3:45 PM - 4:00 PM
[G4-O-4] Using drone photos and videos to teach earth and environmental science
Keywords:teaching materials, drone, 3D model, visualization
1.はじめに
筆者は、地学分野の授業において空間と時間の概念を生徒達が身につけることは、学習指導要領に記述された目標を実現するための素養であると考えている。しかし、通常の授業において野外観察でそれらの概念を体感的に養うことは、時間や予算・体制などの制約により実施することが難しい。特に定時制(夜間部)においては困難な状況である。 そこで、今回の取り組みでは教室内でも地学的な空間の概念を、視覚的・直感的に伝え、学習対象となる地形・地質・構造・現象などを理解しやすい映像資料の作成と活用を試みた。
2.使用機器及びソフトウェア
ドローンによる空撮にはParrot社製ANAFI(4K及びthermal)を使用した。この機体を対象の周囲を手動および自動(Pix4Dcaptureで制御)で飛行させ映像資料の元になる写真及び動画を撮影した。また、3DモデルはPix4D社製Pix4Dmapperを用いたフォトグラメトリーにより作成した。
3.作成した映像資料
現在、下記の8つの映像資料を作成済みである。なお、①・②・④・⑧は南紀熊野ジオパークのジオサイトである。
①橋杭岩(和歌山県串本町):熊野カルデラの活動に伴う岩脈であり、周囲には津波で移動された漂礫が分布している。上空からの視点では、岩脈の配列や漂礫の分布状況が見て取れる。岩脈の配列から、マグマが貫入した際に通った経路を推測することができる。
②フェニックス褶曲(和歌山県すさみ町):褶曲構造の背斜と向斜をはっきりと見ることができる海食崖の露頭である。ただし、安全上の問題のためガイド同伴でないと立ち入ることはできず容易に観察することが難しい。空撮映像をみると、周囲の海食崖の地層との連続性がよくわかる。
③天鳥の小褶曲(和歌山県すさみ町):褶曲(背斜)の断面をはっきりと見ることができる。周囲の地層と褶曲部の地層の比較から、褶曲が形成される際に起きる地層の屈曲や破断の状態を観察することができる。国道42号線からも観察でき、比較的安全かつ容易に訪れることができる。
④和深海岸(和歌山県串本町):砂岩泥岩互層が明瞭に観察できる露頭があり、周辺の岩礁も岩質によって浸食の受け方が異なっている。岩礁上には浸食の違いによる凹凸をはっきりと観察することができる。海食崖の露頭と岩礁上に現れた層の傾きの関係や連続性がよくわかる。
⑤ヒキ岩群(和歌山県田辺市):傾斜した砂岩層が浸食により、何匹ものヒキガエルが並んだように見える岩峰を作っている。ハイキングコースが設置されており現物に触れることができるが、上空からの視点で見ると地層の連続性や傾く角度などの地形の形成要素がより一層理解できる。
⑥下里大浜(和歌山県那智勝浦町):河口域での沿岸流の影響を受けた砂州の形状がよくわかる。ビーチカスプにおける波と沿岸流による砂の移動を観察することができる。規模が数百mあるため、3Dモデルを使うことで、全体の形を把握することができ、砂州上では台風などの大波によって、砂が海側から陸側へと運ばれることを地形から読み取ることができる。
⑦玉の浦(和歌山県那智勝浦町):熊野灘から内湾へと続く遠浅の海域である。海水の透明度が高く、砂地の海底にはアマモの仲間が生育しており、藻場が形成されている。空撮を行うことによって、沿岸域における藻場の広がりを面的にとらえることができる。
⑧ゆかし潟(和歌山県那智勝浦町):熊野灘沿いにある汽水湖である。2本の小河川が流入しており、湖奥から埋積が進行している。流出口付近は他の小河川による埋積で干潟化している。湖水の澄んだ日の空撮情報から、湖底地形や底質の状態を読み取ることができる。
4.生徒たちの反応
現在、上記の8つの映像資料を作成し、これらのうち①~⑤を授業で使用した。これらの資料についての生徒たちの感想は以下のようになった。
・本物を見ていないので大きさや質感ははっきりとは感じられない。だけど、地層のつながりや広がりはわかりやすい。
・地層の色の違いを追いかけると、つながり方がわかった。
・角度を変えて見られたので、方向によって地層の見え方が違うのが分かった。
5.今後の改善点
対象の空間的広がりを体感し学ぶには、生徒たちが現地に行くことが一番である。それを補うため、生徒たちの声を聴き、より直感的に理解しやすい資料に改良する必要がある。 前述の生徒たちの反応を踏まえ、現場の岩石標本の利用との組み合わせ方や、わかりやすいスケールの導入を試したいと考えている。
筆者は、地学分野の授業において空間と時間の概念を生徒達が身につけることは、学習指導要領に記述された目標を実現するための素養であると考えている。しかし、通常の授業において野外観察でそれらの概念を体感的に養うことは、時間や予算・体制などの制約により実施することが難しい。特に定時制(夜間部)においては困難な状況である。 そこで、今回の取り組みでは教室内でも地学的な空間の概念を、視覚的・直感的に伝え、学習対象となる地形・地質・構造・現象などを理解しやすい映像資料の作成と活用を試みた。
2.使用機器及びソフトウェア
ドローンによる空撮にはParrot社製ANAFI(4K及びthermal)を使用した。この機体を対象の周囲を手動および自動(Pix4Dcaptureで制御)で飛行させ映像資料の元になる写真及び動画を撮影した。また、3DモデルはPix4D社製Pix4Dmapperを用いたフォトグラメトリーにより作成した。
3.作成した映像資料
現在、下記の8つの映像資料を作成済みである。なお、①・②・④・⑧は南紀熊野ジオパークのジオサイトである。
①橋杭岩(和歌山県串本町):熊野カルデラの活動に伴う岩脈であり、周囲には津波で移動された漂礫が分布している。上空からの視点では、岩脈の配列や漂礫の分布状況が見て取れる。岩脈の配列から、マグマが貫入した際に通った経路を推測することができる。
②フェニックス褶曲(和歌山県すさみ町):褶曲構造の背斜と向斜をはっきりと見ることができる海食崖の露頭である。ただし、安全上の問題のためガイド同伴でないと立ち入ることはできず容易に観察することが難しい。空撮映像をみると、周囲の海食崖の地層との連続性がよくわかる。
③天鳥の小褶曲(和歌山県すさみ町):褶曲(背斜)の断面をはっきりと見ることができる。周囲の地層と褶曲部の地層の比較から、褶曲が形成される際に起きる地層の屈曲や破断の状態を観察することができる。国道42号線からも観察でき、比較的安全かつ容易に訪れることができる。
④和深海岸(和歌山県串本町):砂岩泥岩互層が明瞭に観察できる露頭があり、周辺の岩礁も岩質によって浸食の受け方が異なっている。岩礁上には浸食の違いによる凹凸をはっきりと観察することができる。海食崖の露頭と岩礁上に現れた層の傾きの関係や連続性がよくわかる。
⑤ヒキ岩群(和歌山県田辺市):傾斜した砂岩層が浸食により、何匹ものヒキガエルが並んだように見える岩峰を作っている。ハイキングコースが設置されており現物に触れることができるが、上空からの視点で見ると地層の連続性や傾く角度などの地形の形成要素がより一層理解できる。
⑥下里大浜(和歌山県那智勝浦町):河口域での沿岸流の影響を受けた砂州の形状がよくわかる。ビーチカスプにおける波と沿岸流による砂の移動を観察することができる。規模が数百mあるため、3Dモデルを使うことで、全体の形を把握することができ、砂州上では台風などの大波によって、砂が海側から陸側へと運ばれることを地形から読み取ることができる。
⑦玉の浦(和歌山県那智勝浦町):熊野灘から内湾へと続く遠浅の海域である。海水の透明度が高く、砂地の海底にはアマモの仲間が生育しており、藻場が形成されている。空撮を行うことによって、沿岸域における藻場の広がりを面的にとらえることができる。
⑧ゆかし潟(和歌山県那智勝浦町):熊野灘沿いにある汽水湖である。2本の小河川が流入しており、湖奥から埋積が進行している。流出口付近は他の小河川による埋積で干潟化している。湖水の澄んだ日の空撮情報から、湖底地形や底質の状態を読み取ることができる。
4.生徒たちの反応
現在、上記の8つの映像資料を作成し、これらのうち①~⑤を授業で使用した。これらの資料についての生徒たちの感想は以下のようになった。
・本物を見ていないので大きさや質感ははっきりとは感じられない。だけど、地層のつながりや広がりはわかりやすい。
・地層の色の違いを追いかけると、つながり方がわかった。
・角度を変えて見られたので、方向によって地層の見え方が違うのが分かった。
5.今後の改善点
対象の空間的広がりを体感し学ぶには、生徒たちが現地に行くことが一番である。それを補うため、生徒たちの声を聴き、より直感的に理解しやすい資料に改良する必要がある。 前述の生徒たちの反応を踏まえ、現場の岩石標本の利用との組み合わせ方や、わかりやすいスケールの導入を試したいと考えている。