5:00 PM - 5:15 PM
[T6-O-18] Improvement of operational efficiency in petrographic image analysis of sandstone assisted with semantic segmentation.
Keywords:quartzose sandstone, overgrowth, reservoir quality, cathodoluminescence, image anaysis, machine learning, semantic segmentation
石英質砂岩における主要かつ普遍的な埋没続成作用として、石英セメンテーションが挙げられる。炭化水素資源の探鉱開発における岩石性状評価対象としての関心からもそのメカニズムについては近年理解が大きく進み、岩石組織や埋没・被熱履歴との関係をモデル化することによる続成数値シミュレーションが実用的な性状予測ツールとして探鉱開発に利用されるようになっている(例えばAjdukiewicz and Lander, 2010; Taylor et al., 2015)。同時にその有効な利用に際しては、モデルパラメータ最適化のため、鉱物組成や岩石組織などのペトログラフィーに関する情報を地質試料から効率的・定量的に抽出することが重要となっている。
弊社においても、砂岩貯留岩を対象とした続成数値モデルの開発と並行し、岩石組織解析の一つのツールとしてコア試料の薄片試料を用いた元素・鉱物マッピングとその画像解析に関する開発・運用を進め、砂岩・火山岩などの社内プロジェクトへの利活用を行っている。とりわけ石英質砂岩を対象とするペトログラフィー評価においては、砕屑性石英粒子表面に付加成長した石英オーバーグロースの識別とその定量性が重要な評価項目となる。ホストとなる石英粒子と連続した光学方位を持つオーバーグロースは、光学顕微鏡下での識別は困難であり、有効な指標としてカソードルミネッセンス(CL)が用いられる。明暗様々な輝度を呈する砕屑性石英に比べて、オーバーグロースは概して単調かつ低輝度であることで、粒子と石英セメントの輪郭がトレース可能となる。しかしながら両者の輝度分布には一定の重複があるため、閾値による単純な二値化は困難であり、多大な時間を費やし画像解釈を行うか、もしくはCL画像自体は定性的・視覚的な利用にとどまることが多い。
本講演では砂岩薄片の画像解析、特に石英CL画像解析の効率化を目的とし、機械学習(セマンティックセグメンテーション)技術の適用を試みた事例について報告する。これは、社内既存プロジェクトの資試料から得た砂岩CL像(1000×1000 ピクセル相当、約700画像)について、石英領域のみを抽出したCL像とそれに対応するラベル付け(粒子-オーバーグロース区分および粒子―粒子接点分離)解釈画像の組み合わせを教師画像とするもので、U-netによるモデル構築を行ったものである。同モデルを用いた砂岩薄片の評価フローはおよそ以下の通りである。
(1) 岩石薄片の一定領域について、電子プローブ(EPMA)を用いた元素マッピング(SEM-BSE像、CL像を同時取得)を行い、相解析により鉱物マップを作成する。
(2) 鉱物マップ中の石英領域について、CL像に機械学習モデルを適用することで、砕屑性粒子―オーバーグロース区分と粒子―粒子接点の分離の自動解釈を行う。
(3) 石英粒子・オーバーグロース区別を反映した鉱物マップにおいて、鉱物種毎の画素数をカウントし、孔隙率を含めた鉱物含有量を面積比として算出する。
(4) 接点が分離された石英粒子画像について、粒子解析(粒子同定と各粒子の面積算出)を行い、三次元―二次元断面間の補正(stereological correction)を考慮し、石英粒子の粒径分布を求める。
構築したモデルは石英CL像における粒子―オーバーグロース識別能力をIoU(ジャッカード係数)を評価指標とする訓練を施したもので、教師画像に用いた試料とは時代・堆積環境の異なる砂岩層も含めた検証作業においても、高い予測性能を示した。また粒子接点分離は複数のモデルを組み合わせる(voting/アンサンブル学習)ことで分離性能の向上を図った。結果、石英セメント量・粒径分布(平均粒径・淘汰度)の推測値は続成数値モデルへの利用に充分耐えうる定量性を示した。従来こうした顕微鏡画像の評価には、手法の習熟と解釈作業のために多大な労力を必要としていたものであるが、当機械学習モデルを利用することで、常に同一基準での解釈作業とその大幅な時間短縮が可能となり、作業効率化への高い有効性を持つことが示された。
(文献)
Ajdukiewicz and Lander (2010) AAPG Bulletin, v. 94, no. 8, p. 1083–1091.
Taylor, Kittridge, Winefield, Bryndzia and Bonnell (2015) Marine and Petroleum Geology, v.65, p. 1-21.
弊社においても、砂岩貯留岩を対象とした続成数値モデルの開発と並行し、岩石組織解析の一つのツールとしてコア試料の薄片試料を用いた元素・鉱物マッピングとその画像解析に関する開発・運用を進め、砂岩・火山岩などの社内プロジェクトへの利活用を行っている。とりわけ石英質砂岩を対象とするペトログラフィー評価においては、砕屑性石英粒子表面に付加成長した石英オーバーグロースの識別とその定量性が重要な評価項目となる。ホストとなる石英粒子と連続した光学方位を持つオーバーグロースは、光学顕微鏡下での識別は困難であり、有効な指標としてカソードルミネッセンス(CL)が用いられる。明暗様々な輝度を呈する砕屑性石英に比べて、オーバーグロースは概して単調かつ低輝度であることで、粒子と石英セメントの輪郭がトレース可能となる。しかしながら両者の輝度分布には一定の重複があるため、閾値による単純な二値化は困難であり、多大な時間を費やし画像解釈を行うか、もしくはCL画像自体は定性的・視覚的な利用にとどまることが多い。
本講演では砂岩薄片の画像解析、特に石英CL画像解析の効率化を目的とし、機械学習(セマンティックセグメンテーション)技術の適用を試みた事例について報告する。これは、社内既存プロジェクトの資試料から得た砂岩CL像(1000×1000 ピクセル相当、約700画像)について、石英領域のみを抽出したCL像とそれに対応するラベル付け(粒子-オーバーグロース区分および粒子―粒子接点分離)解釈画像の組み合わせを教師画像とするもので、U-netによるモデル構築を行ったものである。同モデルを用いた砂岩薄片の評価フローはおよそ以下の通りである。
(1) 岩石薄片の一定領域について、電子プローブ(EPMA)を用いた元素マッピング(SEM-BSE像、CL像を同時取得)を行い、相解析により鉱物マップを作成する。
(2) 鉱物マップ中の石英領域について、CL像に機械学習モデルを適用することで、砕屑性粒子―オーバーグロース区分と粒子―粒子接点の分離の自動解釈を行う。
(3) 石英粒子・オーバーグロース区別を反映した鉱物マップにおいて、鉱物種毎の画素数をカウントし、孔隙率を含めた鉱物含有量を面積比として算出する。
(4) 接点が分離された石英粒子画像について、粒子解析(粒子同定と各粒子の面積算出)を行い、三次元―二次元断面間の補正(stereological correction)を考慮し、石英粒子の粒径分布を求める。
構築したモデルは石英CL像における粒子―オーバーグロース識別能力をIoU(ジャッカード係数)を評価指標とする訓練を施したもので、教師画像に用いた試料とは時代・堆積環境の異なる砂岩層も含めた検証作業においても、高い予測性能を示した。また粒子接点分離は複数のモデルを組み合わせる(voting/アンサンブル学習)ことで分離性能の向上を図った。結果、石英セメント量・粒径分布(平均粒径・淘汰度)の推測値は続成数値モデルへの利用に充分耐えうる定量性を示した。従来こうした顕微鏡画像の評価には、手法の習熟と解釈作業のために多大な労力を必要としていたものであるが、当機械学習モデルを利用することで、常に同一基準での解釈作業とその大幅な時間短縮が可能となり、作業効率化への高い有効性を持つことが示された。
(文献)
Ajdukiewicz and Lander (2010) AAPG Bulletin, v. 94, no. 8, p. 1083–1091.
Taylor, Kittridge, Winefield, Bryndzia and Bonnell (2015) Marine and Petroleum Geology, v.65, p. 1-21.