130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T12[Topic Session]History of earth【EDI】

[2oral312-19] T12[Topic Session]History of earth

Mon. Sep 18, 2023 3:00 PM - 5:30 PM oral room 3 (4-30, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Yuki Tomimatsu, Daisuke Kuwano(Chiba Univ.)

5:00 PM - 5:15 PM

[T12-O-18] (entry) Spatial-temporal variation in ostracode assemblages and relationships with Kuroshio in the Kii-Channel, southwestern Japan

*Miyu TAKEUCHI1, Hokuto IWATANI1, Atsuko AMANO2, Toshiaki IRIZUKI3, Jun ARIMOTO2, Yoshiaki SUZUKI2, Takuya ITAKI2 (1. Yamaguchi University, 2. Geological Survey of Japan, AIST, 3. Shimane University)

Keywords:Kii-Channel, Kuroshio, Ostracod, Seto Inland Sea, Modern Analog Technique (MAT)

【はじめに】
紀伊水道は、瀬戸内海がフィリピン海と合流する海域にあたり、黒潮の動態やその流域の生物相や生物多様性の実態を解明するために重要な海域である。そこで、本研究は貝形虫をモデル生物として用い、紀伊水道における海洋生物相の時空間分布とその規制要因を明らかにすることを目的として研究を行った。貝形虫は、石灰質の2枚の殻を持つ体長1 mm程度の微小な甲殻類であり、生息する場所の水温や塩分などの変化に敏感に反応し、その個体数や種構成を変える(安原, 2007)ため、多変量解析に基づく古環境復元を適応できるほぼ唯一の後生動物である。調査海域の貝形虫(化石)相の研究は、紀伊水道南部の和歌山県沿岸においてZhou(1995)により行われ、紀伊水道北部の紀淡海峡周辺では、完新世コアを用いた貝形虫相の鉛直変化について検討が行われている(Yasuhara et al., 2002)。しかしながら、紀伊水道における現生貝形虫相の分布に関する知見は限定的であり(竹内ほか,2022)、近現代における貝形虫相の時系列変化の詳細も十分に明らかにされていない。本研究では、紀伊水道全域の貝形虫相の分布の詳細と、近現代における変遷史を報告する。
【結果と考察】
貝形虫分析は地質調査総合センターにより実施されたGKC21航海にて、K-グラブ採泥器により採取された表層堆積物試料およびアシュラ式採泥器により採取された柱状堆積物試料を用いた。結果として、表層堆積物26試料及び柱状堆積物6試料から62属119種の貝形虫が産出した。これらは日本の内湾域で普遍的に認められる種や黒潮流域に認められる種が主であった。
表層堆積物から得られた貝形虫群集に対し、Q-modeクラスター分析を行った結果、調査海域の現生貝形虫相は、内湾泥底種が卓越する湾奥部から西部沿岸域、内湾泥底種と暖流系種の混在群集によって特徴づけられる東部の湾中央部、暖流系種が優先的に産出する南部の湾口部の3つに明瞭に区分された。紀伊水道は、高温・高塩分の外洋水が湾口部から東岸に沿って流入し、低温・低塩分の沿岸水が西岸に沿って南下する水塊構造を持つことが知られる(藤原,2012)。黒潮由来の外洋水の流入経路と対応するように生物相が分布していることから、紀伊水道の生物相の分布は外洋水と沿岸水の水平・鉛直分布によって規制されている可能性が高い。
柱状堆積物から得られた貝形虫群集に対し、本研究により表層堆積物試料から得られた現生貝形虫の群集データとその試料採取地点において測定された各種環境項目(水温、塩分、溶存酸素、濁度など)(天野ほか,2022)を用い、モダンアナログ法による古環境解析を行った。結果として、調査層準の底層水温、塩分、溶存酸素は、それぞれ18―19℃、33―34、3.9―4.0 ml/Lと復元され、調査層準全体として、大きな変動を持たない安定した底層環境であったことが明らかになった。しかし、コア深度0―2.2、15.4―17.6 cmでは、復元された底層水温と底層塩分ともに増加した。また、これらの層準のアナログとして選出された現生貝形虫群集の得られた地点は外洋水の影響を強く受けていると考えられる。ゆえに、これらの調査層準に復元された底層水温と塩分の上昇は、強化された黒潮由来の外洋水の影響を反映している可能性がある。
【引用文献】
天野ほか, 2022, 地質調査総合センター速報83, 令和3年度沿岸域の地質・活断層調査報告, p.13―26.
藤原, 2012, 紀伊水道・豊後水道・響灘と瀬戸内海. 瀬戸内海. 64. 4―9.
竹内ほか, 2022, 日本地質学会第129年学術大会講演要旨集.
Yasuhara et al., 2002, Paleontol. Res., 6, 85―99.
安原, 2007, 人間活動による自然の変化, 161―266.
Zhou, 1995, Mem. Fac. Sci., Kyoto Univ. 57, 21―98.