130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T10[Topic Session]Culture geology【EDI】

[2oral701-10] T10[Topic Session]Culture geology

Mon. Sep 18, 2023 8:45 AM - 12:00 PM oral-07 (38-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Masami INOMATA, Yoshihiro MORINO, Hisashi SUZUKI

9:00 AM - 9:15 AM

[T10-O-2] Petrographic characteristics of stone mills used in Okinawa Prefecture, Japan

*Norihito KAWAMURA1 (1. University of Hyogo)

Keywords:stone mill, stone material, volcanic rock, Okinawa Prefecture, cultural geology

1.はじめに
 沖縄県では,民家で石臼(回転挽臼)が広く用いられていたことが知られている.神谷(1999)は沖縄県内で使用されていた石臼の石材について ,沖縄県立博物館の展示品(当時)を取り上げ,大豆をすりつぶすための挽き石臼として硫黄鳥島産の暗灰色~灰色の輝石安山岩,薬草をつぶすための石灰質の砂岩があることを述べている.これらのうち硫黄鳥島産の石材を用いた臼は明治時代以降に使われていた(恩納村博物館 ,2011).産地からの石材の流通過程や産業・文化の発展を論じる際,石材産地は重要な情報である.賀納(1997)は沖縄県の火成岩製の石臼を観察し,これらは硫黄鳥島産と考えた.このことに対し,暗い色調を示す火山岩には沖縄県久米島の安山岩もあることを大城(2020)は指摘しているので,同定には注意が必要である.沖縄県の石臼の産地同定のためには,石材の岩石学的情報を収集する必要がある.そこで本研究では,沖縄県内の博物館施設で収蔵されている石臼の岩石種について観察を行い,石材の種類について予察的に整理を行った.

2.調査方法
(1)対象
 石臼は,沖縄石の文化博物館,今帰仁歴史文化センター,本部町立博物館,名護博物館,恩納村立博物館収蔵品の一部を調査した.
(2)岩相の観察
 岩相は,風化が進んでおらず付着物のない面を対象に石基の色調,気泡の有無・大きさ,斑晶鉱物の有無やその種類・粒径・量を肉眼で観察して記載した.
(3)帯磁率の測定
 石臼同士の類似性を検討するために,帯磁率の平均値と標準偏差を求めた.これらの統計値を用いて比較することで,石材産地を推定できる場合がある(例えば,﨑山ほか,2023).
 帯磁率は,岩相記載と同様に付着物がないおおむね平坦な面を選んで,1面につき20点ずつ測定した.測定点の間隔は約5 cmとした.測定機器には携帯型帯磁率計(Terraplus社製KT-10)を用いてピンモードで測定した.なお石臼は,一般的に上臼と下臼とも直径約30cm,高さ10cm内外の円筒形をしている.上臼の上面はややへこんでおり,供給孔がある.上臼の下面はおおむね平坦であるが溝が刻まれている.なお,下面の中心に直径数mmの鉄製の芯が埋め込まれている場合がある.鉄棒がない場合は,上下面において各10点,および側面の上下面の中間付近で,外周に沿って20点で測定した.下臼の上下面ともにおおむね平坦であるが,上面には溝が見られる.なお,上面の中心に直径1~2 cmの芯孔に鉄管が埋め込まれている場合がある.鉄管がない場合は,上下面において各10点,および側面の上下面の中間付近で,外周に沿って20点で測定した.
  
3.調査結果
 これまでに石臼25点のデータを得た.石臼の岩石種として砂岩,石灰質砂岩,花崗岩,火山岩(黒色~暗灰色~灰色,淡褐色)の4種が識別できた.このうち石灰質砂岩はいわゆる琉球石灰岩と考えられる.また,火山岩のうち黒色~灰色の岩石は一般的に斜長石の斑晶を含み,まれに輝石が見られる輝石安山岩である.
 黒色~灰色の安山岩の帯磁率の平均値(標準偏差)は,3.0×10-3~2.6×10-2SI(1.5×10-4~4.0×10-3SI)である.

4.課題
 今後は,暗灰色系の火山岩について,石材産地の岩石と石臼の比較を行い,対比を試みたい.また,今回の調査で,これまで報告がなかった花崗岩や角閃石を含む火山岩製の石臼が見つかった.博物館施設等収蔵品の未調査の石臼も多いので追加の調査を行い,資料性の高い報告を目指したい.

謝辞 沖縄県内の博物館施設の館長・職員の方々には調査に際しご高配いただいた.また,兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科の有道俊雄氏には調査をお手伝いいただいた.お世話になった皆様方に御礼申し上げる.

引用文献
神谷厚昭(1999)石材と人間の民俗的・歴史的関わり.沖縄県立博物館紀要,25,53-67.
賀納章雄(1997)先島諸島におけるアワ用農具の形態と地域性.関西大学博物館紀要,3,218-240.
恩納村博物館(2011)恩納100むらのきおく トーフウーシ.広報おんな ,362号 ,12.
大城逸郎(2020)石臼いろいろ.おきなわ石の会.http://okinawanoishi.blog96.fc2.com/blog-entry-472.html(2023.6.26閲覧)
﨑山正人・川村教一・佐野恭平(2023)兵庫県北部および京都府北部の近世~近代玄武岩製石造物の採石地の推定.人と自然,33,49-63.