[T2-P-6] (entry) Reexamination of Thermal structure Ryoke metamorphic complex in Takato-Komagane area, SW Japan
Keywords:Ryoke belt, Thermal structure, Raman carbonaceous material geothermometry, isograd, contact aureole
【はじめに】
高温低圧型変成帯である領家変成帯は柳井地域,青山高原地域および三河地域などで変成分帯と詳細な変成条件の推定が行われてきた (例えば, Ikeda, 2004; Miyazaki, 2010).長野県高遠地域と駒ヶ根地域の領家変成帯ではそれぞれの地域において変成分帯がなされた (例えば, 牧本ほか, 1996; Hokada, 1998; Kawakami, 2004).しかし,両地域の統一的かつ詳細な変成分帯・変成条件の推定はいまだ行われていない.領家変成帯の全体像の解明のためにも,本地域の温度構造を明らかにすることは重要である.本研究は炭質物ラマン温度計と地質温度計・圧力計の適用,温度指標となる微細組織のマッピングおよび変成分帯の再検討を行うことで高遠−駒ヶ根地域の詳細な温度構造を明らかにすることを目的とする.
【地質概要】
長野県高遠−駒ヶ根地域の領家変成帯は,砂岩・泥岩を主体とし,局所的にチャート・苦鉄質岩を原岩とする領家変成岩が南北走向の中央構造線 (MTL) および非持トーナル岩 (領家古期花崗岩類) の西側に広く分布する.領家変成帯は北西から南東へ向かってMTLに近づくにつれて黒雲母帯, 菫青石帯,珪線石帯,ざくろ石−珪線石帯へと変成度が上昇する (牧本ほか, 1996).黒雲母帯から菫青石帯の一部では,高遠花崗岩 (領家新期花崗岩類) による接触変成作用を重複して受けている.本研究ではざくろ石と菫青石の共生関係が観察されたことから,牧野ほか (1996) の設定したざくろ石−珪線石帯をざくろ石−菫青石帯に改めて再定義する.
【研究手法と結果】
黒雲母帯から菫青石帯にかけて採取した泥質片岩中の炭質物を対象に炭質物ラマン温度計 (Aoya et al., 2010) を適用した.その結果,黒雲母帯内において変成温度の最大は∼630°Cを示した.高遠花崗岩の周辺の黒雲母帯から菫青石帯では広域変成作用に加え,接触変成作用による最高被熱温度の重複が確認された.ざくろ石−菫青石帯のざくろ石コアを対象にざくろ石−黒雲母−斜長石−石英圧力計 (Hoisch, 1990),ざくろ石−黒雲母温度計 (Hodges & Spear, 1982) を適用した結果,温度圧力条件を744−799°C,595−620 MPaと推定した.鉱物組み合わせ,部分溶融を示す斜長石,電気石などの分布をマッピングした.ざくろ石−菫青石の組み合わせ,また片理面と平行に配列する珪線石の分布は高遠湖を取り巻くような局所的なものであることが示された.
【議論】
炭質物ラマン温度計の結果から,菫青石アイソグラッド (Hokada, 1996) を∼630−655°Cに制約し,菫青石帯中で炭質物ラマン温度計の推定温度の上限である655°Cに達することが推定された.また,菫青石アイソグラッド上の一部の地点では雲母類の無方向性を示し地下に伏在する新期花崗岩による接触変成作用の影響を受けていると考えられ,菫青石アイソグラッドはより高温側に引かれる可能性がある.この場合,黒雲母の等しい粒径を連ねた等粒径線 (高木ほか, 2005) および炭質物ラマン温度計により示された等温線とも調和的となる.この菫青石アイソグラッドに対し,珪線石およびざくろ石-菫青石アイソグラッドは地質図上にて西に張り出している.この変成帯の分布の特徴について,長濱・高木 (1985) は非持トーナル岩マイロナイト帯の線構造が高遠地域で鉛直に立っていることから,局所的な構造的変動が影響していると考えた.本発表では,新期花崗岩類による接触変成作用の評価や温度構造への影響を考慮した議論を行う予定である.
【引用文献】
Aoya et al. (2010) J. Metamorph. Geol., 28, 895–914; Hodges & Spear (1982) Am Mineral, 67, 1118–1134; Hoich (1990) Contrib Mineral Petrol, 104, 225–234; Hokada (1998) Isl. Arc., 7, 609–620; Ikeda (2004) Contrib Mineral Petrol, 146, 577–589; Miyazaki (2010) Lithos, 116, 287–299; Kawakami (2004) Trans. R. Soc. Edinburgh: Earth Sci., 95, 111–123; 牧本ほか (1996) 地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) 高遠地域の地質, 114; 長濱・高木 (1985) 日本地質学会学術大会第92年学術大会講演要旨, 494; 高木ほか (2005) 日本地球惑星科学連合2005年大会予稿集.
高温低圧型変成帯である領家変成帯は柳井地域,青山高原地域および三河地域などで変成分帯と詳細な変成条件の推定が行われてきた (例えば, Ikeda, 2004; Miyazaki, 2010).長野県高遠地域と駒ヶ根地域の領家変成帯ではそれぞれの地域において変成分帯がなされた (例えば, 牧本ほか, 1996; Hokada, 1998; Kawakami, 2004).しかし,両地域の統一的かつ詳細な変成分帯・変成条件の推定はいまだ行われていない.領家変成帯の全体像の解明のためにも,本地域の温度構造を明らかにすることは重要である.本研究は炭質物ラマン温度計と地質温度計・圧力計の適用,温度指標となる微細組織のマッピングおよび変成分帯の再検討を行うことで高遠−駒ヶ根地域の詳細な温度構造を明らかにすることを目的とする.
【地質概要】
長野県高遠−駒ヶ根地域の領家変成帯は,砂岩・泥岩を主体とし,局所的にチャート・苦鉄質岩を原岩とする領家変成岩が南北走向の中央構造線 (MTL) および非持トーナル岩 (領家古期花崗岩類) の西側に広く分布する.領家変成帯は北西から南東へ向かってMTLに近づくにつれて黒雲母帯, 菫青石帯,珪線石帯,ざくろ石−珪線石帯へと変成度が上昇する (牧本ほか, 1996).黒雲母帯から菫青石帯の一部では,高遠花崗岩 (領家新期花崗岩類) による接触変成作用を重複して受けている.本研究ではざくろ石と菫青石の共生関係が観察されたことから,牧野ほか (1996) の設定したざくろ石−珪線石帯をざくろ石−菫青石帯に改めて再定義する.
【研究手法と結果】
黒雲母帯から菫青石帯にかけて採取した泥質片岩中の炭質物を対象に炭質物ラマン温度計 (Aoya et al., 2010) を適用した.その結果,黒雲母帯内において変成温度の最大は∼630°Cを示した.高遠花崗岩の周辺の黒雲母帯から菫青石帯では広域変成作用に加え,接触変成作用による最高被熱温度の重複が確認された.ざくろ石−菫青石帯のざくろ石コアを対象にざくろ石−黒雲母−斜長石−石英圧力計 (Hoisch, 1990),ざくろ石−黒雲母温度計 (Hodges & Spear, 1982) を適用した結果,温度圧力条件を744−799°C,595−620 MPaと推定した.鉱物組み合わせ,部分溶融を示す斜長石,電気石などの分布をマッピングした.ざくろ石−菫青石の組み合わせ,また片理面と平行に配列する珪線石の分布は高遠湖を取り巻くような局所的なものであることが示された.
【議論】
炭質物ラマン温度計の結果から,菫青石アイソグラッド (Hokada, 1996) を∼630−655°Cに制約し,菫青石帯中で炭質物ラマン温度計の推定温度の上限である655°Cに達することが推定された.また,菫青石アイソグラッド上の一部の地点では雲母類の無方向性を示し地下に伏在する新期花崗岩による接触変成作用の影響を受けていると考えられ,菫青石アイソグラッドはより高温側に引かれる可能性がある.この場合,黒雲母の等しい粒径を連ねた等粒径線 (高木ほか, 2005) および炭質物ラマン温度計により示された等温線とも調和的となる.この菫青石アイソグラッドに対し,珪線石およびざくろ石-菫青石アイソグラッドは地質図上にて西に張り出している.この変成帯の分布の特徴について,長濱・高木 (1985) は非持トーナル岩マイロナイト帯の線構造が高遠地域で鉛直に立っていることから,局所的な構造的変動が影響していると考えた.本発表では,新期花崗岩類による接触変成作用の評価や温度構造への影響を考慮した議論を行う予定である.
【引用文献】
Aoya et al. (2010) J. Metamorph. Geol., 28, 895–914; Hodges & Spear (1982) Am Mineral, 67, 1118–1134; Hoich (1990) Contrib Mineral Petrol, 104, 225–234; Hokada (1998) Isl. Arc., 7, 609–620; Ikeda (2004) Contrib Mineral Petrol, 146, 577–589; Miyazaki (2010) Lithos, 116, 287–299; Kawakami (2004) Trans. R. Soc. Edinburgh: Earth Sci., 95, 111–123; 牧本ほか (1996) 地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) 高遠地域の地質, 114; 長濱・高木 (1985) 日本地質学会学術大会第92年学術大会講演要旨, 494; 高木ほか (2005) 日本地球惑星科学連合2005年大会予稿集.