するために、火山ガスの捕集量から求めた、Cl-/SO2、F-/SO2、 Cl- /F-の三種類のモル比/日と期間内の噴火回数の1日辺りの平均値を比較した。東京工業大学の平林は、HCl/SO2比が大きくなる時に火山活動が活発になることと、 それ以外にCl-/F-と、Cl-/SO2には逆相関があることを報告している(図12)。それを踏まえて我々の結果を見てみる。図13は桜島内の赤水における3種類の比率と期間内の噴火回数を求めた物で、棒が噴火回数、折れ線が比率を表し、縦が比率と回数を、横が観測期間を表す。Cl-/SO2が小さいときには噴火数も小さくなることが分かり、また、Cl-/F-が大きくなった後に、噴火が増え、 Cl-/F-が小さくなった後に噴火が減少する傾向が見られ、これも平林と一致し、我々は独自の方法で火山ガスの捕集を行うことができ、さらに測定した値から火山ガスの比率の振る舞いを割り出すことができ、将来的には火山ガスの予知ができるかもしれない。
今後の目標としては、現在のソーダ君は流入する空気の量が一定でないので、強制換気機能付きサンプラーを作成することや火山ガスのみでなく、火山灰にも注目し、火山灰を化学分析してみることなどをしたい。また、火山ガス観測を妨害しうる、海塩粒子や風向きによる影響を検証していきたい。
キーワード:火山ガス、アルカリろ紙法、簡易曝露架台、自作吸光度計、比濁法