130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T16[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments【EDI】

[2oral501-11] T16[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

Mon. Sep 18, 2023 9:00 AM - 12:00 PM oral room 5 (27-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Susumu NONOGAKI, Tsutomu NAKAZAWA

11:15 AM - 11:30 AM

[T16-O-9] Investigation on effective geotechnical features for stratal correlation of borehole data by machine learning

*Susumu NONOGAKI1, Tatsuya NEMOTO2, Shinji MASUMOTO3 (1. GSJ, AIST, 2. Osaka Metropolitan Univ., 3. Osaka City Univ.)

Keywords:Machine learning, Borehole data, Stratal correlation, Three-dimensional geological model

地下浅部における詳細な地質構造を把握することは,地盤リスク評価やハザードマップ作成,インフラ整備などを効率的・効果的に実施するうえで重要である.露頭を観察できる場所が限られる都市部では,浅部地質構造を解明するにあたり,ボーリングデータにおける地層の対比結果を用いた3次元地質モデル作成が実施されることが多い(納谷ほか,2021など).この場合,3次元地質モデルの品質は地層対比の精度や対比データの数に大きく依存するが,正確な地層対比を多数のボーリングデータに実施するには,経験豊富な研究者・技術者であっても膨大な時間を要する.他方,近年都市部を中心として公共工事で作成されたボーリングデータが,国や自治体などから機械処理に適したXML形式(国交省,2016)で積極的に公開されており[URL1,URL2],これらのボーリングデータを3次元地質モデル作成に利用できれば,都市部の浅部地質構造解析の高精度化につながると期待できる.
 本研究では,都市部のボーリングデータの地層対比を安定した精度でかつ迅速に行う技術の開発を目的として,ボーリングデータに記録される地盤の特徴量から機械学習を利用して地層対比を行う手法について検討する.本発表では,その一環として行った地層対比に有効な特徴量の検討結果について報告する.
 ボーリングデータの地層対比処理は,地盤の特徴量を入力データ,地層名ラベルを出力データとする教師あり学習の分類問題と考えられる(野々垣ほか,2021).地層対比に有効な特徴量の検討では,この考えを踏襲したうえで,ボーリングデータから抽出する地盤の特徴量の組み合わせを変えながら,特徴量をもとに地層名を予測する機械学習モデル(地層対比モデル)を作成し,各組合せによる地層対比モデルの予測精度を比較した.検討対象とした地盤の特徴量は,標高,岩石・土質,標準貫入試験結果(N値),色調の計4種類である.このうち岩石・土質については,「シルト質細砂」のように複合的な形でボーリングデータに記録されていることから,主たる岩石・土質の種類と混合物の含有率という形に置き換えて利用した.色調についても,コードや数値ではなく日本語の文字列として記録されていることから,色相,彩度,明度という形に置き換えて利用した.地層対比モデルを作るためのテストデータには,納谷ほか(2018)で利用された千葉市周辺のボーリングデータ1,654本とそれらに関する地層の対比データから得た,特徴量および地層名ラベルのデータセットを用いた.また,地層対比モデルを作成するための機械学習アルゴリズムには,野々垣ほか(2021)が提案した5層から構成されるニューラルネットワークを用い,Hold-out法と交差検証を用いてモデルを評価した.
 特徴量4種類(標高,岩石・土質,N値,色調)の組み合わせを変えながら地層対比モデルを作成した結果,単一の特徴量で機械学習を行う場合の予測精度は,標高(73.0%),N値(67.9%),岩石・土質(64.7%),色調(56.2%)であった.また,検討した全組み合わせのうち,最も予測精度が高い組み合わせは4種類すべての特徴量を用いたケース(88.3%)であった.標高が他の特徴量と比べて有効に働いた理由としては,ボーリングデータ取得地域の地下浅部では比較的緩やかな傾斜で地層が分布していることが考えられる.また,色調の働きが小さい理由としては,そもそも地層とその色調には強い相関性がないことに加え,文字列の色調から色相,彩度,明度という数値情報への変換が不十分であることが考えられる.
 ここでは,ボーリングデータに記録されている4種類の地盤の特徴量を対象に,機械学習を用いた地層対比における有効性について検討した.ボーリングデータには今回扱った特徴量のほかにも,地層対比に有効と考えられる情報が含まれている.今後はそのような情報の利用を検討するとともに,特徴量を効果的に利用できる機械学習アルゴリズムを検討する必要がある.本研究はJSPS科研費22K03745の助成を受けたものである.

文献
国土交通省,2016,地質・土質調査成果電子納品要領.50p.
納谷ほか,2018,都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」説明書.55p.
納谷ほか,2021,都市域の地質地盤図「東京都区部」説明書.82p.
野々垣ほか,2021,日本地質学会第128年学術大会講演要旨.
[URL1] 国土地盤情報データベース 一般公開,https://publicweb.ngic.or.jp/public/publicweb.php.
[URL2] KuniJiban,https://www.kunijiban.pwri.go.jp/jp/index.html.