*Shuichi KODAIRA1, Kohtaro Ujiie2, Takehiro Hirose1, Weiren Lin3, Ryota Hino4, Yasuyuki Nakamura1, Tatsuya Kubota5
(1. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC), 2. University of Tsukuba, 3. Kyoto University, 4. Tohoku University, 5. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)
世話人よりハイライトの紹介:東日本大震災の津波断層の理解を目的とする掘削が2024年9月‐12月に国際深海科学掘削計画(IODP) Expedition 405 JTRACK(Tracking Tsunamigenic Slips Across and Along the Japan Trench)として実施される.JTRACKは「プレート境界断層浅部とその周辺の構成岩石や流体の物理的・化学的特性と,その時空間変化を理解することにより,巨大断層すべりや巨大津波を引き起こす要因を把握する」ことを大目的としている.ちきゅうを用いた現行のIODPで実施される最後の航海である.巨大地震発生メカニズムの理解が大きく進展すると国際的に期待されている計画である.※ハイライトとは
Keywords:2011 Tohoku-oki earthquake, Megathrust fault, IODP
2024年9月-12月に国際深海科学掘削計画(IODP) Expedition 405として2011年東北地方太平洋沖地震の震源断層掘削を行うJTRACK(Tracking Tsunamigenic Slips Across and Along the Japan Trench)が実施される。JTRACKは「プレート境界断層浅部とその周辺の構成岩石や流体の物理的・化学的特性と、その時空間変化を理解することにより、巨大断層すべりや巨大津波を引き起こす要因を把握する」ことを大目的としている。この目的達成のためにJTRACKでは、IODP Exp 343 JFASTと同一地点での掘削、および沈み込む前の海洋プレート上堆積層の掘削を行い、連続コアの採取、孔内検層、JFASTと同一点での温度計測を計画している。地震発生から13年後に再び震源断層を掘削するJTRACKは地震発生後のプレート境界断層の固着強度、断層周辺の応力蓄積過程を明らかにする貴重な機会となり、これまで取り組むことができなかった巨大津波を生成する海溝型地震準備過程に関する本質的な問い、即ち「巨大津波を生成するプレート境界浅部すべりの駆動源は何か、どのように応力を蓄積するか」に迫ることができる。JFASTや東北沖地震後に行われた様々な海底観測の結果に基づき、プレート境界断層の固着強度・応力蓄積過程に関しては相反する二つの仮説が考えられている。一つは「プレート境界浅部の断層強度回復・応力蓄積は地震発生直後から急激に進行し、地震間ではプレート境界浅部は力学的に固着している。そのため、そこでひずみエネルギーが蓄積され、これが大規模浅部すべりのエネルギー源となりうる」という仮説、もう一つは「プレート境界浅部は常に力学的に固着していない。そのため、そこでのひずみエネルギー蓄積は発生しない。隣接するプレート境界深部において強い固着があって大きなひずみエネルギーが蓄積され、深部で強固着域を破壊するような地震が起こった場合、それが大規模な浅部すべりを引き起こすことがあり得る」という仮説である。私たちはJTRACKによる地質試料実験、孔内検層データ解析、掘削孔周辺での海底地殻変動・地震観測、高分解能地下構造探査のデータを統合し、この相反する二つの仮説の検証を行い、上記海溝型地震準備過程に関する本質的な問いに迫る計画の立案を進めている。講演では、JFASTや関連研究のこれまでの成果を総括し、JTRACKの航海計画、及び本研究プロジェクト計画の詳細を紹介する。