130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T13[Topic Session]Subduction zones and on-land accretionary complexes

[2oral401-10] T13[Topic Session]Subduction zones and on-land accretionary complexes

Mon. Sep 18, 2023 9:00 AM - 12:00 PM oral room 4 (25-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Taizo Uchida, Keigo Tashiro(Kyoto Univ.)

11:30 AM - 11:45 AM

[T13-O-9] Updating tectonic evolution of the Nankai accretionary prism and geological structures of the boundary between segments of megathrust earthquakes based on submersible survey along Shionomisaki submarine canyon: Initial report of R/V Yokosuka YK23-10S cruise

*Asuka Yamaguchi1, Rina Fukuchi2, Yohei Hamada3, Hiroaki Koge4, Kiichiro Kawamura5, Akira Ijiri6, Hanaya Okuda3, Mari Hamahashi5, Konosuke Terui1, Takahiro Hosokawa7, Kanji Tatsumi6, Juichiro Ashi1, Takafumi Kasaya3, Masataka Kinoshita1, Koji Kameo8, Yoshimi Kubota9, Takeshi Tsuji1, Kazuya Shiraishi3, Gaku Kimura3 (1. The University of Tokyo, 2. Naruto University of Education, 3. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 4. Geological Survey of Japan, AIST, 5. Yamaguchi University, 6. Kobe University, 7. Kochi University, 8. Chiba University, 9. National Museum of Nature and Science, Tokyo)

Keywords:Nankai Trough, Shinkai 6500, Shionomisaki Canyon

世界の沈み込み帯の中で、南海トラフは付加体の発達する代表的な沈み込み帯であり、前弧域の大構造とその発達史の理解は、海溝型地震の発生場、および沈み込み帯のダイナミクスを理解する上で重要である。南海トラフにおける近年の深海掘削・反射法探査の成果をふまえて、東南海・南海地震のセグメント境界付近に位置し、付加体断面が露出する潮岬海底谷沿いの海底地質調査・サンプリングを「しんかい6500」で行うことを目的として、2023年6月15日~23日に「よこすか」YK23-10S航海が行われた。本発表ではその速報結果を報告する。
 YK23-10S航海では紀伊半島沖の潮岬海底谷において「しんかい6500」による潜航調査を実施し、南海トラフ付加体および前弧海盆堆積物の採取、プッシュコアラーによる表層堆積物および冷湧水の採取、地形調査・地磁気観測・熱流量観測などの地球物理調査を行った。海底谷の崖沿いに行った4潜航では、付加体を構成すると考えらえる泥岩、斜面堆積盆または前弧海盆最下部をなすと考えられる礫岩、前弧海盆堆積物と考えられる砂岩泥岩互層を視認・撮影し、合計104個・195 kgの岩石試料を採取した。また、礫岩と砂岩泥岩互層の境界露頭を4潜航全てで確認した。今後、石灰質ナンノプランクトンおよび浮遊性有孔虫による年代測定を行い、付加体と前弧海盆の境界の年代を決定することで南海付加体および前弧海盆の発達史を更新できると期待される。海底谷を縦断した1潜航では、「しんかい6500」に搭載したサブボトムプロファイラーによる海底下構造探査とプッシュコア、「よこすか」による海底地形調査を総合し、海底谷の発達過程と物質移動に関する知見が得られた(浜橋ほか、本大会)。Tsuji et al. (2013) は、潮岬海底谷直下に高密度なドーム状岩体が存在することを反射法地震探査から指摘しており、このドーム状岩体は中期中新世の火成複合岩体で、東南海・南海地震の破壊領域にも影響を与える可能性が指摘されている(Kimura et al., 2022)。本航海では、「しんかい6500」に搭載した熱流量測定装置(SAHF)による地殻熱流量測定を9地点で行った。今後、熱流量測定結果、および「よこすか」搭載の三成分磁力計・プロトン磁力計による広域地磁気観測に基づき、火成岩体の存在について多角的に検討を行う予定である。
 本航海は海況に恵まれ、予定していた5潜航を完遂することができた。今後、乗船後研究の進展により、南海付加体と熊野海盆の形成初期の発達史、およびセグメント境界の実態を物質科学的に解明することが可能になると期待される。「しんかい6500」による広域の海底調査と大量の試料採取は、反射法地震探査などの地球物理観測と鉛直1次元の深海掘削を、スケールを越えてつなぐ上で非常に強力なツールである。

文献: 浜橋真理ほか,本大会T6セッション;Kimura, G. et al. (2022) Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 23, e2022GC010331; Tsuji, T. et al. (2013) Tectonophysics, 600, 52–62.