130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology【EDI】

[2poster26-52] T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Mon. Sep 18, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T6_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T6-P-6] (entry) Grain fabric and characteristics of the spaced stratification in the Upper Cretaceous Izumi Group

★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★

*Takumi NAGATO1, Hajime NARUSE1 (1. Graduate School of Science, Kyoto University)

Keywords:Spaced stratification, Grain fabric, Machine learning, Izumi Group

本研究は,砂岩切片中の砂粒子を効率的に自動判別する画像解析手法を採用することで,粗粒砂岩層に観察される多重逆級化構造(Spaced Stratification)の微細組織の特徴を可視化した.その結果,肉眼では区別がつかないものの,多重逆級化層は実際には2種類の異なる特徴をもった逆級化レイヤーで構成されていることが明らかになったので報告する.
 多重逆級化構造とは,複数枚の逆級化層理から成る堆積構造である(Hiscott and Middleton, 1980).多重逆級化構造は海成の粗粒砂岩層や,陸上のハイパーコンセントレイティッド流堆積物,ラハール堆積物,火砕流堆積物などに観察されている(e.g., Smith, 1986; Palladino and Simei, 2002).これまで,海成の粗粒砂岩層に見られる多重逆級化構造は,高濃度重力流からの堆積作用を表す指標とみなされてきた(Lowe, 1982など).しかし,多重逆級化層を水槽実験で再現した例は無く,その形成メカニズムについては分かっていないことが多い.そもそも,多重逆級化層とよばれる堆積構造が単一のメカニズムによって形成される構造なのか,それとも複数の異なるプロセスによって類似した構造が形成されうるのかについても既存研究では十分な検討はなされてこなかった.そこで,多重逆級化構造の形成プロセスを理解するための基礎として,本研究は実際の地層中にみられる多重逆級化層の多様性を微細組織の観点から検討した.
 本研究では,多重逆級化構造の粒度分布および粒子配列を観察するために,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた画像解析モデルを作成した. CNNモデルには,U-Net型の構造を採用し (Ronneberger et al., 2015),人為的に粒子をトレースした教師画像を作成してモデルの訓練を行った.多重逆級化層の砂岩試料にモデルを適用する際には,まず岩石を切断・研磨し,デスクトップスキャナーで断面画像を4800 dpiで撮影した.次に,得られた画像に対して粒子判別モデルを適用すると,画像中で砂粒子と基質部とを判別した二値化画像が出力される.この出力画像から砂粒子の粒径や面積,長軸と短軸の比,円磨度,インブリケーション角などを測定した.この画像解析から,本研究は多重逆級化層内の粒度・粒子配列の変動パターンをミリメートル以下のスケールで連続的に解析することに成功した.
 本研究で解析を行ったのは,徳島県北部大毛島に分布する白亜系和泉層群板東谷層および兵庫県淡路島南東部に分布する和泉層群灘層で採取した多重逆級化構造を示す砂岩試料である.解析の結果,本研究の調査地で観察される多重逆級化構造は2つのタイプの逆級化レイヤーで構成されていることが見出された.タイプ1のレイヤーは比較的粗い粒子で構成され,それらの粒子は高角(> 30°)な平均インブリケーション角を示す.このタイプのレイヤーでは,粒径やインブリケーション角が鉛直方向に大きくばらつくという特徴もみられた.一方,タイプ2のレイヤーは比較的細粒な粒子で構成され,平均インブリケーション角には多様性があるものの,粒径やインブリケーション角は鉛直方向にあまり変化しないという特徴がある. 一つの多重逆級化層の中にはこれら二つのタイプのレイヤーがどちらも含まれていることがあるが,常にタイプ1のレイヤーが下位にあることも明らかになった.
 今回認識した多重逆級化構造に含まれる2種類の逆級化レイヤーの形成メカニズムは現時点では明らかではない.しかし,本研究の結果は,一見すると同一のプロセスで形成された多重逆級化構造が,実際には2つ以上の異なるプロセスから形成されている可能性を示唆している.今後は水槽実験で多重逆級化構造を再現し,実験堆積物が示す粒子配列を野外で観察された試料と比較することで,多重逆級化構造の形成プロセスの解明を目指す予定である.

引用文献
Hiscott, R. N., and Middleton, G. V., 1980, Jour. Sedimentary Research, 50, 703–721.
Smith, G.A., 1986, Geol. Soc. America Bulletin, 97, 1–10.
Palladino, D. M., and Simei, S., 2002, Jour. Volcanology and Geothermal Research, 116, 97–118.
Lowe, D. R., 1982, Jour. Sedimentary Petrology, 52, 279–297.
Ronneberger, O., Fischer, P., and Brox, T., 2015, MICCAI, 9351, 234–241.