[T6-P-10] (entry) Sedimentary characteristics and their change due to flooded sediment gravity flow in the Suruga Bay
Keywords:Suruga Bay, Sedimentary Gravity Flow, Fujigawa river, rainy season, typhoon
1.概要
駿河湾はプレート境界に位置し,最大水深が湾口部で約2500 mに達する急峻な地形的特徴を持つ湾である.湾奥部からは一級河川である富士川(全長約128 km)が流入し,大量の砕屑物を海域に供給している.梅雨や台風に伴う大雨時には,駿河湾奥部で河川流量増加に伴う堆積物重力流が発生していると考えられる.
本研究では,駿河湾奥部における堆積物の変化および移動を把握することを目的に,採泥調査・岩相観察・粒度分析を行った.
2.方法
東海大学所有の調査船望星丸(約2000㌧),北斗・南十字(19㌧)を用いて,詳細な海底地形,後方散乱強度の取得,およびスミスマッキンタイヤ式グラブ採泥器を用いた表層堆積物試料採取を行った.堆積物試料は,アクリルの角柱容器による柱状試料,および各層(極表層:0~0.5 cm,表層,全体)を採取した.観測は,富士川河口から湾口に向かう南北測線上に設定した定点(トラフ軸に沿って水深20 m,50 m,100 m,300 m,~1500 mまで100 m毎)において,定期的(梅雨前・梅雨後・台風後)に実施している.
本発表では,2021年の台風後,2022年の梅雨前・梅雨後・台風後,2023年の梅雨前の試料を用いた.
3.結果
海底地形の変換点をもとに,4つの範囲((1)水深20~100 m,(2)水深100~900 m,(3)水深900~1350 m,(4)水深1350 m以深)に区分した.
(1)富士川河口から約1.0 km(水深20~100 m)までの範囲では,沖合より緩やかな傾斜(5.8°)を示した.堆積物は主に礫や砂質堆積物(中粒砂~粗粒砂)からなり,表層では生物擾乱が観察された.季節的な変化として,梅雨前には河口付近(河口から約0.6 km,水深20 m)において黒や茶に変色した植物片が層厚約数cmで堆積している様子が観察されたが,梅雨・台風後では観察されなかった.
(2)河口から約1.0~6.3 kmの地点(水深100~900 m)は急勾配(9.1°)で特徴づけられる.表層堆積物は年間を通して,級化構造を示す礫や砂質堆積物(中粒砂~粗粒砂)の上に泥質堆積物が漸移的に堆積している.台風後の堆積物は台風・梅雨前の堆積物(中粒砂~粗粒砂)に比べ,粗粒な堆積物(中粒砂~礫)が確認された.
(3)河口から約6.3~10.7 km(水深900~1350 m)では,上部よりやや緩やかな傾斜(8.1°)を示した.表層堆積物には砂質堆積物(細粒砂~中粒砂)の上に泥質堆積物が漸移的に堆積している特徴が観察された.河口から約7.4 km(水深1075 m)の地点では,2021年台風後の海底映像から富士川沿いに自生する植物に似た特徴を持つ緑色の植物が観察された.
(4)河口から約10.7 kmより沖合(水深1350 m~)の傾斜は5.9°を示す.表層堆積物は,明瞭な境界を持つ泥質堆積物と砂質堆積物(細粒砂~極細粒砂)の互層からなる.2023年3月には,河口から約12.9 km離れた地点(水深1400 m)から,硫化物臭のする黒色の泥質堆積物が観察された.また,この地点周辺では海底映像から円礫や亜円礫の分布,北方向に凸部を持つ浸食地形,密集した植物片,堆積物により埋まった人工物などが観察された(中村ほか,2023).
4.まとめ
①駿河湾奥部の堆積物に共通する特徴として,海底表面は泥質堆積物が分布しているが,その下位の岩相および粒度特徴は粒度は各水深帯で異なることが分かった.これらの駿河湾奥部の海底堆積物は,富士川河口から沖に向かって,その粒度が細粒化することが明らかとなった.
②駿河湾奥部の堆積物は陸源の植物片(葉や茎,木片など)を含む特徴がみられた.これらは,堆積物表面や柱状試料中に植物片層(層厚0.5 cm)として観察された.植物片の大きさは,沖合に向かって小さくなる(5 cmサイズから数mmに変化)特徴がみられた.また,台風後には,その分布が河口から沖合(水深1075 m以深)に広がる傾向が確認された.したがって,植物片は梅雨前には富士川河口付近に堆積するが,梅雨・台風時期に砕屑物とともに沖合まで運搬されることが考えられる.
以上より,堆積物の特徴および海底(水深約1400 m)に残された侵食地形なども合わせると,駿河湾では,梅雨・台風などに伴う河川増水によって,海底に植物片を含む礫などの粗粒な堆積物を移動・運搬する洪水性堆積物重力流が発生していると考えられる.
【引用文献】中村ほか(2023) JPGU2023,HCG-22-P01
駿河湾はプレート境界に位置し,最大水深が湾口部で約2500 mに達する急峻な地形的特徴を持つ湾である.湾奥部からは一級河川である富士川(全長約128 km)が流入し,大量の砕屑物を海域に供給している.梅雨や台風に伴う大雨時には,駿河湾奥部で河川流量増加に伴う堆積物重力流が発生していると考えられる.
本研究では,駿河湾奥部における堆積物の変化および移動を把握することを目的に,採泥調査・岩相観察・粒度分析を行った.
2.方法
東海大学所有の調査船望星丸(約2000㌧),北斗・南十字(19㌧)を用いて,詳細な海底地形,後方散乱強度の取得,およびスミスマッキンタイヤ式グラブ採泥器を用いた表層堆積物試料採取を行った.堆積物試料は,アクリルの角柱容器による柱状試料,および各層(極表層:0~0.5 cm,表層,全体)を採取した.観測は,富士川河口から湾口に向かう南北測線上に設定した定点(トラフ軸に沿って水深20 m,50 m,100 m,300 m,~1500 mまで100 m毎)において,定期的(梅雨前・梅雨後・台風後)に実施している.
本発表では,2021年の台風後,2022年の梅雨前・梅雨後・台風後,2023年の梅雨前の試料を用いた.
3.結果
海底地形の変換点をもとに,4つの範囲((1)水深20~100 m,(2)水深100~900 m,(3)水深900~1350 m,(4)水深1350 m以深)に区分した.
(1)富士川河口から約1.0 km(水深20~100 m)までの範囲では,沖合より緩やかな傾斜(5.8°)を示した.堆積物は主に礫や砂質堆積物(中粒砂~粗粒砂)からなり,表層では生物擾乱が観察された.季節的な変化として,梅雨前には河口付近(河口から約0.6 km,水深20 m)において黒や茶に変色した植物片が層厚約数cmで堆積している様子が観察されたが,梅雨・台風後では観察されなかった.
(2)河口から約1.0~6.3 kmの地点(水深100~900 m)は急勾配(9.1°)で特徴づけられる.表層堆積物は年間を通して,級化構造を示す礫や砂質堆積物(中粒砂~粗粒砂)の上に泥質堆積物が漸移的に堆積している.台風後の堆積物は台風・梅雨前の堆積物(中粒砂~粗粒砂)に比べ,粗粒な堆積物(中粒砂~礫)が確認された.
(3)河口から約6.3~10.7 km(水深900~1350 m)では,上部よりやや緩やかな傾斜(8.1°)を示した.表層堆積物には砂質堆積物(細粒砂~中粒砂)の上に泥質堆積物が漸移的に堆積している特徴が観察された.河口から約7.4 km(水深1075 m)の地点では,2021年台風後の海底映像から富士川沿いに自生する植物に似た特徴を持つ緑色の植物が観察された.
(4)河口から約10.7 kmより沖合(水深1350 m~)の傾斜は5.9°を示す.表層堆積物は,明瞭な境界を持つ泥質堆積物と砂質堆積物(細粒砂~極細粒砂)の互層からなる.2023年3月には,河口から約12.9 km離れた地点(水深1400 m)から,硫化物臭のする黒色の泥質堆積物が観察された.また,この地点周辺では海底映像から円礫や亜円礫の分布,北方向に凸部を持つ浸食地形,密集した植物片,堆積物により埋まった人工物などが観察された(中村ほか,2023).
4.まとめ
①駿河湾奥部の堆積物に共通する特徴として,海底表面は泥質堆積物が分布しているが,その下位の岩相および粒度特徴は粒度は各水深帯で異なることが分かった.これらの駿河湾奥部の海底堆積物は,富士川河口から沖に向かって,その粒度が細粒化することが明らかとなった.
②駿河湾奥部の堆積物は陸源の植物片(葉や茎,木片など)を含む特徴がみられた.これらは,堆積物表面や柱状試料中に植物片層(層厚0.5 cm)として観察された.植物片の大きさは,沖合に向かって小さくなる(5 cmサイズから数mmに変化)特徴がみられた.また,台風後には,その分布が河口から沖合(水深1075 m以深)に広がる傾向が確認された.したがって,植物片は梅雨前には富士川河口付近に堆積するが,梅雨・台風時期に砕屑物とともに沖合まで運搬されることが考えられる.
以上より,堆積物の特徴および海底(水深約1400 m)に残された侵食地形なども合わせると,駿河湾では,梅雨・台風などに伴う河川増水によって,海底に植物片を含む礫などの粗粒な堆積物を移動・運搬する洪水性堆積物重力流が発生していると考えられる.
【引用文献】中村ほか(2023) JPGU2023,HCG-22-P01