130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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J1. Junior Session

[1poster69-93] J1. Junior Session

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM Jr._poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[J1-P-21] Verification of seasonal change in water temperature of Minowa spring, northwest Shimousa upland, Ichikawa city, Chiba prefecture

*Earth science club Ichikawa Gakuen Ichikawa high school1 (1. Earth science club, Ichikawa Gakuen Ichikawa high school)

研究者氏名:児嶋 悠斗

 千葉県北部の地形の大部分は,約12万年前の海底が隆起してできた下総台地と縄文時代に海底だった低地から構成される.この下総台地と低地の縁にあたる急崖からは,湧き水が湧出しており,この湧き水は,涵養域にあたる台地に降った雨が地下に浸み込み,地下水となったものである.この急崖から湧き水が湧出する現象は,丘陵や台地内にある各段丘面の急崖や台地と低地の縁の急崖において,普遍的に見られるものである.
 急崖からの湧き水を調査することは,湧き水をつくる涵養域の環境を知る上で有効的な指標となることが知られている.例えば,成宮ほか(2009)は,東京都西部の日野台地および多摩丘陵において豪雨後と晴天時の水質の比較を行い,水温の季節変化の大きな湧水は豪雨後,湧出量が増大して上で電気伝導度が明瞭に低下したが,季節変化の小さな湧水はこれらの値に変化が見られないことを明らかにした.また,松山ほか(2019)は東京都西部秋留台地において湧水の涵養域環境の変化(例えば,農地面積の減少,下水道普及率の上昇)が水質に影響を与えることを示している.
 本研究の調査地域である美濃輪湧水は,千葉県市川市北東部に位置し,下総台地の縁の急崖から豊富に湧き水が湧出する場所の1つである.美濃輪湧水については,Thiほか(2009)が雨水浸透施設を用いた注水と湧出量の量的検討を行っており,涵養域を明らかにしている.また,宇山(2022)は2020年9月から2022年1月に美濃輪湧水の降水と水質の関係性,美濃輪湧水の水温の季節変化について明らかし,美濃輪湧水の湧出特性の検討を行っている.その結果,美濃輪湧水の水温は夏期のみ高くなるという特異的な傾向があることを明らかにし,さらに気温のピークよりも先に水温のピークが現れることを示した.しかし,この結果は台地の縁から湧出する一般的な湧き水には見られない特徴であることから,原因追求を目的として池田ほか(2022)が追加調査を行っている.その結果,2022年4月から8月の水温は,ほぼ一定であり,宇山(2022)が示している秋や冬の水温と比較しても大きな違いはないことから,水温は年間を通してほぼ一定で夏期のみ水温が高くなることはないと結論付けている.このことから,宇山(2022)が観測した2021年夏期のみ水温が高くなった原因の究明には至らなかった.
 そこで,本研究では宇山(2022)が示した2021年夏期に現れた水温上昇の原因追求を目的として美濃輪湧水のデータを継続的測定した結果を公表する.測定しているデータは,宇山(2022)や池田ほか(2022)と同様の測定方法及び同じ機材を用いて,気温,水温,pH,RpH,電気伝導度を計測した.なお,現段階で2023年夏期も顕著な水温上昇は見られていない.しかし,2022年11月上旬から中旬の時期のみ水温が約2.0℃高くなることが観測された.この期間の水温上昇は,宇山(2022)では測定されていない.つまり,美濃輪湧水は夏期に特異的な温度上昇を示すのではなく,涵養域における何らかの環境要素が要因で季節変化に関係なく,水温上昇を起こす湧き水であると考えられる.なお,本研究の水温上昇時期の気温は水温よりも低く,再確認も行っているので測定ミスの可能性はない.本発表では,この水温上昇の原因追及として,涵養域の調査や降水量との関係について検討した結果・考察を発表する予定である.

【引用文献】
池田幹央ほか,2022,日本地質学会第129年学術大会第20回日本地質学会ジュニアセッション.;松山 洋ほか,2019,水文・水資源学会誌,32,231-244.;成宮博之ほか,2009,水文・水資源学会誌,22,223-234.;Thi Haほか,2009,第17回地球環境シンポジウム講演集,17,121-130.;宇山李紗,2022,日本地球惑星科学連合2022年大会.

【keyword】
美濃輪湧水,下総台地,市川市