10:00 AM - 10:15 AM
[T6-O-5] Re-examination of stratigraphy and distribution of the Middle to Upper Pleistocene Ryukyu Group in Kikai-jima, Kagoshima Prefecture, Japan -Preliminary results-
Keywords:Kikai-jima, Ryukyu Group, reef-complex deposits, sedimentary process, sea level change
鹿児島県喜界島には,鮮新統〜下部更新統島尻層群早町層を基盤として,下部更新統知念層,中部更新統琉球層群百之台層,上部更新統琉球層群湾層,ならびに上部更新統〜完新統砂丘砂層が分布する(中川,1969;松田ほか,2023).このうち琉球層群はサンゴ礁複合体堆積物からなり,百之台層(0.85〜0.45Ma)は,礁相(礁〜礁斜面)と島棚相(島棚〜島棚斜面上部)が鉛直方向に繰り返すアグラデーショナルな累重様式を示し,大きな岩相の側方変化は認められないのに対し,湾層(138〜40ka)は,MIS 5e以降のきわめて速い隆起速度(2.1〜2.3 m/kyr;Inagaki and Omura, 2006)により,正断層群で限られた標高の異なる段丘面に対応して,最終間氷期以降(MIS 5e〜3)の礁相と島棚相が比高差に応じて分布するオフラップ型の堆積様式を示す(太田・大村,2000;大村ほか,2000;Sasaki et al., 2004).百之台層と湾層のいずれも,喜界島全域に分布すると共に,最高位段丘や他の低位段丘にも分布する.しかしながら,現在用いられている喜界島の地質図(中川,1969)は,高位段丘に百之台層,低位段丘に湾層が分布する段丘地質学的観点で描かれたものしかない.そこで本研究では,これまで蓄積された露頭データと新たな調査による知見を基に琉球層群の分布を再検討すると共に,汎世界的海水準変動と顕著な隆起運動に呼応して形成された百之台層・湾層の岩相の上方・側方変化を明らかにすることを目的とした.
その結果,中部更新統百之台層はほぼ島全域に分布し,低位段丘にも広く分布する.特に島西部の川嶺から上嘉鉄北方の段丘(標高80〜40m程度)では,基盤の島尻層群早町層を不整合に覆い,礁相と島棚相が複数の層準で分布する.またコア試料と沈砂池露頭では,少なくとも3回の礁相と島棚相の繰り返しが確認される.百之台層の堆積年代は,石灰質ナンノ化石分析から0.85〜0.45Ma(松田ほか,2023),またESR年代測定から0.57〜0.65Maの年代が得られていること(Ikeda et al., 1991)から,百之台層はMIS 19〜13の間の氷期・間氷期サイクルのいずれかに対応して形成されたと推定される.
一方,上部更新統湾層は,島中央部の最高位段丘である百之台西部から島西部の荒木にかけて,複数の段丘面上に広く分布し,また島北西岸の伊実久地区と坂嶺〜池治地区,北東岸の塩道〜志戸桶地区の標高80 m以下にも分布する.特に島西部では,MIS 5e(115〜138 ka),MIS 5c(98〜104 ka),MIS 5a(79〜83 ka),MIS 4〜3(60〜70 ka,50〜60 ka,40 ka)の礁相のサンゴ石灰岩が,各々,百之台の上部(標高200m以上),百之台の下部(標高180m付近),中西台(標高160m付近),ならびに川嶺から荒木にかけて(標高80m以下)分布する.一方,MIS 5e・5c・5aの島棚相は中西台以下の低位段丘面上に分布する.これら多数の露頭データを基にした湾層の模式的なサクセションは,下位から,(A)石灰藻球石灰岩(島棚外側)→(B)コケムシに富む淘汰の悪い生砕性石灰岩(島棚斜面上部)→(C)石灰藻球石灰岩(島棚外側)→(D)石灰藻球を伴う淘汰の悪い生砕性石灰岩(島棚内側)→(E)造礁サンゴ礫を伴う淘汰の悪い生砕性石灰岩(礁斜面)→(F)現地性造礁サンゴからなるサンゴ石灰岩(礁域)からなり,その上位に(G)風成砂丘砂層(陸域)が重なる.高位段丘に分布するサンゴ石灰岩のウラン系列年代と分布高度から,このサクセションは,MIS 5c/5a間の亜氷期からMIS 2にかけての相対的海水準低下に伴い上方浅海化し,さらに陸化する過程を示すと推定される.一方,北西岸と北東岸の地域では湾層の分布は限られ,北西岸では,主に(B)のコケムシに富む淘汰の悪い生砕性石灰岩が分布し,しばしば平板型斜交層理を伴うが,(E)や(F)のような礁相は分布しない.一方,北東岸では,MIS 5aからMIS 3の(E)や(F)の礁相が,時代と共に次第に標高の低い地点へと分布が変化し,(B)〜(F)のサクセションの一部が認められる(Sasaki et al., 2004).これら地域による岩相の違いは,西部地域が島棚上の比較的広い平坦面に位置するのに対し,北西・北東岸地域は比較的急傾斜の島棚斜面に位置し,平坦面に乏しい潮汐流や海流の影響を受ける環境にあったと考えられる.
講演では,これらの結果に加え,現時点で明らかになった百之台層と湾層の詳細な分布について報告する.
その結果,中部更新統百之台層はほぼ島全域に分布し,低位段丘にも広く分布する.特に島西部の川嶺から上嘉鉄北方の段丘(標高80〜40m程度)では,基盤の島尻層群早町層を不整合に覆い,礁相と島棚相が複数の層準で分布する.またコア試料と沈砂池露頭では,少なくとも3回の礁相と島棚相の繰り返しが確認される.百之台層の堆積年代は,石灰質ナンノ化石分析から0.85〜0.45Ma(松田ほか,2023),またESR年代測定から0.57〜0.65Maの年代が得られていること(Ikeda et al., 1991)から,百之台層はMIS 19〜13の間の氷期・間氷期サイクルのいずれかに対応して形成されたと推定される.
一方,上部更新統湾層は,島中央部の最高位段丘である百之台西部から島西部の荒木にかけて,複数の段丘面上に広く分布し,また島北西岸の伊実久地区と坂嶺〜池治地区,北東岸の塩道〜志戸桶地区の標高80 m以下にも分布する.特に島西部では,MIS 5e(115〜138 ka),MIS 5c(98〜104 ka),MIS 5a(79〜83 ka),MIS 4〜3(60〜70 ka,50〜60 ka,40 ka)の礁相のサンゴ石灰岩が,各々,百之台の上部(標高200m以上),百之台の下部(標高180m付近),中西台(標高160m付近),ならびに川嶺から荒木にかけて(標高80m以下)分布する.一方,MIS 5e・5c・5aの島棚相は中西台以下の低位段丘面上に分布する.これら多数の露頭データを基にした湾層の模式的なサクセションは,下位から,(A)石灰藻球石灰岩(島棚外側)→(B)コケムシに富む淘汰の悪い生砕性石灰岩(島棚斜面上部)→(C)石灰藻球石灰岩(島棚外側)→(D)石灰藻球を伴う淘汰の悪い生砕性石灰岩(島棚内側)→(E)造礁サンゴ礫を伴う淘汰の悪い生砕性石灰岩(礁斜面)→(F)現地性造礁サンゴからなるサンゴ石灰岩(礁域)からなり,その上位に(G)風成砂丘砂層(陸域)が重なる.高位段丘に分布するサンゴ石灰岩のウラン系列年代と分布高度から,このサクセションは,MIS 5c/5a間の亜氷期からMIS 2にかけての相対的海水準低下に伴い上方浅海化し,さらに陸化する過程を示すと推定される.一方,北西岸と北東岸の地域では湾層の分布は限られ,北西岸では,主に(B)のコケムシに富む淘汰の悪い生砕性石灰岩が分布し,しばしば平板型斜交層理を伴うが,(E)や(F)のような礁相は分布しない.一方,北東岸では,MIS 5aからMIS 3の(E)や(F)の礁相が,時代と共に次第に標高の低い地点へと分布が変化し,(B)〜(F)のサクセションの一部が認められる(Sasaki et al., 2004).これら地域による岩相の違いは,西部地域が島棚上の比較的広い平坦面に位置するのに対し,北西・北東岸地域は比較的急傾斜の島棚斜面に位置し,平坦面に乏しい潮汐流や海流の影響を受ける環境にあったと考えられる.
講演では,これらの結果に加え,現時点で明らかになった百之台層と湾層の詳細な分布について報告する.