130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

T16[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments【EDI】

[2oral512-19] T16[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

Mon. Sep 18, 2023 3:00 PM - 5:30 PM oral room 5 (27-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Naoko KITADA, Yoshiyuki TAMURA

5:00 PM - 5:15 PM

[T16-O-18] Relationship between liquefaction-fluidization damage and hydrogeological structure in human made strata: From the geological survey on the geological disaster in the northern part of Tokyo bay reclaimed land at the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake

*Osamu Kazaoka1, Takahiro Kojima1 (1. Research Institute of Environmental Geology, Chiba)

Keywords:liquefaction-fluidization, human made strata, the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake, Tokyo bay reclaimed land, Anthropocene sediments

はじめに:
 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際,東京湾岸埋立地北部では地盤の沈下や噴砂・噴水を伴う液状化-流動化現象が斑状に多数発生した(千葉県環境研究センター,2011).浦安市高洲9丁目の平坦地の一部では沈下を伴う噴砂が広くみられ,この噴砂の一部の上には本震の約30分後に発生した最大余震によるものと思われる新たな噴砂が空中写真から読み取れた.この新たな噴砂部分近傍(以下「B-1」という.)と,ここから約24m離れた噴砂がみられない場所(以下「B-2」という.)にてオールコアボーリングを行った.また,ボーリング地点と噴砂にまたがる32m×48mの範囲で8m格子又は4m格子の交点にて動的コーン貫入試験を行った.本震での噴砂の分布範囲は2本のボーリングのほぼ中間付近まで達している.以下に調査結果を述べる.
調査の概要:
 オールコアボーリングはB-1地点(北緯35度37分51秒,東経139度55分7秒,標高3.01m)では深度14mまで,B-2地点(北緯35度37分50秒,東経139度55分8秒,標高3.06m)では深度13mまで行った.
 動的コーン貫入試験は,この周囲で斜面調査用簡易貫入試験機にて深度3~10mまで行った.
地層構成:
 B-1では深度8.01m,B-2では深度8.23mに人自不整合があり,この上位は人工地層,下位は沖積層である.
 沖積層は,人自不整合から下位約2.2mまでは生物擾乱構造がみられる良く締まった灰色の中粒砂層を主体とする.この下位は,灰色の中粒砂層と灰色ないし灰オリーブ色の泥層との互層である.
 人工地層は,上位の盛土アソシエーションと下位の埋立アソシエーションから構成され,その境界は深度0.1~0.56mである.
 埋立アソシエーションは,極細粒砂主体の下部バンドル(層厚0.6~3.8m),細粒砂~中粒砂主体で軟らかな泥層の礫(以下「泥礫」という.)や貝殻片をしばしば含み最上部に連続性の良い泥層を伴う中部バンドル(層厚1.4~4.5m),貝殻片や泥礫混じりの細粒砂~中粒砂層と細粒砂層との互層からなる上部バンドル(層厚2.2~2.8m)から構成される.
 下部バンドルは,灰色のゆるい極細粒砂層を主体とし,砂層中の葉理の多くは消失している.中部バンドルは,下部(層厚0.8~2.2m)・中部(層厚1.6~2.5m)・上部(層厚0.3~0.5m)に分かれる.下部は泥礫や貝殻片混じりの灰色の中位の硬さの細粒砂~中粒砂層と灰色のゆるい細粒砂~中粒砂層との互層で,砂層中の葉理は消失している場合が多い.中部は灰色の非常にゆるい細粒砂層を主体とし,葉理は不明瞭ないしほぼ消失している.上部は灰色の非常にやわらかい粘土質なシルト層である.上部バンドルは,貝殻片や泥礫を含む灰色の中位の硬さの細粒砂~中粒砂層と細粒砂を主体とする灰色の非常にゆるい砂層との互層である.前者には葉理がみられ,後者の砂層では葉理が明瞭な場合が多いが下部に不明瞭ないし消失部分がみられる.最大余震時に噴砂がみられた付近では,非常にゆるい砂層が主体である.地下水面は本層中の深度約1mである.
 盛土アソシエーションは,中粒砂~細礫混じり泥質細粒砂ないしシルト礫混じり泥質細粒砂から構成され,表層部は土壌化し硬さは極ゆるい~中位である.
液状化-流動化に関して:
 液状化-流動化の判定は,風岡ほか(1994)・風岡(2003)に基づき,初生的な堆積構造の状態より判断した.埋立アソシエーションの下部・中部バンドルの砂層の大部分,及び上部バンドルの一部の砂層は葉理が不明瞭ないし消失していることから,この多くが2011年の地震時に液状化-流動化したものと考えられる.中部バンドル上部の難透水層である連続性の良い泥層よりも下位では,調査地全域に著しい液状化-流動化がみられているが,地上での被害は一部に限られる.その被害位置はその難透水層の上位の上部バンドルの非常にゆるい砂層が主体となる部分にほぼ一致する.同様な現象は,千葉市美浜区磯辺地区でも確認されている(風岡ほか,2014).このように人工地層中に連続性の良い難透水層が挟まれている場合は,地上の被害はその難透水層の上位の人工地層の層相変化に影響を受けるものの,下位の液状化-流動化状況にはほとんど影響されないものと推定される.
引用文献:
千葉県環境研究センター,2011,千葉県環境研究センター報告,G-8, 3-1~3-25.
風岡 修ほか,1994,日本地質学会第101年総会・討論会 講演要旨,125-126. 
風岡 修,2003,液状化・流動化の地層断面.アーバンクボタ40号,5-13.
風岡 修ほか,2014, 第24回環境地質学シンポジウム論文集,社会地質学会,9-14.