130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology【EDI】

[2oral211-18] T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Mon. Sep 18, 2023 3:00 PM - 5:30 PM oral room 2 (4-21, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Yoshikazu Sampei, Yuya Yamaguchi(JAPEX)

4:45 PM - 5:00 PM

[T6-O-17] Development of source estimation method for sedimentary organic matter using ATR-FTIR

*Takuto Ando1, Kazumi Matsuoka2 (1. Akita University, 2. Nagasaki University)

Keywords:kerogen, palynomorph, palynodebris, amorphous organic matter, ATR-FTIR

堆積性有機物の大部分を占めるのは,有機溶媒と酸・塩基に不溶なケロジェンである。ケロジェンは,アモルファス有機物(amorphous organic matter: AOM),植物片などのパリノデブリ,花粉などのパリノモルフによって構成されている。パリノファシス分析では,蛍光特性からAOMをクチクラなどの破片からなるFA (fluorescent amorphous),水生生物由来のWFA (weakly fluorescent amorphous),陸上植物由来もしくは熱熟成をうけたNFA (non-fluorescent amorphous) に区分してきた [1]。パリノモルフについては,形態から分類が可能なものの,分類群が異なるのに非常に似通った形態をもつ場合が多く,なおかつ分類不明なアクリタークも多く存在する。近年,ATR-FTIRを用いた個別パリノモルフの高分子分析による化学分類研究が発展している。例えば,花粉 [2] や渦鞭毛藻シスト [3] の高分子構造の赤外スペクトルを用いた主成分分析やクラスター解析によってグループ分けする試みがなされている。本研究では,ケロジェン試料を用いて同定不可能な粒子も含めた個別のケロジェン粒子に関して顕微ATR-FTIRで分析した結果と堆積学的研究への応用への可能性を検討した。
まずは,河川(斐伊川水系)懸濁粒子中のAOMの構造の違いに着目した。その結果,色や形態的特徴から,静穏な川で特徴的な黄緑色から黄色の植物プランクトン由来の細胞片を含むWFAに似た特徴をもつOrange AOM,急峻な川で観察できる茶褐色の陸上植物片を含むNFAに似た特徴をもつBrown AOM,市街地を流れる川に多い全体的に黒色化したBlack AOMに区分できた。これらをそれぞれ単離してATR-FTIR分析をした結果,リグニンなどの陸上植物由来の有機物が特徴的に持つ芳香環を示すPhenolic OHがBrown AOMでOrange AOMより多く,メイラード反応を受けて生成するようなフラン環に由来するC-O-CのピークがBlack AOMでは多かった。以上のような特徴を利用して,アモルファス有機物の高分子組成から堆積環境や輸送課程を推測できる可能性がある。
また,検討例がすでにあるパリノモルフについても分析を行なった。現生種水生パリノモルフは大きくセルロース質とキチン質に二分できることがわかった。保存性が低い渦鞭毛藻 Alexandriumなどが形成する単純な楕円形~球形のシストは,主にセルロースからなる分枝多糖で構成されており,セルラーゼによって容易に分解されていると推測できる。一方で,堆積岩中でも残りやすいSpiniferitesなどの独立栄養性渦鞭毛藻が形成するシストの細胞壁は,セルロースに類似した糖鎖にアルキル鎖がネットワーク状に繋がることで保存性を高めていることが推測できた。従属栄養性渦鞭毛シストや繊毛虫のロリカ/シスト,有殻アメーバの殻,有孔虫ライニングなどはキチン質であり,主に糖鎖とペプチド鎖から構成される糖タンパク質で構成されていた。パリノデブリも含めたこれらの成分の分解の程度は,もともとの生体高分子の構造だけでなく堆積過程と密接に関連している可能性があるため,今後はそれぞれの生体高分子における続成過程の影響を詳細に議論していく必要がある。

[引用文献]
[1] Sawada et al. (2012): Kerogen morphology and geochemistry at the Permian–Triassic transition in the Meishan section, South China: Implication for paleoenvironmental variation. Journal of Asian Earth Sciences, 54, 78-90.
[2] Kenđel and Zimmermann (2020): Chemical analysis of pollen by FT-Raman and FTIR spectroscopies. Frontiers in plant science, 11, 352.
[3] Meyvisch et al. (2022): Attenuated Total Reflection (ATR) Micro-Fourier Transform Infrared (Micro-FT-IR) Spectroscopy to Enhance Repeatability and Reproducibility of Spectra Derived from Single Specimen Organic-Walled Dinoflagellate Cysts. Applied Spectroscopy, 76(2), 235-254.