130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

G-3.sub-Session 03

[2oral612-19] G-3.sub-Session 03

Mon. Sep 18, 2023 3:00 PM - 5:15 PM oral-06 (37-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Shintaro Yamasaki, Ken-ichi NISHIYAMA, Yoshihiro Kase

3:30 PM - 3:45 PM

[G3-O-3] Evaluation of slope dizaster risk using three dimensional forest structure detected by airborne laser data

*Mamoru Koarai1, Wataru Murakami2, Yuji Kuwahara3, Idea Murayama4, Keita Watanabe5 (1. College of Science, Ibaraki University, 2. Forestry and Forest Products Research Institute, 3. College of Engineering, Ibaraki University, 4. Japan Conservation Engineers, 5. PASCO)

Keywords:airborne laser data, three dimensional forest structure, slope disaster risk evaluation, Abukuma Granite, Jurassic sedimentary rock

1,はじめに
斜面崩壊に対して樹木の根系が抑止効果を持つとされているが,樹木の根系を調べるためには樹木の根を掘り返さなければならず,必ずしもその実態が解明されている訳では無い。一方で,航空レーザ技術の高度化により樹高をはじめとする植生の三次元構造を面的に捉えることが容易になってきている。そこで,樹木の三次元構造と根系の発達状況が広域に観察できる伐採跡地の作業道で両者の関係を明らかにし,航空レーザデータから森林の三次元構造と根系発達状況を広域かつ面的に推定して,その結果と詳細地形情報や風化状況の情報を組み合わせて斜面の安定性・脆弱性の評価を行うことが重要である。
2.調査地域と研究手法
研究対象地域を,福島県阿武隈山地中部の花崗岩もしくは花崗閃緑岩分布域の伐採地5箇所と八溝山地のジュラ系堆積岩地域の伐採地1箇所とした。植生はスギが主体である。現地調査では,根系発達調査として樹木切り株の直径・根の幅・根の深さとその地点の風化層厚の計測と地形状況の把握を行った。航空レーザデータとの比較のために10m×20m程度の方形区を数箇所設置し,毎木調査(切り株の位置、直径の計測)を行った。航空レーザデータの解析に関しては,樹木本数と胸高直径に着目した。樹木本数については,ArcGISでDCHM(Digital Canopy Height Model)を作成して樹木を抽出する方法を用いた。毎木調査による樹木本数(実測本数)と航空レーザで計測された樹木本数(推定本数)とを比較した。胸高直径については,方形区面積に対する樹木断面積の総和の割合を求め,レーザ透過率との関連性の解析を行った。
3.結果
(1)根系発達調査
樹木の根系発達については,切り株直径と根の幅の間に相関係数0.3から0.5程度の弱い相関が見られた。風化層に関しては,花崗岩地域よりも花崗閃緑岩地域の方が厚いことが分かった。 地形と風化層の関係については,地形からある程度の土壌や風化層の厚さが推定できる可能性が示唆された。
(2)航空レーザデータの解析結果と毎木調査の比較
樹木本数に関しては,全方形区において適合率が高く再現率は低い傾向であり,誤抽出は少ないが未抽出は多いことを示している。樹木本数について毎木調査による実測と航空レーザデータからの推定とを比較した。阿武隈山地の3伐採地に八溝山地の伐採地を加えた全ての方形区の調査結果(図1)では,本数的にはあっていないものの,樹木本数の大小という視点では傾向は捉えられている。樹木の抽出率が悪いのは傾斜が急な影響と予測し,傾斜30°以上の方形区で補正を行うことで樹木抽出に改善がみられた。航空レーザデータに関しては,樹木密度が高いほど樹木の被覆により過小抽出が大きくなり抽出率が下がることがわかった。 レーザ透過率と樹木断面積割合の関係について,阿武隈山地の4地区に八溝山地の伐採地の結果を加えた結果,負の相関が弱いながらも確認できた。幾つかの方形区で外れ値を示す結果となっており,オリジナルデータの点群密度が高すぎる可能性があり,何らかの補正が必要である。樹木直径の情報については,樹高と直径の関係から求めた方がより正確だと判断された。
(3)他の花崗岩地域での検証
斜面崩壊リスク評価に使えるデータは樹高と樹木密度の2つとした。この2つを中心に斜面崩壊のリスクを評価する方法として,根系強度指数を用いる方法を検討した。樹木の引き抜き強度は胸高直径÷樹間距離に比例するとされている。胸高直径は樹高に比例し,樹間距離の2乗は樹木密度に反比例する。よって,根系強度は(樹高)×(疎密度平方根)に比例すると推定できる。この新たな斜面崩壊に関するパラメータを根系強度指数とした。この指数は樹高と樹木密度の情報があれば導けるので,航空レーザデータから求めた樹木に関する情報で斜面崩壊リスク評価が可能である。 阿武隈山地では近年豪雨による斜面崩壊が発生していないため,同じ花崗岩地域で2018年7月の西日本豪雨災害で崩壊が発生している広島県坂町の航空レーザデータを用いて検証を行った。2018年西日本豪雨によって崩壊した場所と崩壊してない場所について,災害発生前の航空レーザデータを用いて地形的情報のみで判定したものと植生の情報を加えた判定したもので比較した。地形的情報のみの判定方法は,集水面積と崩壊地傾斜で表される地形的滑動力指数を用いた。地形的活動力指数と根系強度指数の関係を崩壊・非崩壊でグラフに示した結果,地形情報に植生情報を加えても崩壊・非崩壊の傾向に大きな違いは見られなかった。しかし,一定以上の樹高や根系強度指数があると崩壊は起きていなかったため,根系の状況が崩壊・非崩壊に寄与していることは間違いないと考えられる。
謝辞:本研究は科研費(課題番号:19H01369)の成果である。