4:30 PM - 5:00 PM
[T12-O-17] [Invited] Alkenone paleotemperature reconstructions in the Plio-Pleistocene sedimentary sequence around the Boso Peninsula.
【ハイライト講演】
世話人よりハイライトの紹介:房総半島周辺から関東平野に分布する鮮新−更新統には,有孔虫や放散虫などの微化石だけでなく,保存の良い有機分子化石が含まれている.梶田展人氏は,古気候・古海洋環境を復元するため最も有用な手法の一つであるアルケノンに基づく古水温復元を,房総半島に分布する堆積岩に初めて適用し,過去の黒潮変動や地球規模の気候変動の解明に大きく貢献する研究成果を挙げている.本講演では,更新世の温暖期におけるアルケノン古水温の変動と鮮新世の古環境復元を含めた今後の研究展望についてご紹介いただく.※ハイライトとは
Keywords:Alkenone, Paleotemperature, Shimosa Group, Kazusa Group, Awa Group
房総半島から関東平野にかけて分布する鮮新ー更新統(安房層群・上総層群・下総層群を中心とする)は、深海および浅海で堆積した陸源砕屑物と微化石を多く含む海洋堆積物から構成されている。これらの堆積年代は、テフラ対比、地磁気逆転境界、微化石層序によって制約されるほか、後期鮮新世以降に顕著になった氷床量変動に基づく酸素同位体比層序によって高精度に決定可能である。このような新しい時代の海底堆積物が、これほどの層厚にわたって連続的に露出しているのは、激しい変動帯である房総半島周辺以外には希少である。
房総半島は黒潮の北限域に位置しており、過去の海洋環境を高時間解像度で復元することは、氷期間氷期サイクルをはじめとする地球規模のシステム変動を解明する重要な情報となる。これまでに発表されてきた古気候・古海洋学的な先行研究では、主に、有孔虫・石灰質ナノ化石・放散虫といった微化石の指標が主に用いられてきた。一方で私は、殆ど扱われてこなかった有機分子化石に注目している。特に、円石藻が合成する長鎖不飽和ケトン化合物(アルケノン)を用いた古水温復元法は、高い定量性が担保されており、円石藻の進化過程におけるバイアスも少ないことから、異なる時代の古水温を統一的な手法で比較できる優れた手法である。さらに、有機分子化石の指標は微化石に比べて分析に要する時間が短く、層厚3000mを超える房総の地層を網羅的に分析することも現実的に可能である。
これまでの研究で、更新世における重要な間氷期(海洋酸素同位体比ステージ5,7,9,11,19,31)に該当する地層を中心に分析を行ってきた。今回の講演では、明らかになったアルケノン温度変動に対する解釈および、アルケノン温度復元法の課題について発表する。さらに、鮮新世の環境復元を含めた今後の研究展望について紹介する。
房総半島は黒潮の北限域に位置しており、過去の海洋環境を高時間解像度で復元することは、氷期間氷期サイクルをはじめとする地球規模のシステム変動を解明する重要な情報となる。これまでに発表されてきた古気候・古海洋学的な先行研究では、主に、有孔虫・石灰質ナノ化石・放散虫といった微化石の指標が主に用いられてきた。一方で私は、殆ど扱われてこなかった有機分子化石に注目している。特に、円石藻が合成する長鎖不飽和ケトン化合物(アルケノン)を用いた古水温復元法は、高い定量性が担保されており、円石藻の進化過程におけるバイアスも少ないことから、異なる時代の古水温を統一的な手法で比較できる優れた手法である。さらに、有機分子化石の指標は微化石に比べて分析に要する時間が短く、層厚3000mを超える房総の地層を網羅的に分析することも現実的に可能である。
これまでの研究で、更新世における重要な間氷期(海洋酸素同位体比ステージ5,7,9,11,19,31)に該当する地層を中心に分析を行ってきた。今回の講演では、明らかになったアルケノン温度変動に対する解釈および、アルケノン温度復元法の課題について発表する。さらに、鮮新世の環境復元を含めた今後の研究展望について紹介する。