[T2-P-1] Automation of peak-fitting procedure for estimating the peak metamorphic temperature from Raman spectra of carbonaceous material: Part 2
Keywords:Peak metamorphic temperature, Raman spectroscopy, Carbonaceous material, Peak fitting
地球内部における岩石の続成・変成過程を調べる上で、最高温度は重要な情報である。炭質物は、堆積岩の多くやそれら由来の変成岩類中に一般的に存在し、歪の影響を受けていない場合は周囲の温度条件に対してその熟成度を不可逆的に変化させることから、有効な温度指標として広く用いられてきた。特に2000年代以降、ラマン分光法を用いた地質温度計の開発が盛んに行われており、炭質物ラマンスペクトルから計算可能な様々なパラメータと温度の関係を記述する経験式が数多く報告されている。最高温度における平衡状態を仮定すれば、これらの経験式で計算される温度を最高変成温度として解釈することが可能となる。しかし、モデルパラメータをピークフィッティングで決定する場合、非線形逆解析における初期値を解析者の主観で設定する必要があるため、得られる結果が解析者に依存し、また初期値の設定に多大な時間と労力が必要であるという問題がある。
この問題を解決するため、Kaneki & Kouketsu (2022)は、Kouketsu et al. (2014)が報告した炭質物ラマン温度計を対象とし、Pythonを用いた炭質物ラマンスペクトルの自動ピークフィッティング手法を開発した。コードによる自動解析から推定された温度は、Kouketsu et al. (2014)の報告値と誤差の範囲で一致したことから、手法の有効性が示された。しかし、Kouketsu et al. (2014)の温度計の適用可能範囲は150から400℃であるため、400℃以上の温度を示す岩石についてはKaneki & Kouketsu (2022)の手法を適用することはできない。
Aoya et al. (2010)は、スペクトル中のピークの面積比であるR2比(Beyssac et al., 2002によって定義)に着目することで、340から655℃に適用可能な炭質物ラマン温度計を開発した。そこで本研究では、Kaneki & Kouketsu (2022)のコードの一部を、Aoya et al. (2010)が報告した炭質物ラマン温度計に応用することを試みた。コードを用いてAoya et al. (2010)が温度計を構築する際に用いたデータを再解析した結果、Aoya et al. (2010)と調和的な結果を得た。得られたR2比と温度との関係をモデル化する多項式の次数を決定するため、赤池情報量基準(Akaike Information Criterion; AIC)を用いた解析を行なった結果、二次多項式のモデルが情報量的に最も有利となった。これは、Aoya et al. (2010)の報告と調和的である。今後の課題として、予測誤差の計算の実装、Aoya et al. (2010)以外のデータセットへの適用可能性の検討、R2比のレーザー波長依存性の精査、が挙げられる。本研究とKaneki & Kouketsu (2022)の成果を合わせることで、150から655℃までの温度範囲の岩石について、炭質物ラマンスペクトルの自動解析を行うことが可能となることが期待される。
参考文献
Aoya et al. (2010) Journal of Metamorphic Geology
Beyssac et al. (2002) Journal of Metamorphic Geology
Kaneki & Kouketsu (2022) Island Arc
Kouketsu et al. (2014) Island Arc
この問題を解決するため、Kaneki & Kouketsu (2022)は、Kouketsu et al. (2014)が報告した炭質物ラマン温度計を対象とし、Pythonを用いた炭質物ラマンスペクトルの自動ピークフィッティング手法を開発した。コードによる自動解析から推定された温度は、Kouketsu et al. (2014)の報告値と誤差の範囲で一致したことから、手法の有効性が示された。しかし、Kouketsu et al. (2014)の温度計の適用可能範囲は150から400℃であるため、400℃以上の温度を示す岩石についてはKaneki & Kouketsu (2022)の手法を適用することはできない。
Aoya et al. (2010)は、スペクトル中のピークの面積比であるR2比(Beyssac et al., 2002によって定義)に着目することで、340から655℃に適用可能な炭質物ラマン温度計を開発した。そこで本研究では、Kaneki & Kouketsu (2022)のコードの一部を、Aoya et al. (2010)が報告した炭質物ラマン温度計に応用することを試みた。コードを用いてAoya et al. (2010)が温度計を構築する際に用いたデータを再解析した結果、Aoya et al. (2010)と調和的な結果を得た。得られたR2比と温度との関係をモデル化する多項式の次数を決定するため、赤池情報量基準(Akaike Information Criterion; AIC)を用いた解析を行なった結果、二次多項式のモデルが情報量的に最も有利となった。これは、Aoya et al. (2010)の報告と調和的である。今後の課題として、予測誤差の計算の実装、Aoya et al. (2010)以外のデータセットへの適用可能性の検討、R2比のレーザー波長依存性の精査、が挙げられる。本研究とKaneki & Kouketsu (2022)の成果を合わせることで、150から655℃までの温度範囲の岩石について、炭質物ラマンスペクトルの自動解析を行うことが可能となることが期待される。
参考文献
Aoya et al. (2010) Journal of Metamorphic Geology
Beyssac et al. (2002) Journal of Metamorphic Geology
Kaneki & Kouketsu (2022) Island Arc
Kouketsu et al. (2014) Island Arc