10:45 AM - 11:00 AM
[T2-O-4] (entry) Metamorphic P-T path of pyroxene-bearing felsic granulite occurring in the Bohemian Massif, Czech Republic
Keywords:Bohemian Massif, granulite, garnet, pyroxene, pressure-temperature path
ヨーロッパのヴァリスカン造山帯の東端に位置するボヘミア地塊には高圧から超高圧変成作用を受けた変成岩類が産出する。その中核部を占めるモルダヌビア帯の構造的最上位には、主に珪長質グラニュライトからなるGföhlユニットがあり、その中にはザクロ石橄欖岩やエクロジャイトの岩塊も含まれる。Gföhlユニットには珪長質グラニュライトで最も大きな岩体とされるBlanský les岩体がある。今回、その岩体から減圧期に形成された二次的な輝石を含む珪長質グラニュライトを発見したので、その記載と減圧期の温度圧力履歴の制約を与える。
本研究では、チェコ共和国南部のBlanský les岩体の中央部に位置するZrcadlová Hut’採石場(以降ZHと略す)で採取された試料を扱う。 ZHに産する珪長質グラニュライトの主要な構成鉱物はザクロ石、石英、斜長石、カリ長石、黒雲母である。輝石を含む珪長質グラニュライトは比較的細粒なザクロ石(直径2mm未満)と黒雲母を多く含む。マトリクス中には斜方輝石が存在し、単斜輝石+斜長石のシンプレクタイトも含まれている。ザクロ石中の包有物は石英、長石、黒雲母が主であり、一部のザクロ石には斜方輝石と斜長石の組合せの包有物を含むことがあり、ザクロ石周辺には斜方輝石と斜長石のコロナを形成する場合もある。斜方輝石とザクロ石の間には斜長石があり、両者は接しない。また、輝石のみがザクロ石中に包有された包有物は見られなかった。このグラニュライトには藍晶石は含まれてはいないが、スピネル+斜長石シンプレクタイトを囲むザクロ石コロナが含まれており、もともと藍晶石があったことを示唆する。また、同採石場では藍晶石を包有物としてもつザクロ石を含む珪長質グラニュライトが存在し、昇温型累帯構造をもつザクロ石を含むことがある。
輝石を含む珪長質グラニュライト中のザクロ石の化学組成はコアからリムにかけてFeが増加する累帯構造を示した。また、この輝石を含む珪長質グラニュライト中のザクロ石はグロシュラー成分を多く含み(Xgrs > 0.16)、コアからリムにかけてCaが減少する累帯構造をもつものも見られた。
マトリクス中の黒雲母のMg#は50-70で、包有物の黒雲母は50-80にばらつき、フッ素と塩素も含む。フッ素量はマトリクス中の粒子と包有物の両方で0.11-0.36 apfu(O = 11)の範囲にわたる。塩素量は最大0.044 apfuであり、ほとんどが0-0.016 apfuの範囲内である。
輝石の化学組成について、斜方輝石のMg#は51-62であり、Al量のほとんどは0.01-0.06 apfu(O = 6)の範囲にあり、Al量が0.07 apfu以上のものはザクロ石中に斜長石と存在する斜方輝石のものであった。単斜輝石のMg#は68-73で差は見られなかった。
長石の化学組成ではマトリクス中のもの、ザクロ石中の包有物のもの、単斜輝石とシンプレクタイトを成すものとそれぞれ異なる傾向が見られた。マトリクス中の斜長石はNaに富むものが多く(XAn= 0.2-0.4)、ザクロ石中の包有物はCaに富む傾向が見られた(XAn= 0.4-0.6)。単斜輝石とシンプレクタイトを成す斜長石はXAn=0.3-0.5の組成を示した。カリ長石の化学組成はXKfs>0.8で包有物とマトリクスで差は見られなかった。
地質温度圧力推定には、Grt-Bt温度計(e.g., Hodges & Spear, 1982)とGrt-Ky-Qz-Pl圧力計(Koziol & Newton, 1988)、両輝石地質温度計(Bertrand & Mercier, 1985)を使用した。冷却型累帯構造を持つザクロ石のコア、Fe-Mg鉱物と接しないマトリクスの黒雲母と斜長石の組成を使用して求めると、約1.9-2.1 GPa、850-950℃の推定温度圧力が得られた。両輝石地質温度計からは斜方輝石と単斜輝石が接する粒子の組成を用いると、1.0GPaにおいて700-750℃の温度が得られた。一方で、別試料の珪長質グラニュライトの昇温型累帯構造をもつザクロ石のリム、マトリクスの黒雲母、包有物の斜長石の組成より約2.3GPa、1050℃の温度圧力条件が得られている。本試料中の輝石は組織的に減圧期に形成されたものであるが、両輝石地質温度計が示した温度は最高変成温度より少なくとも100℃以上低い。これらの珪長質グラニュライトはその減圧期に有意な冷却を伴っていたと考えられる。
引用文献
Bertrand & Mercier (1985) Earth Planet. Sci. Lett., 76, 109–122.
Hodges & Spear (1982) Am. Mineral., 67, 1118–1134.
Koziol & Newton (1988) Am. Mineral., 73, 216–223.
本研究では、チェコ共和国南部のBlanský les岩体の中央部に位置するZrcadlová Hut’採石場(以降ZHと略す)で採取された試料を扱う。 ZHに産する珪長質グラニュライトの主要な構成鉱物はザクロ石、石英、斜長石、カリ長石、黒雲母である。輝石を含む珪長質グラニュライトは比較的細粒なザクロ石(直径2mm未満)と黒雲母を多く含む。マトリクス中には斜方輝石が存在し、単斜輝石+斜長石のシンプレクタイトも含まれている。ザクロ石中の包有物は石英、長石、黒雲母が主であり、一部のザクロ石には斜方輝石と斜長石の組合せの包有物を含むことがあり、ザクロ石周辺には斜方輝石と斜長石のコロナを形成する場合もある。斜方輝石とザクロ石の間には斜長石があり、両者は接しない。また、輝石のみがザクロ石中に包有された包有物は見られなかった。このグラニュライトには藍晶石は含まれてはいないが、スピネル+斜長石シンプレクタイトを囲むザクロ石コロナが含まれており、もともと藍晶石があったことを示唆する。また、同採石場では藍晶石を包有物としてもつザクロ石を含む珪長質グラニュライトが存在し、昇温型累帯構造をもつザクロ石を含むことがある。
輝石を含む珪長質グラニュライト中のザクロ石の化学組成はコアからリムにかけてFeが増加する累帯構造を示した。また、この輝石を含む珪長質グラニュライト中のザクロ石はグロシュラー成分を多く含み(Xgrs > 0.16)、コアからリムにかけてCaが減少する累帯構造をもつものも見られた。
マトリクス中の黒雲母のMg#は50-70で、包有物の黒雲母は50-80にばらつき、フッ素と塩素も含む。フッ素量はマトリクス中の粒子と包有物の両方で0.11-0.36 apfu(O = 11)の範囲にわたる。塩素量は最大0.044 apfuであり、ほとんどが0-0.016 apfuの範囲内である。
輝石の化学組成について、斜方輝石のMg#は51-62であり、Al量のほとんどは0.01-0.06 apfu(O = 6)の範囲にあり、Al量が0.07 apfu以上のものはザクロ石中に斜長石と存在する斜方輝石のものであった。単斜輝石のMg#は68-73で差は見られなかった。
長石の化学組成ではマトリクス中のもの、ザクロ石中の包有物のもの、単斜輝石とシンプレクタイトを成すものとそれぞれ異なる傾向が見られた。マトリクス中の斜長石はNaに富むものが多く(XAn= 0.2-0.4)、ザクロ石中の包有物はCaに富む傾向が見られた(XAn= 0.4-0.6)。単斜輝石とシンプレクタイトを成す斜長石はXAn=0.3-0.5の組成を示した。カリ長石の化学組成はXKfs>0.8で包有物とマトリクスで差は見られなかった。
地質温度圧力推定には、Grt-Bt温度計(e.g., Hodges & Spear, 1982)とGrt-Ky-Qz-Pl圧力計(Koziol & Newton, 1988)、両輝石地質温度計(Bertrand & Mercier, 1985)を使用した。冷却型累帯構造を持つザクロ石のコア、Fe-Mg鉱物と接しないマトリクスの黒雲母と斜長石の組成を使用して求めると、約1.9-2.1 GPa、850-950℃の推定温度圧力が得られた。両輝石地質温度計からは斜方輝石と単斜輝石が接する粒子の組成を用いると、1.0GPaにおいて700-750℃の温度が得られた。一方で、別試料の珪長質グラニュライトの昇温型累帯構造をもつザクロ石のリム、マトリクスの黒雲母、包有物の斜長石の組成より約2.3GPa、1050℃の温度圧力条件が得られている。本試料中の輝石は組織的に減圧期に形成されたものであるが、両輝石地質温度計が示した温度は最高変成温度より少なくとも100℃以上低い。これらの珪長質グラニュライトはその減圧期に有意な冷却を伴っていたと考えられる。
引用文献
Bertrand & Mercier (1985) Earth Planet. Sci. Lett., 76, 109–122.
Hodges & Spear (1982) Am. Mineral., 67, 1118–1134.
Koziol & Newton (1988) Am. Mineral., 73, 216–223.