130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

G-2. sub-Session 02

[2oral601-11] G-2. sub-Session 02

Mon. Sep 18, 2023 8:45 AM - 12:00 PM oral-06 (37-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Takeshi Yoshida, Yoshitaka Nagahashi, Yoshihiro Takeshita(Shinshu Univ), Masaoki Uno

11:00 AM - 11:15 AM

[G2-O-8] Event deposits containing pumice observed in beach deposits at Abu beach, Nago City, Okinawa Prefecture, Japan : Study of the sedimentary processes of drifting pumice

*KOSUKE ISHIGE1, SHIMPEI UESAWA1, SHINGO TAKEUCHI1, KIYOSHI TOSHIDA1, YUKIKO SUWA2 (1. Central Research Institute of Electric Power Industry, 2. CERES, Inc)

Keywords:drifting pumice, storm surge, pumice, Event deposits, Anthropocene

【はじめに】
福徳岡ノ場2021年噴火(以降FOB2021)では爆発的噴火に伴い大規模な漂流軽石が発生し、日本各地の沿岸に漂着した。漂流軽石現象の理解は災害対策において重要であるが、近代日本における大規模な漂流軽石の観測事例は福徳岡ノ場1986年噴火(FOB1986)や西表島北北東海底火山1924年噴火、駒ヶ岳火山1929年噴火など数例しかない。より長期の大規模漂流軽石の発生頻度や規模を定量的に評価するためには、地質時代に漂着し地層化した軽石が、噴火直後の大規模漂着イベントによる産物か、非噴火時に海洋に散在し漂う軽石が漂着した産物かの解釈が重要になる。そのためには,軽石の層相や分布の特徴,堆積プロセスの理解が必要である。しかし、漂流軽石が地層化するプロセスを観測事例から検討した研究に乏しい為、大規模漂着イベントの認定は困難である。
今回、我々は安部海岸の海岸低地において、1950~70年頃に建造された護岸工にアバット不整合で堆積した軽石を含む複数のイベント堆積物で構成される海浜堆積物を発見した。本研究ではイベント堆積物の特徴と漂流軽石が地層化するプロセスを明らかにする目的で、当該地点において露頭観察及びトレンチ掘削を実施し、堆積相の記載と側方対比、及び室内分析を進めているので報告する。また、近年の海底噴火や津波・高潮災害の記録から、イベント堆積物との対比を行い、成因について議論する。
【結果】
安部海岸は浅瀬の湾奥に広がる幅約600 mの砂浜海岸であり、調査地はその南側、ナート川河口付近の海岸低地である。調査地では海岸低地の断面が河口付近から上流側の護岸工までほぼ連続的に露頭として出現している。
本研究ではこれら露頭に加え、海岸低地において深さ~80cmのトレンチを計11地点で掘削し、イベント堆積物の対比を行った。その結果、護岸工にアバット不整合で堆積する8組のイベント堆積物(AEd)を認め、これを上位から下位へa~hとした。 AEd-a~hはいずれも海浜砂主体の無層理~弱い斜交層理をなす堆積物であり、それぞれ上位が海洋浮遊ゴミを普遍的に含む茶色~黒色砂層、下位が海洋浮遊ゴミに乏しい黄白色砂層からなる。このうち、AEd-eの地層中からは1992年頃の食品ゴミが出土するほか、上位の茶色砂層には数㎜~5.5㎝径の円摩されたチョコチップ様の灰色軽石(4)が普遍的に含まれる。AEd-aの黒色砂層は最上位の堆積物であり、海洋浮遊ゴミや2018年表記の食品ゴミを普遍的に含むほか、多様な外見的特徴を有する軽石が散在する。また、安部海岸をはじめとする沖縄本島各地において、FOB2021の漂流軽石が高潮線で軽石モレーン (4)を形成しており、一部は波打ち際で漂着と再漂流を繰り返している。
EPMA を用いて軽石のガラス組成を分析したところ、AEd-eに含まれる軽石はFOB1986で噴出した軽石の平均ガラス組成(3)と類似した。他方で、AEd-aに含まれる軽石はFOBや西之島火山、硫黄島火山に類似したガラス組成を示した。  
【解釈】
安部海岸周辺において、1960年チリ地震津波以降に顕著な津波が到達した記録は無いが、ナート川沿いを氾濫原とする高潮被害が近年少なくとも3回(2007年、2012年、2018年)記録されている。安部海岸は地形的に高潮が発生しやすい事が指摘されており(1)、記録のない高潮が時々発生していたと考えられる。また、漂着ゴミからAEd-eは1992年頃のイベント堆積物と推定される。したがって、少なくともイベント堆積物AEd-a~eは最近数十年に発生した高潮由来と解釈される。
このうち、AEd-eに含まれる軽石は、FOB1986の軽石に類似した外見的特徴とガラス組成を示す。沖縄本島ではFOB1986で発生した大規模な漂流軽石が1987年に漂着した(2)。これらに加え、FOB2021の漂流軽石の観察結果から、AEd-e に含まれる軽石は1987年頃に漂着し、海岸付近で漂着・漂流を繰り返していた軽石、もしくは海岸の高潮線に定置していた軽石が、1992年の高潮によって内陸深くまで再移動して定置し、後年に発生した高潮による砂質堆積物に覆われたことにより地層化した産物と考えられる。AEd-a~dから産出する軽石の多様性と地層中または地表に散在する特徴は、大規模な漂着イベントを示すものではなく、海洋で日常的に広く薄く漂流し、漂着したような軽石と考えられる。
【参考文献】
1. 栽ほか(2008)2008年度沖縄管内気象研究会 p24
2. 加藤(1988)火山 第2集 33(1), 21-30
3. Hiramine et al. (2023) Geogr. rep. Tokyo Metrop. Univ, 2023
4. Yoshida et al. (2022) Island Arc . Vol31, 1