日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

G-2.ジェネラル サブセッション環境地質・第四紀地質・岩石鉱物火山

[2oral601-11] G-2.ジェネラル サブセッション環境地質・第四紀地質・岩石鉱物火山

2023年9月18日(月) 08:45 〜 12:00 口頭第6会場 (共北37:吉田南総合館北棟)

座長:吉田 剛(千葉県環境研究センター)、長橋 良隆(福島大学)、竹下 欣宏(信州大学教育学部)、宇野 正起(東北大学)

10:00 〜 10:15

[G2-O-5] 江島周辺水域の湖底地形と近世以降の埋立

*渡辺 正巳1,2、平石 充3 (1. 文化財調査コンサルタント株式会社、2. 島根大学エスチュアリー研究センター、3. 島根県古代文化センター)

キーワード:中海、江島、弓ヶ浜半島、トンボロ、湖棚、埋立て地

はじめに
 「
出雲国風土記」は奈良時代の天平5(733)に完成し,奈良時代に全国で編纂された「風土記」のうち,唯一ほぼ完本の形で伝わる「風土記」である.ここでは,奈良時代の出雲国(島根県東部)について,行政のほか地理・地形,農水産物,神話(伝承)など多岐に亘る事柄が記述されている.また「出雲国風土記」では,島根県東部、中海に浮かぶ江島と鳥取県の弓ヶ浜半島を隔てる中浦水道(図1)について「盤石二里許,広さ六十歩許あり.馬に乗りて猶往来ふ.塩満つる時は,深さ二尺五寸許,塩乾る時には,既に陸地の如し.」と記されており,長さ1km 以上,幅100m以上のトンボロ(陸繋砂州)の存在が示唆されていた.そこで演者らは,江島・中浦水道周辺水域の海図を基に,江島周辺水域の海底地形を調べ,「出雲国風土記」に記されていた弓ヶ浜半島から江島に至るトンボロを確認した.更に,従来知られていなかった,江島北側に広がる湖棚の存在を確認した(渡辺・平石,印刷中). 現在の江島は, 宝暦4(1754)年以降,昭和37(1962)年まで断続的に続いた中浦水道の埋立てと,昭和38(1963)年に着手された「国営中海土地改良事業」などによって形作られており,「出雲国風土記」の時代のおよそ5.7 倍の面積になっている(渡辺・平石,2023).また湖底では,埋立て土砂採取の為の浚渫や,「国営中海土地改良事業」や「重要港湾 境港」整備に伴う航路の浚渫が行われていたと考えられる. 今回の発表では,江島周辺水域の湖底地形と,江戸時代以降続いている埋立(伴う浚渫)の関連について報告する.

謝辞
 本研究を進めるに際し,島根大学名誉教授 徳岡隆夫博士には,資料のご提供,ご助言,ご指導を頂いた.島根大学名誉教授 高安克己博士,島根大学エスチュアリー研究センター 瀬戸浩二博士と齋藤文紀センター長には有意義なご助言を頂いた.以上の方々に厚くお礼申し上げます.

引用文献
国土地理院(HP)調査実施湖沼一覧「1/1万湖沼図」で刊行「中海」
渡辺正巳・平石 充(2023)江戸時代以降の江島埋立て史.LAGUNA(汽水域研究), 30, 1-10.
渡辺正巳・平石 充(印刷中)中浦水道のトンボロ.LAGUNA(汽水域研究), 30.

図1説明:調査位置図 国土地理院発行1/1万湖沼図「中海」を利用(渡辺・平石(印刷中)の図1を基に作成)