[T6-P-7] An attempt for automated estimation of bioturbation intensity and ichnodiversity from the core section images by application of the convolutional neural networks
Keywords:Ichnology, IODP Exp. 322, submarine-fan deposits, semantic segmentation
本研究は,海底掘削コア画像から生痕化石の領域を自動抽出し,生物撹拌強度と生痕多様性を推定するモデルを開発した.海洋底生動物の活動による生物撹拌作用によって,海底の堆積物は移動・変形し,生痕化石として地層中に記録・保存される.生物撹拌作用の影響の大きさは,生物撹拌作用の強さ(生物撹拌強度)や生痕化石群集の分類群数(生痕多様性)として表現される.生物撹拌強度は一般に露頭面を占める生痕化石の面積の割合として見積もられる.また,生痕多様性には露頭の観察面積の増加に伴って見かけの多様性が増加する効果がある.この効果を補正するためにも,生痕分類群ごとの面積の割合が必要である(Kikuchi et al., 2018).このため,生物撹拌強度や生痕多様性の長期的な変動を復元するためには,堆積岩の断面画像から生痕化石の領域を自動的に抽出する方法が不可欠である.
そこで,畳み込みニューラルネットワークを用いたセマンティックセグメンテーション技術によってコア画像から生痕化石の領域を自動抽出するモデルを本研究は提案する.さらに,開発したモデルをIODP Expedition 322 Site C0011で掘削された海底扇状地堆積物のコア断面画像に適用し,生痕分類群ごとの予測性能を検証した.
Site C0011のコアは主に中新世の深海堆積物からなる(Pickering et al., 2013).調査層準からは,Chondrites,Nereites,Palaeophycus,Planolites,Phycosiphon,Scolicia,Zoophycosの7属の生痕化石が産出した.コア断面に対する生痕化石の面積比を計算したところ,PlanolitesとZoophycosが卓越した.本研究ではこれらの7属に加え,背景,コア断面,の合計9色でコア画像を人為的に着色した画像を作成して教師データとし,コア画像との関係をCNNに学習させた.CNNの構造にはU-Netを採用した(Ronneberger et al., 2015).また,U-Netのエンコーダ部にはImagenetと呼ばれる大規模画像データセットで事前学習を行ったEfficientNetV2(Tan and Le, 2021)を使用して転移学習を行った.
学習の結果,モデルを未知のコア画像に適用したところ80%程度のピクセルの分類が人為的に着色した正解画像と一致する推定画像が出力された.特に,背景とコア断面の領域は精度よく分類された.生痕化石では,教師データ中の面積比が大きかったPlanolitesとZoophycosはある程度再現されたものの,その他の生痕属の予測精度は低かった.コア画像中を占める面積比が大きかった2属を除いて予測精度が低かった理由として,教師データの不足や生痕化石の分類の難しさが考えられる.たとえば,小型の生痕属はコア断面を占める面積比が小さくなりやすく,教師データを得にくい.また,生痕化石の充填物と母岩との色のコントラストが小さいPalaeophycusは色情報に基づいた分類が行いにくいと考えられる.今後の課題として,クラス間不均衡を補正した損失関数の採用や画像生成モデルを用いたドメイン適応によるデータ拡張によって,産出頻度の低い生痕属の分類を補助するような学習方法を検討する必要があるだろう.また,生痕化石の形態の特徴を抽出しやすい色空間やサンプリングウィンドウサイズを探索することで,分類の難しい生痕属も高い精度で推定可能なモデルを開発できるものと期待される.
引用文献
Kikuchi, K. et al., 2018, Palaios, 33, 204–217.
Pickering, K. et al., 2013, Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 14, 1722–1739.
Ronneberger, O. et al., 2015, in Navab, N. et al. Eds., Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention–MICCAI 2015, Springer International Publishing, Cham. pp. 234–241.
Tan, M. and Le, Q., 2021, Proceedings of the 38th International Conference on Machine Learning, PMLR 139, 10096–10106.
そこで,畳み込みニューラルネットワークを用いたセマンティックセグメンテーション技術によってコア画像から生痕化石の領域を自動抽出するモデルを本研究は提案する.さらに,開発したモデルをIODP Expedition 322 Site C0011で掘削された海底扇状地堆積物のコア断面画像に適用し,生痕分類群ごとの予測性能を検証した.
Site C0011のコアは主に中新世の深海堆積物からなる(Pickering et al., 2013).調査層準からは,Chondrites,Nereites,Palaeophycus,Planolites,Phycosiphon,Scolicia,Zoophycosの7属の生痕化石が産出した.コア断面に対する生痕化石の面積比を計算したところ,PlanolitesとZoophycosが卓越した.本研究ではこれらの7属に加え,背景,コア断面,の合計9色でコア画像を人為的に着色した画像を作成して教師データとし,コア画像との関係をCNNに学習させた.CNNの構造にはU-Netを採用した(Ronneberger et al., 2015).また,U-Netのエンコーダ部にはImagenetと呼ばれる大規模画像データセットで事前学習を行ったEfficientNetV2(Tan and Le, 2021)を使用して転移学習を行った.
学習の結果,モデルを未知のコア画像に適用したところ80%程度のピクセルの分類が人為的に着色した正解画像と一致する推定画像が出力された.特に,背景とコア断面の領域は精度よく分類された.生痕化石では,教師データ中の面積比が大きかったPlanolitesとZoophycosはある程度再現されたものの,その他の生痕属の予測精度は低かった.コア画像中を占める面積比が大きかった2属を除いて予測精度が低かった理由として,教師データの不足や生痕化石の分類の難しさが考えられる.たとえば,小型の生痕属はコア断面を占める面積比が小さくなりやすく,教師データを得にくい.また,生痕化石の充填物と母岩との色のコントラストが小さいPalaeophycusは色情報に基づいた分類が行いにくいと考えられる.今後の課題として,クラス間不均衡を補正した損失関数の採用や画像生成モデルを用いたドメイン適応によるデータ拡張によって,産出頻度の低い生痕属の分類を補助するような学習方法を検討する必要があるだろう.また,生痕化石の形態の特徴を抽出しやすい色空間やサンプリングウィンドウサイズを探索することで,分類の難しい生痕属も高い精度で推定可能なモデルを開発できるものと期待される.
引用文献
Kikuchi, K. et al., 2018, Palaios, 33, 204–217.
Pickering, K. et al., 2013, Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 14, 1722–1739.
Ronneberger, O. et al., 2015, in Navab, N. et al. Eds., Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention–MICCAI 2015, Springer International Publishing, Cham. pp. 234–241.
Tan, M. and Le, Q., 2021, Proceedings of the 38th International Conference on Machine Learning, PMLR 139, 10096–10106.