[T6-P-19] (entry) Paleoenviromental comparison using paleosols: Comparative researches on paleosols between the Eocene-Oligocene and the Lower Miocene, Joban Area , Northeast Japan
★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
Keywords:Paleosol, Paleoweathering, Fluvial sedimentary facies, Eocene-Oligocene, Miocene
はじめに: 古第三紀の日本列島は, 日本海形成以前のユーラシア大陸東岸に位置していたことが知られている. 日本海と中央高地の形成によって, 現在の日本列島は海洋の影響が大きい気候条件下にある. 日本海と日本アルプス等の中央高地の形成は新第三紀から第四紀にかけて生じており,(原山ほか,2003;菅沼ほか,2003) 古第三紀の日本列島は現在と大きく異なる気候条件下にあったと考えられる. そこで,本研究では東北日本常磐地域の日本海形成前の古第三系始新統–漸新統と日本海形成後の新第三系中新統に発達する古土壌を対象に古環境復元を行い, 古風化環境や当時の日本列島の気候条件を比較検討した.
地質概説: 古第三系始新統–漸新統では白水層群石城層(須貝ほか,1957),新第三系中新統では湯長谷層群椚平層(半沢,1954)を研究対象とした.石城層は脊椎動物化石の記録や,花粉化石及び貝類化石群集の変化から,古第三紀後期始新世から前期漸新世に堆積したとされる(須藤ほか,2005).一方,椚平層は20.8±1.2 Ma及び17.4±1.0 MaのFT年代が報告されており,下部中新統とされる (久保ほか, 1994, 2002).
堆積相と古土壌構成: 常磐地域での堆積相解析の結果, 本研究地域の石城層は主に礫質河川堆積物と蛇行河川の氾濫原堆積物から構成される. 本層では, 礫質河川のマイナーチャネル堆積物, 蛇行河川の氾濫原堆積物および後背湿地堆積物において古土壌を認めた. 本層の古土壌のほとんどは明瞭な土層分化を伴わない未成熟なものである.しかし,氾濫原の古土壌には、明瞭な土層分化がみられ,土壌生物の糞であるペレットを豊富に含み,土層分化に伴って形成される集積粘土層がよく発達しているものも認められる.このような結果は,本研究地域が排水性の高い地形条件の下で,温暖かつ降水量の多い気候下にあったことを示唆する.
一方,本研究地域の椚平層は主に蛇行河川のチャネル堆積物・氾濫原堆積物・後背湿地堆積物から構成される.椚平層は石城層と比較して細粒堆積物の層厚が厚く,石炭層を多く挟む.本層では,チャネル堆積物・氾濫原堆積物・後背湿地堆積物において古土壌を認めた.本層の古土壌は石城層の古土壌よりも強く土壌化する傾向を示し,赤褐色の特徴的なB層を伴う明瞭な土層分化,集積粘土,豊富な根化石に特徴づけられる.赤褐色の古土壌層はHurst (1977)が示す加水酸化鉄による酸化的な土壌環境を示唆する.さらに,後背湿地堆積物では,根化石を産する古土壌が発達するが,青灰色の土色を呈し,根化石は鉄酸化鉱物の被膜によって覆われる.このことは,初生的には高温の気候下において,排水性の高い地形環境のもとで土壌化が進行し,その後地下水位の上昇に伴って地下水グライ化を被ったことを示す.
議論: 石城層と椚平層での古土壌構成の違いは,降水量や気温,季節性といった当時の気候条件の違いや堆積システムの違いを反映している可能性がある.古土壌の検討では,古第三紀始新世後期~漸新世初期では温暖湿潤な環境であったのに対し,新第三紀中新世前期では高温かつ季節性多雨を伴う気候であったと考えられる.しかし本研究の結果はごく限られた地域での局所的な排水条件あるいは堆積環境の変化による可能性があるため,今後それぞれの古環境についてより広域的な検討が必要である.
引用文献: 原山ほか, 2003, 地質雑, 42, 1-14. 半沢正四郎, 1954, 東北地方, 日本地方地質誌, 344p. Hurst, V. J., 1977, Geol. Soc. Am. Bull., 88, 174–176. 久保ほか, 1994, 地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅), 地質調査所, 104p. 久保ほか, 2002, 地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅), 産業技術総合研究所地質調査総合センター, 136p. 須藤ほか, 2005, 地質調査研究報告, 56, 375-409.須貝ほか, 1957, 日本炭田図I, 地質調査所, 143p. 菅沼ほか, 2003, 第四紀研究, 42, 321-334.
地質概説: 古第三系始新統–漸新統では白水層群石城層(須貝ほか,1957),新第三系中新統では湯長谷層群椚平層(半沢,1954)を研究対象とした.石城層は脊椎動物化石の記録や,花粉化石及び貝類化石群集の変化から,古第三紀後期始新世から前期漸新世に堆積したとされる(須藤ほか,2005).一方,椚平層は20.8±1.2 Ma及び17.4±1.0 MaのFT年代が報告されており,下部中新統とされる (久保ほか, 1994, 2002).
堆積相と古土壌構成: 常磐地域での堆積相解析の結果, 本研究地域の石城層は主に礫質河川堆積物と蛇行河川の氾濫原堆積物から構成される. 本層では, 礫質河川のマイナーチャネル堆積物, 蛇行河川の氾濫原堆積物および後背湿地堆積物において古土壌を認めた. 本層の古土壌のほとんどは明瞭な土層分化を伴わない未成熟なものである.しかし,氾濫原の古土壌には、明瞭な土層分化がみられ,土壌生物の糞であるペレットを豊富に含み,土層分化に伴って形成される集積粘土層がよく発達しているものも認められる.このような結果は,本研究地域が排水性の高い地形条件の下で,温暖かつ降水量の多い気候下にあったことを示唆する.
一方,本研究地域の椚平層は主に蛇行河川のチャネル堆積物・氾濫原堆積物・後背湿地堆積物から構成される.椚平層は石城層と比較して細粒堆積物の層厚が厚く,石炭層を多く挟む.本層では,チャネル堆積物・氾濫原堆積物・後背湿地堆積物において古土壌を認めた.本層の古土壌は石城層の古土壌よりも強く土壌化する傾向を示し,赤褐色の特徴的なB層を伴う明瞭な土層分化,集積粘土,豊富な根化石に特徴づけられる.赤褐色の古土壌層はHurst (1977)が示す加水酸化鉄による酸化的な土壌環境を示唆する.さらに,後背湿地堆積物では,根化石を産する古土壌が発達するが,青灰色の土色を呈し,根化石は鉄酸化鉱物の被膜によって覆われる.このことは,初生的には高温の気候下において,排水性の高い地形環境のもとで土壌化が進行し,その後地下水位の上昇に伴って地下水グライ化を被ったことを示す.
議論: 石城層と椚平層での古土壌構成の違いは,降水量や気温,季節性といった当時の気候条件の違いや堆積システムの違いを反映している可能性がある.古土壌の検討では,古第三紀始新世後期~漸新世初期では温暖湿潤な環境であったのに対し,新第三紀中新世前期では高温かつ季節性多雨を伴う気候であったと考えられる.しかし本研究の結果はごく限られた地域での局所的な排水条件あるいは堆積環境の変化による可能性があるため,今後それぞれの古環境についてより広域的な検討が必要である.
引用文献: 原山ほか, 2003, 地質雑, 42, 1-14. 半沢正四郎, 1954, 東北地方, 日本地方地質誌, 344p. Hurst, V. J., 1977, Geol. Soc. Am. Bull., 88, 174–176. 久保ほか, 1994, 地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅), 地質調査所, 104p. 久保ほか, 2002, 地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅), 産業技術総合研究所地質調査総合センター, 136p. 須藤ほか, 2005, 地質調査研究報告, 56, 375-409.須貝ほか, 1957, 日本炭田図I, 地質調査所, 143p. 菅沼ほか, 2003, 第四紀研究, 42, 321-334.