4:00 PM - 4:15 PM
[G3-O-5] Spatial and temporal variations in mineral composition of muddy deposits from the Lower–Middle Pleistocene Kazusa Group on the Boso Peninsula, Japan: Implications for caprock integrity in petroleum exploration and geological carbon storage
Keywords:Kazusa Group, Caprock, Mineral composition, Geological carbon storage
油ガス探鉱やCO2地下貯留において,キャップロックとなる泥質岩の毛細管圧や岩石強度などの岩石性状を左右する要素の一つとして鉱物組成が挙げられる.特にCO2地下貯留におけるキャップロックの岩石性状に影響を及ぼすCO2–水–岩石相互作用の観点では,鉱物組成はCO2と岩石との化学反応性を決定する主な要因の一つである.そのため,泥質岩の鉱物組成の空間変化はキャップロック評価において大きな関心事であるが,実際には限られた地下データのみに基づいて評価せざるを得ないことが多く,さらにアナログとなるような同一層準での空間的変化を示した例も少ない.そこで本研究では,挟在するテフラ鍵層により同時期に堆積した泥質岩を広域に対比することが可能な房総半島中央部に分布する下部−中部更新統上総層群を対象に,泥質岩の鉱物組成とその北東方向(沖合方向)に向かった空間的変化ならびに時間的変化を検討した.
検討対象としたのは,上総層群下部の,下位より黄和田層,大田代層,梅ヶ瀬層,柿ノ木台層で,これらの層にそれぞれ挟在するテフラ鍵層Kd8, O7, U1, Ka1の層準の泥質岩である.黄和田層,大田代層,梅ヶ瀬層は陸棚外縁から深海平坦面で形成された堆積物で,泥質岩は主に半遠洋性シルト岩である.一方,柿ノ木台層は外側陸棚堆積物と解釈されており,黄和田層から柿ノ木台層へと,全体として上方浅海化を示す.
黄和田層と大田代層については,4–10 kmの露頭間隔でそれぞれ18 kmと28 kmに渡ってテフラ鍵層を対比し,鍵層近傍の半遠洋性シルト岩をサンプリングした.さらに,養老川付近では梅ヶ瀬層と柿ノ木台層も加えた4層準で半遠洋性シルト岩と泥質岩をサンプリングした.鏡下観察やX線回折分析により,試料ごとの含有鉱物種を決定した.さらに,蛍光X線分析により定量した全岩化学組成と鉱物ごとの化学組成を基に,各鉱物の量比を最適化するよう計算することで鉱物量比を決定した.
検討対象とした泥質岩では,主成分鉱物として石英 (32–37 wt%),カリ長石 (11–14 wt%),斜長石 (10–20 wt%),緑泥石 (7–14 wt%),イライト (6– 8 wt%),スメクタイト (4–11 wt%),方解石 (3– 11 wt%)を,副成分鉱物 (<5 wt%)として角閃石,菱鉄鉱,黄鉄鉱,燐灰石が含まれる.主に深海平坦面で形成された黄和田層と,下部斜面から深海平坦面で形成された大田代層では,鉱物ごとの変動幅は最大3 wt%程度であり,空間的に明瞭な鉱物組成変化は認められない.一方,養老川付近の試料では,深海平坦面で形成された黄和田層から外側陸棚で形成した柿ノ木台層にかけて,最大9 wt%程度の鉱物量比の層序的変動が認められ,Kd8とO7の層準での空間的変化よりも変動幅が大きい.また,上位の層準ほど方解石が減少する傾向が認められる.その他の鉱物については,層準ごとに増減するものの,明瞭な変化の傾向は見られない.
本研究の結果,黄和田層Kd8付近および大田代層O7付近の半遠洋性シルト岩の鉱物組成には明瞭な空間変化は認められなかった.両層準での鉱物組成の側方変化が小さいという結果は,下部斜面から深海平坦面で形成された半遠洋性シルト岩は,少なくとも20–30 km程度の範囲では鉱物組成がほぼ一定であると仮定できることを示唆し,地下評価のための実データが十分ではない場合に参照可能なアナログとなりうる.一方,黄和田層から柿ノ木台層にかけての鉱物組成の垂直的変化は比較的明瞭で,特に方解石含有量は堆積環境が浅海化するほど減少する傾向が明瞭に認められる.このことは,外側陸棚と下部斜面~深海平坦面で形成された泥質岩では,鉱物組成が異なる可能性を示している.このような鉱物組成の側方変化の可能性については,同一層準での調査対象を南西方向(陸側方向)に広げて検討していくことが,今後の課題としてあげられる.
検討対象としたのは,上総層群下部の,下位より黄和田層,大田代層,梅ヶ瀬層,柿ノ木台層で,これらの層にそれぞれ挟在するテフラ鍵層Kd8, O7, U1, Ka1の層準の泥質岩である.黄和田層,大田代層,梅ヶ瀬層は陸棚外縁から深海平坦面で形成された堆積物で,泥質岩は主に半遠洋性シルト岩である.一方,柿ノ木台層は外側陸棚堆積物と解釈されており,黄和田層から柿ノ木台層へと,全体として上方浅海化を示す.
黄和田層と大田代層については,4–10 kmの露頭間隔でそれぞれ18 kmと28 kmに渡ってテフラ鍵層を対比し,鍵層近傍の半遠洋性シルト岩をサンプリングした.さらに,養老川付近では梅ヶ瀬層と柿ノ木台層も加えた4層準で半遠洋性シルト岩と泥質岩をサンプリングした.鏡下観察やX線回折分析により,試料ごとの含有鉱物種を決定した.さらに,蛍光X線分析により定量した全岩化学組成と鉱物ごとの化学組成を基に,各鉱物の量比を最適化するよう計算することで鉱物量比を決定した.
検討対象とした泥質岩では,主成分鉱物として石英 (32–37 wt%),カリ長石 (11–14 wt%),斜長石 (10–20 wt%),緑泥石 (7–14 wt%),イライト (6– 8 wt%),スメクタイト (4–11 wt%),方解石 (3– 11 wt%)を,副成分鉱物 (<5 wt%)として角閃石,菱鉄鉱,黄鉄鉱,燐灰石が含まれる.主に深海平坦面で形成された黄和田層と,下部斜面から深海平坦面で形成された大田代層では,鉱物ごとの変動幅は最大3 wt%程度であり,空間的に明瞭な鉱物組成変化は認められない.一方,養老川付近の試料では,深海平坦面で形成された黄和田層から外側陸棚で形成した柿ノ木台層にかけて,最大9 wt%程度の鉱物量比の層序的変動が認められ,Kd8とO7の層準での空間的変化よりも変動幅が大きい.また,上位の層準ほど方解石が減少する傾向が認められる.その他の鉱物については,層準ごとに増減するものの,明瞭な変化の傾向は見られない.
本研究の結果,黄和田層Kd8付近および大田代層O7付近の半遠洋性シルト岩の鉱物組成には明瞭な空間変化は認められなかった.両層準での鉱物組成の側方変化が小さいという結果は,下部斜面から深海平坦面で形成された半遠洋性シルト岩は,少なくとも20–30 km程度の範囲では鉱物組成がほぼ一定であると仮定できることを示唆し,地下評価のための実データが十分ではない場合に参照可能なアナログとなりうる.一方,黄和田層から柿ノ木台層にかけての鉱物組成の垂直的変化は比較的明瞭で,特に方解石含有量は堆積環境が浅海化するほど減少する傾向が明瞭に認められる.このことは,外側陸棚と下部斜面~深海平坦面で形成された泥質岩では,鉱物組成が異なる可能性を示している.このような鉱物組成の側方変化の可能性については,同一層準での調査対象を南西方向(陸側方向)に広げて検討していくことが,今後の課題としてあげられる.