130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology【EDI】

[2poster26-52] T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Mon. Sep 18, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T6_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T6-P-12] (entry) Characteristics of sand grain composition of tsunami sediment from the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake and Tsunami in Hirota Bay

*Satoshi Watanabe1, Sakamoto Izumi2, Yokoyama Yuka2 (1. Graduate School of Oceangraphy, Tokai University, 2. Tokai University Faculty of Oceanography)

Keywords:Tohoku Pacific Ocean Okinawa Earthquake, Tsunami deposits, Sand grain mineral composition

2011年3月11日三陸沖を震源とする東北地方太平洋沖地震(Mw.9.0)が発生した.それに伴う津波により,東北地方太平洋沖沿岸域に甚大な被害を受けた.東北地方の湾内浅海域から,この津波による津波堆積物が確認され,岩手県広田湾ではその起源が周辺海岸砂と津波前の海底堆積物にある可能性が推察された(横山他,2021).本発表では,砂粒鉱物組成を用いて津波堆積物の起源を明らかにするため,津波堆積物,津波前海底堆積物および周辺海岸砂の砂粒鉱物組成分析を行った.
 調査は岩手県広田湾を対象に行った.広田湾の後背地質は,東西で異なり,湾東部(広田半島)に白亜系花崗岩類,湾西部(唐桑半島)に古生界堆積岩類が分布している.湾奥部からは2級河川の気仙川が流入し,周辺には石灰岩・デイサイト・花崗岩類・海成泥岩が分布している.広田湾は,湾東西で後背地質が異なることから,それぞれの特徴を示し,起源推定に適した湾と考える.
 試料は,湾奥部(高田松原海岸),湾東部2地点(大陽・矢の浦,金室崎),湾西部2地点(古谷,福伏)を用いた.コア試料は,2013年に採取した13HV10(水深18.0 m,海岸から約2 km,全長141 cm),2014年に採取した14HV6(水深28.5 m,海岸からの距離約3 km,全長110 cm)を用いた.これらの試料に対し,レーザー回析散乱法による粒度分析,岩相記載,砂粒鉱物組成分析を行った.砂粒鉱物分析では,篩を用いて,粗粒砂,中粒砂,細粒砂に対して,実体顕微鏡を用いて1試料について,200個以上を同定した.
 海岸砂の砂粒鉱物組成は,主に花崗岩片,石英,長石が確認された.花崗岩片は湾奥部に近い地域(高田松原海岸,大陽・矢の浦,古谷)で高い割合で見られた.湾奥部から湾口部に向けて,花崗岩片の割合は減少し,広田半島(金室崎)では石英や角閃石,唐桑半島(福伏)では堆積岩や斜長石が多く認められた.
 コア試料はいずれも上位の砂層(Layer1),下位(Layer2)の泥~砂混じり泥層に区分され,明瞭な不連続面で区分される.横山他(2021)により,両コア試料におけるLayer1は,2011年の東北地方太平洋沖地震による津波堆積物,Layer2は湾内通常堆積物と推定されている.
 13HV10のLayer1(津波堆積物層)の層厚は約48 cm認められた.層内部(約24 cm)にも,沖へ傾斜する不連続面が確認され,その上部と下部は異なるタイミングに堆積した可能性が示唆される.13HV10の砂粒鉱物組成は,10 cm間隔で観察した.その結果,全体として花崗岩片・雲母・石英の順に多く確認された.どの層および粒度においても花崗岩片と雲母が約60~80 %の割合を占めた.層毎では,Layer1は花崗岩片・雲母・石英の順に高く,Layer2では雲母・花崗岩片での順に高く,主な鉱物組成が異なった.また,雲母の割合はLayer2と比較し,Layer1でその変化が大きい傾向が見られた.
 14HV6のLayer1の層厚は約25 cm認められた.このコアは,Layer2の約103~105 cm層に極細粒砂が狭在し,下位層と明瞭な不連続面をもって区分され,過去のイベント層の可能性が考えられる.砂粒鉱物組成は,15 cm間隔で観察した.このコアでは,13HV10と異なり,生物片(貝殻片や有孔虫など)が確認され,一部の層では急激にその割合が増加した.鉱物組成は,主に雲母,花崗岩片,石英からなり,Layer1では,雲母,花崗岩片および石英が卓越し,雲母の割合が大きく変化する傾向が確認された.Layer2では雲母に加えて,生物片が多く見られた.また,Layer2に狭在する砂層の組成は,Layer1の組成と似通っており,イベント層は通常時堆積物と異なる組成を示す可能性が考えられる.
 以上より,広田湾の砂粒鉱物組成は津波堆積物(Layer1)も津波前通常堆積物(Layer2)も,主に花崗岩片と雲母からなることが分かったが,コア試料中に見られた花崗岩片および角閃石は気仙川・広田半島を起源に持つ可能性が考えられる.コア試料の砂粒鉱物組成の割合は,Layer1とLayer2で異なることが認められた.特に13HV10では,Layer1では花崗岩片が卓越し,Layer2では雲母片が卓越した.また,14HV6のLayer2に狭在するイベント砂層は,Layer1と似通った組成を示し,イベント層の同定に砂粒鉱物組成が有用な情報を与えると考えられる.また,コア試料には,雲母が全体的に確認されたのに対し,海岸砂ではほとんど見られなかった(約0~7.5 %).これは,海岸が波浪の影響で雲母は堆積しにくい環境であると考えられる.
[引用文献] 横山ほか(2021)堆積学研究,79(2),47-69.