10:15 AM - 10:30 AM
[G2-O-6] Shape analysis of volcanic glass shards of tephras associated with Plinian eruptions and large scale pyroclastic flow eruptions
Keywords:tephra, volcanic glass, shape analysis, explosive eruption
1.はじめに
テフラ粒子の形態については,あらゆる噴火様式のテフラ粒子を走査型電子顕微鏡による鮮明な画像で示した「Volcanic Ash 2nd Edition」(Heiken and Wohletz, 1992)がある.テフラ粒子の形態は,マグマの発泡や破砕過程の理解に不可欠であり,粒子形状に関わる諸量を数値化することにより検討されている(例えば,Liu et al., 2015など).粒子形状の測定は,粒子の断面形態あるいは3次元粒子を2次元に投影したプロファイルを画像化し,装置付属のソフトウェアあるいはimage Jなどのソフトウェアを用いて測定される.断面形態を用いるのか,投影プロファイルを用いるのかによる形状の数値の違いは,Liu et al.(2015)により,Form Factor,Axial ratio,Solidity,Convexityについて検討されている.
2.測定方法
本研究による粒子形状の測定は,走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM-6610LV,2012年導入)とシリコンドリフトディテクター型EDS検出器(オックスフォード製INCA x-Act,2009年導入),INCA付属(オプション)の粒子解析ソフトウェア(オックスフォード製・INCA Feature,2009年導入)用いて測定した.また,本研究の粒子解析は,テフラ粒子(粒径63μm<250μm)をペトロポキシで包埋し,鏡面研磨の後に炭素蒸着を施したEDS分析用プレパラートの断面形態による.INCA Featureによる測定の概要は,倍率100倍で画像を取得した後,1粒子ずつ自動で粒子の輪郭を識別し(形状の各項目が数値化される),さらに粒子毎に粒子全体の主要元素組成(Si,Al,Fe,Mg,Ca,Na,K:積分時間5秒)を分析する.粒子の主要元素組成により8つの主要造岩鉱物および火山ガラスあるいはその他に自動で分類される.この一連の測定は複数画像および複数試料にわたって設定できるため,1枚のプレパラートの16試料分をほぼ自動で測定し,測定結果を得ることができる.
3.結果と考察
INCA Featureで測定できる粒子形状の項目は,外周(μm),長さ(μm),幅(μm),方向(角度),面積(μm),アスペクト比,円相当径(μm),形状値(外周の2乗/4π×面積)である.ここでの長さは平行する2本の直線に挟まれた最大長さ(Maximum Feret diameter)である.幅は,最大長さとそれに直交する矩形を粒子の外形に当てはめたときの幅を表す. 測定試料は琵琶湖高島沖で掘削された湖底堆積物コアと大阪湾岸で掘削されたボーリングコアに挟まるテフラを対象とした(長橋ほか,2004)による.これにより過去43万年間に近畿地方に降下した約80層のテフラの粒子特性について解析できる.これらのテフラ層の多くは,山陰や九州地方の火山のプリニー式噴火(VEIが4〜5)あるいは九州地方のカルデラ火山の大規模火砕流の噴出に伴うco-ignimbrite ash(VEIが6以上)からなる.火山ガラスの形状は,一噴火輪廻において多様な形態を形成することも知られている(例えば,Hiroi and Miyamoto, 2016).しかし,ここで取り上げるテフラは,一定程度大規模な爆発的噴火によるテフラの粒子特性を系統的に把握するには効率的でり,また光学顕微鏡による火山ガラスの形状分類や鉱物・重鉱物組成が既に報告されているためそれらと相互に比較・検討することもできる. 測定結果が得られたco-ignimbrite ashの18試料の火山ガラスのアスペクト比は,平均2.5(2.0〜3.2)であり,主にプリニー式噴火によると考えられる44試料の火山ガラスのアスペクト比は,平均1.8(1.6〜2.3)である.光学顕微鏡による火山ガラスの形状比(偏平型,中間型,多孔質型)とアスペクト比とを比較すると,偏平型火山ガラスの含有量とアスペクト比には正の相関があり,多孔質型火山ガラスの含有量とアスペクト比には負の相関がある.
文献:Heiken and Wohletz (1992) University of California Press, 246p. Hiroi and Miyamoto (2016) Journal of Volcanology and Geothermal Research, 325 , 86–97. Liu et al. (2015) GeoResJ, 8, 14–30. 長橋ほか(2004)第四紀研究,43, 15−35.
テフラ粒子の形態については,あらゆる噴火様式のテフラ粒子を走査型電子顕微鏡による鮮明な画像で示した「Volcanic Ash 2nd Edition」(Heiken and Wohletz, 1992)がある.テフラ粒子の形態は,マグマの発泡や破砕過程の理解に不可欠であり,粒子形状に関わる諸量を数値化することにより検討されている(例えば,Liu et al., 2015など).粒子形状の測定は,粒子の断面形態あるいは3次元粒子を2次元に投影したプロファイルを画像化し,装置付属のソフトウェアあるいはimage Jなどのソフトウェアを用いて測定される.断面形態を用いるのか,投影プロファイルを用いるのかによる形状の数値の違いは,Liu et al.(2015)により,Form Factor,Axial ratio,Solidity,Convexityについて検討されている.
2.測定方法
本研究による粒子形状の測定は,走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM-6610LV,2012年導入)とシリコンドリフトディテクター型EDS検出器(オックスフォード製INCA x-Act,2009年導入),INCA付属(オプション)の粒子解析ソフトウェア(オックスフォード製・INCA Feature,2009年導入)用いて測定した.また,本研究の粒子解析は,テフラ粒子(粒径63μm<250μm)をペトロポキシで包埋し,鏡面研磨の後に炭素蒸着を施したEDS分析用プレパラートの断面形態による.INCA Featureによる測定の概要は,倍率100倍で画像を取得した後,1粒子ずつ自動で粒子の輪郭を識別し(形状の各項目が数値化される),さらに粒子毎に粒子全体の主要元素組成(Si,Al,Fe,Mg,Ca,Na,K:積分時間5秒)を分析する.粒子の主要元素組成により8つの主要造岩鉱物および火山ガラスあるいはその他に自動で分類される.この一連の測定は複数画像および複数試料にわたって設定できるため,1枚のプレパラートの16試料分をほぼ自動で測定し,測定結果を得ることができる.
3.結果と考察
INCA Featureで測定できる粒子形状の項目は,外周(μm),長さ(μm),幅(μm),方向(角度),面積(μm),アスペクト比,円相当径(μm),形状値(外周の2乗/4π×面積)である.ここでの長さは平行する2本の直線に挟まれた最大長さ(Maximum Feret diameter)である.幅は,最大長さとそれに直交する矩形を粒子の外形に当てはめたときの幅を表す. 測定試料は琵琶湖高島沖で掘削された湖底堆積物コアと大阪湾岸で掘削されたボーリングコアに挟まるテフラを対象とした(長橋ほか,2004)による.これにより過去43万年間に近畿地方に降下した約80層のテフラの粒子特性について解析できる.これらのテフラ層の多くは,山陰や九州地方の火山のプリニー式噴火(VEIが4〜5)あるいは九州地方のカルデラ火山の大規模火砕流の噴出に伴うco-ignimbrite ash(VEIが6以上)からなる.火山ガラスの形状は,一噴火輪廻において多様な形態を形成することも知られている(例えば,Hiroi and Miyamoto, 2016).しかし,ここで取り上げるテフラは,一定程度大規模な爆発的噴火によるテフラの粒子特性を系統的に把握するには効率的でり,また光学顕微鏡による火山ガラスの形状分類や鉱物・重鉱物組成が既に報告されているためそれらと相互に比較・検討することもできる. 測定結果が得られたco-ignimbrite ashの18試料の火山ガラスのアスペクト比は,平均2.5(2.0〜3.2)であり,主にプリニー式噴火によると考えられる44試料の火山ガラスのアスペクト比は,平均1.8(1.6〜2.3)である.光学顕微鏡による火山ガラスの形状比(偏平型,中間型,多孔質型)とアスペクト比とを比較すると,偏平型火山ガラスの含有量とアスペクト比には正の相関があり,多孔質型火山ガラスの含有量とアスペクト比には負の相関がある.
文献:Heiken and Wohletz (1992) University of California Press, 246p. Hiroi and Miyamoto (2016) Journal of Volcanology and Geothermal Research, 325 , 86–97. Liu et al. (2015) GeoResJ, 8, 14–30. 長橋ほか(2004)第四紀研究,43, 15−35.