日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

G-2.ジェネラル サブセッション環境地質・第四紀地質・岩石鉱物火山

[2oral601-11] G-2.ジェネラル サブセッション環境地質・第四紀地質・岩石鉱物火山

2023年9月18日(月) 08:45 〜 12:00 口頭第6会場 (共北37:吉田南総合館北棟)

座長:吉田 剛(千葉県環境研究センター)、長橋 良隆(福島大学)、竹下 欣宏(信州大学教育学部)、宇野 正起(東北大学)

11:45 〜 12:00

[G2-O-11] 北海道鹿追町然別と愛別町愛別鉱山に産する多環芳香族炭化水素鉱物、北海道石とカルパチア石

*石橋 隆1、田中 陵二2,3、萩原 昭人、井上 裕貴4 (1. 大阪大・総合学術博、2. 相模中研、3. 東海大・理、4. 九州大・院理)

キーワード:多環芳香族炭化水素、PAH、北海道石、カルパチア石、新鉱物

北海道の2箇所(鹿追町然別地域、愛別町愛別鉱山)において、熱水性シリカ脈に随伴する多環芳香族炭化水素(PAH)類の産出が見いだされた。これらは、コロネン(Cor)C24H12およびコロネンから芳香環がひとつ欠損したベンゾ[ghi]ペリレン(BPer) C22H12を主とし、それに加え分子量150-400程度の雑多なPAH類を伴っている。CorとBPerは共に結晶性固体であり、前者はカルパチア石(carpathite)に同定され、後者は新鉱物の北海道石(hokkaidoite:IMA2022-104)として国際鉱物学連合に承認された。これらは国内における初めてのPAH系有機鉱物の産出例であり、その産状等について報告する。
 鹿追町然別地域では、古温泉に由来する珪華堆積層にオパールの沈殿脈が見られ、高標高部では地表生成性のガイゼライトとなっている。このオパールには、北海道石、著量のBPerを固溶するカルパチア石、および種々のPAH(分子量150-400)の混合物である非晶質ビチューメン等が包有されている。オパール中の北海道石およびカルパチア石は、共に樹状結晶(2 mm以下)の内包物として産し、紫外線の照射により黄-黄緑-青緑の蛍光を示す。また北海道石は珪華層の層間や裂罅に単斜晶の薄板状結晶(0.5 mm以下)が認められる。然別のPAH鉱物と共存する鉱物は、オパールのほか少量の石英、メタ輝安鉱程度で多様性に乏しい。
 愛別町愛別鉱山では、PAHは熱水性水銀鉱床(含辰砂石英脈)に産する。石英の空隙や熱水変質した安山岩の裂罅に、カルパチア石および北海道石の結晶が見られ、それ以外のPAH類(分子量150-300)は鉱染状である。カルパチア石は細柱状や糸状の結晶(0.5- 7 mm)、裂罅に生成した自形結晶で産し、紫外線で青緑に蛍光する。北海道石は程度の薄板状の単結晶(0.1-1.5 mm)およびその集合体、または結晶の形状を示さない1.5 mmまでの不規則な集合体で産する。紫外線で共存するカルパチア石よりもやや青味の強い青緑に蛍光する。PAH鉱物の共存鉱物は、脈石の石英のほか、辰砂、黒辰砂、輝安鉱、鉄明礬石、粘土鉱物などである。