130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

T16[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments【EDI】

[2oral512-19] T16[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

Mon. Sep 18, 2023 3:00 PM - 5:30 PM oral room 5 (27-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Naoko KITADA, Yoshiyuki TAMURA

3:45 PM - 4:00 PM

[T16-O-14] Geoenvironmental conditions as requrirements for Industrial Waste Landfill -Conditions from social Infrastructures perspective -

【ハイライト講演】

*Yoshiyuki TAMURA1 (1. Chiba Prefectural Enviromnet Foundation)

世話人よりハイライトの紹介:人間の生活の中で必要な施設の1つである産業廃棄物最終処分場は,急傾斜地崩壊危険区域,砂防指定地,地すべり防止区域などを含まないなどの制約がある一方で,施設によって影響を受ける可能性が高い地下水などの水環境については十分に考慮されているとは言い難い.特に自然災害(台風,豪雨,地震など)の際にも安心して運用できることは重要事項であるが,現時点では問題点も多い.発表では,このような施設についての個々の地質環境や問題点を抽出する.まさに都市部で発生する地質問題ついて発表される.※ハイライトとは

Keywords:geoenvironment, Industrial Waste Landfill, social Infrastructures, geological hazard

はじめに
田村(2022)では、産業廃棄物最終処分場の設置に係る法律、省令及び要綱にある地質に関係する立地環境等としては、急傾斜地崩壊危険区域、砂防指定地、地すべり防止区域を含まない等の項目があるが、地下水などの水環境については、「廃棄物処理施設生活環境影響調査指針」で評価するが、立地基準とはなっていないことを述べた。また、地下水に関しては、君津市等の「水道水源保護条例」では、対象となる事業としてゴルフ場、最終処分場等を対象とし、排水基準による規制のみで、立地規制とはなっていないことなど、千葉県内の産業廃棄物最終処分場を取り巻く地質環境の概況、地質災害との関連性及び埋立地の維持管理上で発生している問題点について述べた。
一方、梅雨期や台風による各種災害が全国で毎年発生している。それらの災害では、生活に欠かせない電気、ガス及び水道のほか、交通遮断など、生活や産業に必要不可欠な社会インフラがたびたび被害を引き起こす。本発表では、社会インフラとしてみた場合の産業廃棄物最終処分場を取り巻く地質環境、その問題点について述べる。
概況
田村(2022)でも示したが、千葉県における産業廃棄物最終処分場は、Fig.1に示したように9箇所ある。安定型、管理型の設置位置は、人口密集地である千葉県の東京湾岸、東葛飾でなく、房総半島の南側に集中している。このうち、管理型処分場の立地している地質環境について、田村(2022)に記載した内容のほか、社会インフラのうち道路の状況を加えて以下に示す。
管理型1
地形:標高215m前後の上総丘陵及び南北方向に延びる谷地形。処分場の北側隣接地に地すべり地形がある。
地質:上総層群黄和田層。地質構造は概ね北西へ20~10度傾斜している単斜構造。処分場北西側と東側には向斜軸、また北西側向斜軸の北側に低角な断層がある。
社会インフラ:埋立地から高規格道路(高速道路)までの経路は、約1kmの私道、約3kmの県道、そして約4kmの国道を通行することとなる。経路上には、斜面崩壊地形、急傾斜地が点在している。
管理型2
地形:標高90m前後の上総丘陵及び南北方向に延びる谷地形。処分場付近に地すべり地形、急傾斜地の区域はない。
地質:上総層群梅ヶ瀬層。地質構造は概ね北西へ約12度傾斜している単斜構造。
社会インフラ:埋立地から高規格道路(高速道路)までの経路は、約5kmの市道、約4kmの県道、そして約26kmの国道を通行することとなる。経路上には、斜面崩壊地形、急傾斜地が点在している。特に市道部分は尾根上にあり、道路の両側が急傾斜地形となっている箇所が存在している。
管理型3
地形:標高58m前後の埋立地。もとは南側に開いた谷地形である。処分場南側には海食崖がある。
地質:下総層群香取層、犬吠層群名洗層、飯岡層。地質構造は、北西方向へ緩く傾斜している単斜構造で、上位の香取層とは不整合関係にある。
社会インフラ:埋立地から高規格道路(高速道路)までの経路は、約0.5kmの市道、そして約30kmの国道を通行することとなる。国道沿いに急傾斜地が点在している。
管理型4
地形:東京湾岸部の標高1m前後の埋立地。
地質:人工地層。震度5強の地震で処分場のほとんどの場所で液状化として“ややしやすい”と予測されている。
社会インフラ:埋立地から高規格道路(高速道路)までの経路は、約2kmの市道、約3kmの県道、そして約3kmの国道を通行することとなる。経路となる道路付近には斜面崩壊地形や急傾斜地は存在しないが、全区間にわたって埋立地を通行している。
管理型処分場周辺の社会インフラに係る地質環境評価の必要性について
田村(2022)でも述べたが、現在、千葉県で稼働している管理型最終処分場の管理型1及び管理型2では、高濃度の塩化物イオンがモニタリング井戸で検出され、それぞれ対策を講じている。
房総半島では、令和元年9月の台風15号により、電力消失、道路の寸断が多数発生した。管理型2でも一時的に電力消失が発生し、処分場から発生した浸出水の処理ができなくなっていた。なお、その時の災害では道路の寸断は発生していなかった。しかし、過去には、管理型2に至る経路である市道の一部では、斜面崩壊による通行の障害がたびたび発生している状況であった。このことは、社会インフラが斜面崩壊、土石流や津波などの地質災害により、一時的もしくは長期にわたり利用できない状況となる可能性を示唆している。したがって、管理型最終処分場の立地条件として、社会インフラからみた地質災害のリスクを評価する必要がある。
引用文献
田村嘉之,2022, 産業廃棄物最終処分場の立地条件としての地下水盆管理と水循環について.日本地質学会第129年学術大会講演要旨,G3-O-5.