3:00 PM - 3:30 PM
[T16-O-12] [Invited] The relationship between cities and geology: development, environment, disaster
【ハイライト講演】
世話人よりハイライトの紹介:都市発達は河川河口域の平野部や盆地であることが多い.これは,インフラ整備や都市の拡張が容易である広い平坦な地域は利便性が高いためであるが,一方で都市域にみられる特徴的な災害(内水氾濫や液状化,地盤沈下など)の発生もあり課題が多い.これらの課題に対しては,関連学問の融合が必要であり,地質学と工学(土木工学,地盤工学,地震工学,間接工学など)の相互理解によって都市の諸問題は解決される.発表では,都市地質学の課題と今後の課題について述べられる.※ハイライトとは
Keywords:urban geology, infrastructure development, alluvial plain
はじめに 人類が集中して住んでいる領域である都市とどう向き合うかは、社会的課題であるとともに重要な地質学的課題である。文明の発達とともに、都市は大きく変化を遂げ、大きな負荷を大地に与え、都市の時空間的変遷をともない、世界各地で展開されてきた。それらが展開されてきた場所・大地の特徴(地形・地質など)は、その時代の人類がめざす大地利用の効率化や大規模化など、多くの地質学的課題を生じている。今回は、中緯度での変動帯である日本を例にして、都市領域における大地利用の事例等を紹介し、都市と地質学が持つ関連課題を整理する。
日本における都市の地形・地質 世界には広い範囲での大都市圏が存在しており、また多様なサイズの都市圏の分布が人口集中域として認識される。それらの都市圏は、文明の変遷や地域的環境と相まって多様な地形や地質で発展している。 都市の発達には、人口の集中と、そのためのインフラ整備と安全な環境の展開が要請され、経済効率性や交通利便性なども要求され、大地への人工的負荷の増大が必然的に生じる。その際の社会的課題が都市域における地質学的課題として浮かび上がってくる。日本の場合は、山地が7割を超える島国で、中緯度における都市圏の形成と維持が課題であり、海に面した低平地や盆地での都市発達が展開され、沖積平野や第四紀層は日本における重要な地質・地形として認識される。
本の都市における地質学と関連学問の融合課題 都市における大地の利用に関しては、2つの大きな方向性がある。一つは対象からの学問課題であり、社会的要請や関心の高い事象への地質学課題の存在である。二つ目は地域の課題からの学問的課題で、地域的関心が高い事象への地質学的課題である。それらの課題への対応のためには、地質学だけでなく、関連学問との融合が大事な方向性になる。具体的には、地質学と工学(土木工学、地盤工学、地震工学、建設工学など)との関連、地質学と環境(学)に関する多様性と社会との関連、地質学と災害に関しての災害環境や開発などの関連、地質学と情報(学)に関するデジタル化や情報伝達などが挙げられる。 都市地質学における工学関連の課題として関西国際空港の例を、講演では紹介する。大阪湾の泉州沖約5kmに建設された関西国際空港は、1994年に本格的な海上空港として開港した。騒音問題を極力抑えるために大阪湾の沖合を建設場所とし、大水深、軟弱地盤という自然条件、大量の土砂の使用と短期間での空港島建設の困難な課題が存在した。滑走路に凹凸などを生じさせない空港機能維持がもっとも重要であり、埋め立て段階から綿密な工事管理を必要とした。この中で、埋め立て地の地下地層の詳細コア間対比や堆積学的視点に基づく水理学的・地盤工学的課題への情報提示、埋め立て時以降の地盤変状モニタリング等など地質学は大きな役割を担った。 都市地質学と環境関連では、生活空間領域の環境の多様性と変遷が重要な対象である。海岸環境と埋め立てによる生活域拡大、都市域や都市周辺からの流入物の性質なども課題となる。新たな地形環境の形成や人工的な生成物を含んだ新しい地層(地質体)形成は都市地質学にとって重要な視点である。 都市地質学と災害関連の課題は、災害環境や地形と開発など多様な課題があり、講演では都市域の活断層の地質学に関して紹介する。特に、平成17年以降の「活断層で発生する地震を対象とした重点的調査観測」では、日本における都市圏の活断層に関する多くの情報が集積されてきた。日本の都市は、第四紀堆積盆地が海岸に面した場所で発達し、山地・丘陵と盆地や平野の境界や内部で地震を発生させる活断層の研究は都市域の安全の重要な課題として認識される。活断層に関わる災害等の防災・減災は、地下深部で生成する地震の都市周辺の地表で生きる社会への影響があり、災害に関する誘因・自然素因・社会素因の複合要素の課題で、1995年以降進められてきた地震や活断層調査から得られる都市域での活断層の性状や活動性、地震動の情報に基づく被害想定などの防災対応への貢献は都市地質学の課題のひとつである。 都市地質学と情報(学)の関連では、地盤等のボーリング情報等から「上からの層序」としての認識が重要となる。情報のデータベース化と質の維持が模索され、都市圏での大地利用のための基礎データとしての価値を含め、均質に集約された地質情報のデジタル化や情報伝達方法のありかた、今後のAIの利活用等の課題に対応できる方向性を都市地質学は有する。
日本における都市の地形・地質 世界には広い範囲での大都市圏が存在しており、また多様なサイズの都市圏の分布が人口集中域として認識される。それらの都市圏は、文明の変遷や地域的環境と相まって多様な地形や地質で発展している。 都市の発達には、人口の集中と、そのためのインフラ整備と安全な環境の展開が要請され、経済効率性や交通利便性なども要求され、大地への人工的負荷の増大が必然的に生じる。その際の社会的課題が都市域における地質学的課題として浮かび上がってくる。日本の場合は、山地が7割を超える島国で、中緯度における都市圏の形成と維持が課題であり、海に面した低平地や盆地での都市発達が展開され、沖積平野や第四紀層は日本における重要な地質・地形として認識される。
本の都市における地質学と関連学問の融合課題 都市における大地の利用に関しては、2つの大きな方向性がある。一つは対象からの学問課題であり、社会的要請や関心の高い事象への地質学課題の存在である。二つ目は地域の課題からの学問的課題で、地域的関心が高い事象への地質学的課題である。それらの課題への対応のためには、地質学だけでなく、関連学問との融合が大事な方向性になる。具体的には、地質学と工学(土木工学、地盤工学、地震工学、建設工学など)との関連、地質学と環境(学)に関する多様性と社会との関連、地質学と災害に関しての災害環境や開発などの関連、地質学と情報(学)に関するデジタル化や情報伝達などが挙げられる。 都市地質学における工学関連の課題として関西国際空港の例を、講演では紹介する。大阪湾の泉州沖約5kmに建設された関西国際空港は、1994年に本格的な海上空港として開港した。騒音問題を極力抑えるために大阪湾の沖合を建設場所とし、大水深、軟弱地盤という自然条件、大量の土砂の使用と短期間での空港島建設の困難な課題が存在した。滑走路に凹凸などを生じさせない空港機能維持がもっとも重要であり、埋め立て段階から綿密な工事管理を必要とした。この中で、埋め立て地の地下地層の詳細コア間対比や堆積学的視点に基づく水理学的・地盤工学的課題への情報提示、埋め立て時以降の地盤変状モニタリング等など地質学は大きな役割を担った。 都市地質学と環境関連では、生活空間領域の環境の多様性と変遷が重要な対象である。海岸環境と埋め立てによる生活域拡大、都市域や都市周辺からの流入物の性質なども課題となる。新たな地形環境の形成や人工的な生成物を含んだ新しい地層(地質体)形成は都市地質学にとって重要な視点である。 都市地質学と災害関連の課題は、災害環境や地形と開発など多様な課題があり、講演では都市域の活断層の地質学に関して紹介する。特に、平成17年以降の「活断層で発生する地震を対象とした重点的調査観測」では、日本における都市圏の活断層に関する多くの情報が集積されてきた。日本の都市は、第四紀堆積盆地が海岸に面した場所で発達し、山地・丘陵と盆地や平野の境界や内部で地震を発生させる活断層の研究は都市域の安全の重要な課題として認識される。活断層に関わる災害等の防災・減災は、地下深部で生成する地震の都市周辺の地表で生きる社会への影響があり、災害に関する誘因・自然素因・社会素因の複合要素の課題で、1995年以降進められてきた地震や活断層調査から得られる都市域での活断層の性状や活動性、地震動の情報に基づく被害想定などの防災対応への貢献は都市地質学の課題のひとつである。 都市地質学と情報(学)の関連では、地盤等のボーリング情報等から「上からの層序」としての認識が重要となる。情報のデータベース化と質の維持が模索され、都市圏での大地利用のための基礎データとしての価値を含め、均質に集約された地質情報のデジタル化や情報伝達方法のありかた、今後のAIの利活用等の課題に対応できる方向性を都市地質学は有する。