3:15 PM - 3:30 PM
[G3-O-2] AMS 14C dating of paleosols in colluvium at the foot of mountain slope in Uwajima City, Ehime Prefecture, Japan.
Keywords:slope failure, 14C dating, Uwajima City
1.はじめに 斜面崩壊・土石流の発生年代を推定することは,長期的な斜面防災や,渓流の砂防計画,さらには国土の安全な土地利用にとって重要な基礎資料となる.本研究では,2018年西日本豪雨による甚大な被害が発生した愛媛県宇和島市周辺を対象とし,2018年豪雨で土石流が流下した渓流の側壁とボーリングコアに挟在する古い崩壊堆積物から古土壌と炭化物3試料を採取し,14C年代測定を実施したので報告する.
2.対象地域とその地形・地質 対象とした宇和島市周辺では,2018年7月の記録的豪雨により,多数の斜面崩壊と,それに起因する土石流が発生した.崩壊が多発した地質は,仏像構造線南側に分布する四万十帯に属する白亜系の付加体堆積岩類である.
3.分析試料の採取と年代測定 分析用試料の採取位置は,2018年7月豪雨で発生した崩壊土砂が流下した渓流の側壁斜面(露頭),ならびに露頭下流の谷底で掘削されたボーリングコアである.これらの堆積物の記載を行うとともに,堆積物中から炭化物・古土壌を抽出した.得られた3試料は㈱加速器分析研究所に依頼し,AMSによる14C年代測定を行った.δ13Cにより同位体分別効果を補正して得られた14C年代(BP)を得て,暦年(cal BP)に較正した.暦年較正にはIntCal13データセットを用い,OxCalv4.2較正プログラムを利用した.較正した暦年は2σの範囲で表示した.
4.試料採取地点の地質と年代値 試料を採取した地点の地質と得られた年代値について,以下にまとめる.露頭は崩壊斜面の基部にあり,ボーリングコア掘削位置はそれより下流の谷底低地のほぼ中部に位置している.
(1)宇和島市畔屋の露頭 宇和島市畔屋では,ミカン園として利用されている標高約60mの丘陵頂部付近から崩壊が発生し,畔屋地区の集落にまで崩壊土砂が達した.滑落崖の下方斜面には,ミカンの果樹などを含んだ2018年崩壊堆積物の下位に,厚さ約3mに達する古い崩壊堆積物が分布しており,ガリー側壁に露出している.この場所では,明瞭な古土壌を伴わず,下方斜面に向かって傾斜した侵食面を境界として,崩壊堆積物が2層に区分できる.このうち,下位の崩壊堆積物に含まれていた炭化物を採取した.得られた14C年代値は4040±30 yrBP,2σの範囲で最も確率が高い暦年値は4579-4425 cal BP (93.9%)となった.
(2)宇和島市畔屋のボーリングコア 試料を採取したボーリングコアは,掘進長14mで,土砂部分のコアの半分は標準貫入試験が実施されている.地表から深度-2.0mまでが最新の崩壊堆積物(2018年7月豪雨の土石流起源)と推定されるが,深度-0.8~2.0m間は,それ以浅(明褐色)と異なり,色彩が暗褐色を呈することから,別の崩壊イベント起源の可能性もある.深度-2.0~-7.0m間が礫まじり砂で,そのうち-3.0~-3.5m間に古土壌を挟在する.このうち,-4.0~-6.0m間は周囲と異なる明褐色を呈することから,深度-2.0~-7.0m間の礫まじり砂は複数の崩壊イベントの集合体として堆積した可能性がある.深度-8.0~-11.0m間が砂礫で,そのうち,深度-9.0~-9.5m間に古土壌を挟在する.深度-11m付近以深は,基盤である四万十帯の砂岩である.崩壊堆積物は,以上の層相と古土壌に基づき,イベント1~5の5イベントが少なくとも認められ,さらに細分できる可能性も大きい. 得られた古土壌の14C年代測定結果は,上位の-3.15m付近の試料が1770±20 yrBP, 2σの範囲で最も確率が高い暦年値は1679-1600 cal BP (71.4%)となった.一方,下位の-9.15m付近の試料が30850±150 yrBP,2σの範囲で最も確率が高い暦年値は35538-34740 cal BP (95.4%)となった.
5.年代測定値の解釈と課題 2018年崩壊地直下の露頭からは完新世に2回のイベント,ボーリングコアからは更新世~完新世にかけての5回のイベントが,それぞれ推定された.ボーリングコアに基づけば,約35,000年以降に,約9mの厚さの崩壊堆積物が小流域の谷底を埋積していることが判明した.露頭とボーリングコアの年代測定結果と合わせると,ボーリングコアのイベント3は,露頭では2イベントに細分可能と考えられる.このため,約4,500年前以降,2018年を含めて少なくとも4回のイベントが推定され,さらに細分される可能性も大きい.このことから,検討した小流域における完新世の平均的な崩壊発生間隔は,103年に1回オーダーと推定される.
2.対象地域とその地形・地質 対象とした宇和島市周辺では,2018年7月の記録的豪雨により,多数の斜面崩壊と,それに起因する土石流が発生した.崩壊が多発した地質は,仏像構造線南側に分布する四万十帯に属する白亜系の付加体堆積岩類である.
3.分析試料の採取と年代測定 分析用試料の採取位置は,2018年7月豪雨で発生した崩壊土砂が流下した渓流の側壁斜面(露頭),ならびに露頭下流の谷底で掘削されたボーリングコアである.これらの堆積物の記載を行うとともに,堆積物中から炭化物・古土壌を抽出した.得られた3試料は㈱加速器分析研究所に依頼し,AMSによる14C年代測定を行った.δ13Cにより同位体分別効果を補正して得られた14C年代(BP)を得て,暦年(cal BP)に較正した.暦年較正にはIntCal13データセットを用い,OxCalv4.2較正プログラムを利用した.較正した暦年は2σの範囲で表示した.
4.試料採取地点の地質と年代値 試料を採取した地点の地質と得られた年代値について,以下にまとめる.露頭は崩壊斜面の基部にあり,ボーリングコア掘削位置はそれより下流の谷底低地のほぼ中部に位置している.
(1)宇和島市畔屋の露頭 宇和島市畔屋では,ミカン園として利用されている標高約60mの丘陵頂部付近から崩壊が発生し,畔屋地区の集落にまで崩壊土砂が達した.滑落崖の下方斜面には,ミカンの果樹などを含んだ2018年崩壊堆積物の下位に,厚さ約3mに達する古い崩壊堆積物が分布しており,ガリー側壁に露出している.この場所では,明瞭な古土壌を伴わず,下方斜面に向かって傾斜した侵食面を境界として,崩壊堆積物が2層に区分できる.このうち,下位の崩壊堆積物に含まれていた炭化物を採取した.得られた14C年代値は4040±30 yrBP,2σの範囲で最も確率が高い暦年値は4579-4425 cal BP (93.9%)となった.
(2)宇和島市畔屋のボーリングコア 試料を採取したボーリングコアは,掘進長14mで,土砂部分のコアの半分は標準貫入試験が実施されている.地表から深度-2.0mまでが最新の崩壊堆積物(2018年7月豪雨の土石流起源)と推定されるが,深度-0.8~2.0m間は,それ以浅(明褐色)と異なり,色彩が暗褐色を呈することから,別の崩壊イベント起源の可能性もある.深度-2.0~-7.0m間が礫まじり砂で,そのうち-3.0~-3.5m間に古土壌を挟在する.このうち,-4.0~-6.0m間は周囲と異なる明褐色を呈することから,深度-2.0~-7.0m間の礫まじり砂は複数の崩壊イベントの集合体として堆積した可能性がある.深度-8.0~-11.0m間が砂礫で,そのうち,深度-9.0~-9.5m間に古土壌を挟在する.深度-11m付近以深は,基盤である四万十帯の砂岩である.崩壊堆積物は,以上の層相と古土壌に基づき,イベント1~5の5イベントが少なくとも認められ,さらに細分できる可能性も大きい. 得られた古土壌の14C年代測定結果は,上位の-3.15m付近の試料が1770±20 yrBP, 2σの範囲で最も確率が高い暦年値は1679-1600 cal BP (71.4%)となった.一方,下位の-9.15m付近の試料が30850±150 yrBP,2σの範囲で最も確率が高い暦年値は35538-34740 cal BP (95.4%)となった.
5.年代測定値の解釈と課題 2018年崩壊地直下の露頭からは完新世に2回のイベント,ボーリングコアからは更新世~完新世にかけての5回のイベントが,それぞれ推定された.ボーリングコアに基づけば,約35,000年以降に,約9mの厚さの崩壊堆積物が小流域の谷底を埋積していることが判明した.露頭とボーリングコアの年代測定結果と合わせると,ボーリングコアのイベント3は,露頭では2イベントに細分可能と考えられる.このため,約4,500年前以降,2018年を含めて少なくとも4回のイベントが推定され,さらに細分される可能性も大きい.このことから,検討した小流域における完新世の平均的な崩壊発生間隔は,103年に1回オーダーと推定される.