130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

G-3.sub-Session 03

[2oral612-19] G-3.sub-Session 03

Mon. Sep 18, 2023 3:00 PM - 5:15 PM oral-06 (37-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Shintaro Yamasaki, Ken-ichi NISHIYAMA, Yoshihiro Kase

4:30 PM - 4:45 PM

[G3-O-6] (entry) Temporal change of paleoenvironments of the eastern part of the Izumo Plain, Shimane Prefecture, during the Early Holocene based on analysis of fossil ostracod assemblages

★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★

*【ECS】Nagomi OUE1, Toshiaki IRIZUKI1, Hajime NAKASHIMA1, Koji SETO1, Kota KATSUKI1, Toshimichi NAKANISHI2, Yoshiki SAITO1 (1. Shimane Univ., 2. Fujimu.)

Keywords:Holocene, Lake Shinji, Ostracoda, borehole core , Izumo Plain

島根県東部の出雲市に広がる出雲平野は,完新世に形成された沖積平野で,縄文海進期には古宍道湾と呼ばれる閉鎖的内湾が形成されていたと考えられている(山田・高安,2006など).中島ほか(2020)や大植ほか(2023)は出雲平野東部の宍道湖西岸において掘削されたボーリングコア試料を用いて,産出した微化石の貝形虫化石(石灰質の2枚の殻を持つ微小甲殻類)の群集解析に基づき,古宍道湾の環境変化を予察的に報告した.今回はさらに分析試料数や層準を増やし,これまでの研究結果も統合して前期完新世の約9000年前から7000年前までの古宍道湾の古環境変化を高時間分解能で復元することを目的とする.
 本研究で使用したボーリングコア(HK-19コア)のコア長は 34.8 mで,最下部は淘汰の悪い粗粒堆積物からなり,深度約33 m〜約9.5 m は泥質堆積物からなり,その下半部は塊状で上半部では葉理が発達する.深度約9.5 mから上位では砂泥互層からなり上位へ向け砂層が厚く粗粒堆積物からなる.コアは厚さ1 cmにスライスされ,凍結乾燥後250メッシュ(開口径:63 μm)の篩上で水洗した.乾燥後115メッシュ(開口径:125 μm)の篩上の試料から双眼実体顕微鏡を用いて貝形虫を全て抽出し同定した.
 500以上の試料を検鏡した結果,現段階でコア深度約33 mから約21 mまでの層準の346試料から貝形虫化石が認められ,22種が同定されたが,種多様度は全体的に低かった.最多産種はBicornucythere bisanensisで2番目に多かった種はSpinileberis quadriaculeata であった.いずれの種も日本全国の閉鎖的内湾奥~中央部泥底環境に生息し,前者は水深5~10 m,後者は2~7 mに卓越することが知られている(池谷・塩崎,1993).また,B. bisanensisは内湾の貧酸素環境に最も耐性のある貝形虫種である(入月ほか,2003).その他の種はCytherois uranouchiensisCytheromorpha acupunctataLoxoconcha bispinosaL. uranouchiensisL. vivaなどの閉鎖的内湾の砂泥底種で,汽水生種Cytherura miiiも産出した.
 以上の結果から,これまでの研究結果も考慮して貝形虫化石群集の分析に基づくと古宍道湾の環境の時系列変化は以下のように復元される.
 約9000年~8600年前はC. miiiが断続的に産出することから汽水性の湖沼環境が広がっていた. 約8600~8290年前では,B. bisanensisが急激に増加することから水深5~10 m前後の閉鎖的な内湾泥底が形成された.すなわち,古宍道湾が形成された. 約8290~8060年前には貝形虫の密度が低くなったことから,一時的な塩分低下や閉鎖性の強化があったと考えられるが,原因の詳細は不明である. 約8060~7760年前では,再び貝形虫の密度が高くなり,本研究で最も深い水深15 m以深を示すL. vivaが産出し始め,約7920年前から種多様度も高くなったことから,海水の循環が全層準を通じて最も良くなり,やや開放的な内湾環境へ変化した.これは海水準の急上昇により,東側の古中海と通じたことを反映している.約7760~7600年前では種多様度も減少し始めたため,閉鎖性が強くなり,これは古宍道湾の湾口部が浅くなったことによると推定される. 約7600~7000年前ではB. bisanensisの産出割合・密度が相対的に減少し,S. quadriaculeataC. uranouchiensisの産出割合・密度が増加したのち,汽水性種のCytherura miiiが断続的に産出したことから,徐々に淡水の流入による塩分低下が引き起こされたと推定される.
引用文献:池谷・塩崎(1993)地質論,39,15–23;入月ほか(2003)島根大地球資源環境学研報,22,152–158;中島ほか(2020)汽水域合同研究発表会2020講演要旨;大植ほか(2023)日本地質学会西日本支部2023 講演要旨;山田・高安(2006)第四紀研究,45,391–405.