日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T12[トピック]地球史【EDI】

[2oral301-11] T12[トピック]地球史【EDI】

2023年9月18日(月) 08:45 〜 12:00 口頭第3会場 (4共30:吉田南4号館)

座長:佐藤 峰南(九州大学)、吉丸 慧(九州大学)、冨松 由希(九州大学)

09:30 〜 09:45

[T12-O-4] X線マイクロCT技術をもちいた生物源シリカの密度測定
― 放散虫骨格のタフォノミー解明に向けて

*松岡 篤1、木元 克典2 (1. 新潟大学、2. 海洋研究開発機構)

キーワード:生物源シリカ、放散虫骨格、タフォノミー、X線マイクロCT、密度

放散虫が内骨格として形成する生物源シリカはオパールA(アモルファスシリカ)からなる。オパールAは地層中でオパールCTをへて、最終的には石英へと変化する。この続成作用による相転移に関係して、放散虫骨格の保存状態が変化することが知られている。一般に、続成作用の進行とともに保存状態が劣化する。熱による変成作用が加わると骨格を構成する石英の粒度が大きくなり、さらに保存状況が悪化し、同定が困難あるいは不能となる。放散虫骨格のシリカ相の変化は、放散虫の群集組成にも影響を与え、その組成変化からもたらされる古環境解析の結果へも影響がある。しかしながら、放散虫骨格のタフォノミーについての研究例は多くはない。

 X線マイクロCT技術は、放散虫骨格の形状を明らかにするうえで画期的な方法である。3Dプリンターを使って模型を作成することにより、手のひらに載るサイズの標本を作成することができる。このことにより、大型化石の研究と同様に、目視で形状の特徴を認識できるようになった(Matsuoka et al., 2012)。このように放散虫骨格の形態解析の手法としてX線マイクロCT技術を適用してきたが、本研究では骨格の物性についての情報を得ることによりタフォノミー解明に資する新たな手法を見出したので報告する。

 X線マイクロCTにより得られた透過強度には、放散虫骨格の密度の情報が含まれている。現生放散虫および化石放散虫の骨格について、系統的に透過強度を測定したところ、シリカ相変化に対応する強度の違いが明らかになった。この強度の違いは骨格を構成するシリカの相対密度を示しているとみなされる。本手法では相対密度を定量的に表現できるだけではなく、密度の空間分布も認識できるところが優位な点としてあげられる。なお、本手法は放散虫の骨格のみならず、ケイソウやカイメンなど生物源シリカの殻・骨格の密度測定にも適用可能である。

文献:Matsuoka, A. et al., 2012. Exact number of pore frames and their configuration in the Mesozoic radiolarian Pantanellium: An application of X-ray micro-CT and layered manufacturing technology to micropaleontology. Marine Micropaleontology, 88-89.