130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology【EDI】

[2oral201-10] T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Mon. Sep 18, 2023 8:45 AM - 12:00 PM oral room 2 (4-21, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Fumito Shiraishi(Hiroshima Univ.), Natsuko Adachi(Osaka Metropolitan Univ.)

11:15 AM - 11:30 AM

[T6-O-9] Climate change during the last 14000 years recorded in a stalagmite from Kiriana Cave, Mie Prefecture, Japan

Akira MURATA1, *Akihiro Kano1, Hirokazu KATO1 (1. The University of Tokyo)

近年,日本国内の石筍を題材に陸域古気候に関する研究が盛んに行われている。酸素同位体比,流体包有物,炭酸凝集同位体の研究結果は完新世中期に温暖な時期があり,日本列島では最終氷期からの気温上昇幅が8〜9℃程度であることが示されてきた(e.g, Kato et al., 2021)。三重県霧穴からも過去8.4万年間の記録が示され,酸素同位体比が海水の値を反映して,温度変化による数千年周期の変動パターンが示された(Mori et al., 2018)。また,霧穴付近で採集された雨水の酸素同位体比は降水量と有意な相関を示さず,降水量との相関は無いと指摘された(Kano et al., 2023)。海岸線から20 kmほどの霧穴では,水蒸気ソースはほぼ常に大平洋からの気団であり,降水の酸素同位体比は降水量や降水季節性の影響も受けにくい。すなわち,南部中国の石筍で示された量的効果の解釈は霧穴の石筍には適用できない。その代わりに,海水酸素同位体比が安定していた完新世では,霧穴での石筍酸素同位体比は温度記録として解釈できる。
この研究では,霧穴から採集された長さ35㎝の石筍(KA-01)を対象とした。この石筍の約20点の層準からU-Th年代が得られており,これが過去1万4千年に成長したことがわかっている。0.2㎜インターバルでKA-01の成長中心から削ったサブサンプルの酸素同位体比のトレンドから,成長期間は3つに区分できる。1つ目の14.0–10.3 kaでは、ヤンガードリアスに相当する寒冷化と,それに続く急激な温暖化が記録された。2つ目の10.3–6.8 kaには温暖な時期が続いたと考えられる。酸素同位体比からこの時期の平均気温は今より約2℃高かったと見積もられる。3つ目の6.8-1.2 kaの時期は気温が緩やかに低下する。一方,降水量は,炭素同位体比,Mg/Ca比,石筍の成長速度から定性的に見積もられる。降水量が大きいと滴下水が石筍に到達するまでに起こりうるCO2脱ガスと方解石沈澱が進まず,炭素同位体比は低い値に,Mg/Ca比は高い値に保持される。また,滴下水の供給量が多いと成長速度は大きくなる。この解釈は,炭素同位体比がMg/Ca比や成長速度と逆相関することからも支持される。降水量が最も多かったのは2つ目の時期(6.8-1.2 ka)であり,寒冷化が開始する6.8 kyr移行は降水量は除去に減少したと考えられる。すなわち,温暖な時期には霧穴での降水量が増加することが示された。温暖になると太平洋からの水蒸気蒸発量が増加し,より多くの水蒸気が霧穴にもたらされたのであろう。
文献:Kano et al., 2023, Island Arc, 32, E12491; Kato et al., 2021, Quat. Sci. Rev., 253, 106746; Mori et al., 2018, Quat. Sci. Rev., 192, 47-58.