[T2-P-3] (entry) Stress and temperature estimation for Sanbagawa metamorphic rocks in Kanto Mountains: A possibility of occurrence of deep slow earthquakes
Keywords:The Sanbagawa Metamorphic Belt, Deep slow earthquakes, Metamorphic rocks
地震発生帯の下限は脆性-延性遷移領域に一致するとされ、南海に代表されるような温かい沈み込み帯において、脆性-延性遷移領域は深部スロー地震の一種である深部ETSの主な発生源とされている。深部スロー地震に関して、モデルやシミュレーションを用いた地球物理学的な研究や測地学的手法を用いた観測が活発に行われている一方で、地質学的なアプローチによるその発生環境の制約は不十分である。そこで、本研究ではフィールド調査に基づいた地質学的な側面から深部スロー地震の発生環境を捉えることを目指した。
三波川帯は九州北部から関東山地まで続く低温高圧型の変成帯であり、本研究では三波川帯東端に位置する関東山地の秩父地域を調査対象とした。秩父地域荒川沿いでは、特に長瀞周辺において、脆性変形と延性変形が同時に同一の岩体内で起きたことを示す組織が観察されることから、深部スロー地震の発生環境を捉えるのに非常に適した地質であると言える。以上を踏まえ、この地域の変成岩を地質学的な手法に基づいて分析することで、沈み込み帯の脆性-延性遷移領域の応力・温度の推定を行なった。
関東山地の三波川変成岩の変形時の環境の制約として、ラマン炭質物温度計を用いたピーク変成温度の推定、石英の粒径差応力計及び流動則を用いた差応力・歪速度の推定を行なった。秩父地域の広域において変成ピーク温度は~350-400 ℃と推定されたほか、Cross et al. (2017)の応力計及びHirth et al. (2001)の流動則を用いて推定した歪速度は~10-13 /sの値を示した。今回の研究を通じて推定された三波川変成岩の変形時の温度-圧力環境は、現在日本列島で発生している深部ETSの発生環境より浅い領域を示しており、脆性-延性遷移領域の上限に一致していることが推察される。関東山地三波川変成岩の変形と深部スロー地震との関連性については、現在の沈み込み帯と三波川帯の沈み込み・上昇過程との比較やより広域における応力・温度推定等、さらなる検討を行う必要がある。
(引用文献)
Cross, A. J., Prior, D. J., Stipp, M. and Kidder, S. 2017. The recrystallized grain size piezometer for Quartz: An EBSD-based calibration. Geophysical Research letters.
Hirth, G., Teyssier, C. and Dunlap, J.W. 2001. An evaluation of quartzite flow laws based on comparisons between experimentally and naturally deformed rocks. International Journal of Earth Sciences.
三波川帯は九州北部から関東山地まで続く低温高圧型の変成帯であり、本研究では三波川帯東端に位置する関東山地の秩父地域を調査対象とした。秩父地域荒川沿いでは、特に長瀞周辺において、脆性変形と延性変形が同時に同一の岩体内で起きたことを示す組織が観察されることから、深部スロー地震の発生環境を捉えるのに非常に適した地質であると言える。以上を踏まえ、この地域の変成岩を地質学的な手法に基づいて分析することで、沈み込み帯の脆性-延性遷移領域の応力・温度の推定を行なった。
関東山地の三波川変成岩の変形時の環境の制約として、ラマン炭質物温度計を用いたピーク変成温度の推定、石英の粒径差応力計及び流動則を用いた差応力・歪速度の推定を行なった。秩父地域の広域において変成ピーク温度は~350-400 ℃と推定されたほか、Cross et al. (2017)の応力計及びHirth et al. (2001)の流動則を用いて推定した歪速度は~10-13 /sの値を示した。今回の研究を通じて推定された三波川変成岩の変形時の温度-圧力環境は、現在日本列島で発生している深部ETSの発生環境より浅い領域を示しており、脆性-延性遷移領域の上限に一致していることが推察される。関東山地三波川変成岩の変形と深部スロー地震との関連性については、現在の沈み込み帯と三波川帯の沈み込み・上昇過程との比較やより広域における応力・温度推定等、さらなる検討を行う必要がある。
(引用文献)
Cross, A. J., Prior, D. J., Stipp, M. and Kidder, S. 2017. The recrystallized grain size piezometer for Quartz: An EBSD-based calibration. Geophysical Research letters.
Hirth, G., Teyssier, C. and Dunlap, J.W. 2001. An evaluation of quartzite flow laws based on comparisons between experimentally and naturally deformed rocks. International Journal of Earth Sciences.