130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T16[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments【EDI】

[2oral512-19] T16[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

Mon. Sep 18, 2023 3:00 PM - 5:30 PM oral room 5 (27-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Naoko KITADA, Yoshiyuki TAMURA

4:30 PM - 4:45 PM

[T16-O-16] Temperature profiles and historical change in shallow groundwater monitoring wells, Chiba, Japan

*Atsushi KAGAWA1, Kunio FURUNO (1. Research Institute of Environmental Geology, Chiba (RIEGC))

Keywords:groundwater temperature, monitoring well, monitoring system

はじめに
 千葉県では,地盤沈下対策や地下水資源の監視を目的として154本の観測井を設置している(2023年現在).このうち地下水質測定のために年一回程度採水される一部の観測井を除き,孔内地下水は滞留した状態にある.このため観測井孔内の地下水温度は,井戸管周囲の地温と管内上下からの対流・温度伝播等の平衡状態を示していると考えられる(古野ほか,2009).この観測井の孔内水について,2007年より鉛直方向の地下水温度測定を継続しているが,浅層部(深度100m以浅)で温度上昇の傾向が明瞭に認められる(香川ほか,2018)ことから,浅層部の地下水温変動について時系列に沿って検討した.

地下水温度検層の概要
 地下水温の観測にあたっては,立山理化学(株)製の外部導線付きサーミスタ温度計(分解能0.01℃)を使用し,深度1m毎の値を記録した.得られた温度データについては,標準温度計との差から作成された校正表より補正計算し温度補正を行った.また一部の観測井に設置されている水位計(Onset社製 HOBO Water Level Logger)には,温度センサ(分解能0.097℃)が搭載されており,この記録も参考値とした.

千葉市美浜区稲毛海岸における浅層部地下水温変動
 遠浅の海岸に埋立造成された稲毛海岸は現在,都市近郊の住宅地になっている.ここに設置された「WING-1」(井戸深度41m,スクリーン深度31~39m)は, 人工地層(管頭下0~5m),沖積層(5~31m), 更新統(31~41m)を貫いている.「WING-1」の地下水位は,潮汐の影響を受けた5cm程の日変動が観測されるが,年間を通じての顕著な季節変動は認められない.この「WING-1」では,2007年より孔内水の深度別温度検層を継続的に実施している.温度分布の傾向としては,地下水面より管頭-12mまでの深度では地上気温の影響を受けた変動が大きく,年間で10℃以上の季節変動が認められる.管頭-13~-14m以深では季節変動は微少になり,深度方向に温度は低下,井戸底では約16.1℃でほぼ安定している.この温度プロファイルについて経年的な温度変化を4月値で比較した(図).各年とも管頭-12~-13mは深度方向に地下水温が上昇し,管頭-13~-14mを過ぎると温度低下に反転,井戸底まで低下する傾向は変わらない.このうち最大温度を示す管頭-12~-13m付近の水温を比較すると,2010年4月~2023年4月の13年間で約+0.8℃の上昇が確認できる.一方,千葉測候所における2009~2022年にかけての年平均気温の変化は+0.4℃を示す(気象庁HP).

旭市倉橋における浅層部地下水温変動
 下総台地の東端にあたる旭市倉橋地区は,台地上に広がる畑地に畜舎が点在し,台地間の谷津には水田や耕作放棄地が分布する農作地帯となっている.この倉橋地区には地下水位観測井や湧水調査用の簡易観測井が設置されており,温度センサを備えた自記水位計により連続観測されている.このうち「倉橋-1」(井戸深度22m,スクリーン深度17.5~21.5m)の孔内に設置された水位計(管頭深度約-17m)の温度記録によると,2008~2022年の15年間に約+0.86℃の上昇が認められた.これは銚子気象台における同期間の年平均気温の上昇量+0.8℃(気象庁HP)と調和的である.


まとめ
 千葉県内における観測井の,特に浅層部で経年的に孔内地下水温が上昇していることが認められた.これは気温の上昇傾向と調和的であると推察される. 近年,脱炭素の見地から大都市において地下熱利用が広まりつつあるが,地下水温の現況調査や今後の影響予測についてはまだ不十分と感じる.今後,地下水盆管理の視点を取り入れた地下水温モニタリングを検討していく必要があるだろう.

引用文献
古野邦雄・香川 淳・酒井 豊・風岡 修・吉田 剛・楠田 隆 ,2009,千葉県観測井における孔内地下水の温度.第19回環境地質学シンポジウム論文集,159-162.
香川 淳・堤 克裕・荻津 達・古野邦雄:観測井孔内地下水温度から推定される層相や井戸構造,2018,日本地質学会第125年学術大会講演要旨集.
気象庁,過去の気象データ検索(www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php).