130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology【EDI】

[2poster26-52] T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Mon. Sep 18, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T6_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T6-P-22] The restoration of sedimentary environment of mudstone sequences in Goto Group, Nagasaki Prefecture, Japan

*Hiroaki Takahashi1, Shoichi Kiyokawa1, Masaru Yasunaga2, Yuta Ikebata3, Minoru Ikehara4, Naoto Takahata5 (1. Kyushu University, 2. TOKYO SOIL RESEARCH CO.,Ltd., 3. DIA CONSULTANTS CO., Ltd., 4. Kochi University, 5. The University of Tokyo)

Keywords:Late-Middle Miocene, Goto Group

1.はじめに
五島列島は日本列島の最西端に位置しており,日本海拡大時に関連する下部-中部中新世の五島層群からなる.五島層群は22-15Ma頃に堆積しており,層厚が2000-3000mあり,下部ユニットが火山砕屑岩,中部ユニットが小規模河川・湖堆積物,そして上部ユニットが厚い河川堆積物からなる(Kiyokawa et al., 2022).五島層群において,当時の層序別の表層環境状況を明らかにするために,炭素物質が入った泥岩に着目し,詳細な露頭における堆積層解析や新鮮な泥岩の顕微鏡観察を行った.また,黒い炭素質物質の起源状態,硫酸還元菌などの寄与を調べるために,有機炭素濃度(TOC)分析及び炭素安定同位体比(δ13Corg),全硫黄量(TS),硫黄安定同位体比(δ34S)測定を行った.
2.手法
出来るだけ炭素物質の入った泥岩層に着目し,ルートマップ作成/柱状図作成/ファシス解析によりどのような堆積場かを認定し,五島層群における下部から上部にかけての泥岩層の変化を観察した.次に採取した泥岩から薄片を作製し,構成鉱物や黒色炭化物の特徴を光学・電子顕微鏡で観察した.さらに採取した泥岩試料の乾燥・粉砕後,6NHClを用いて炭酸塩を除去したバルク試料80個のTOC及びδ13Corgを高知コアセンターにて元素分析装置FlashEA1112(Thermo Electron Corporation製)を用いて測定した.最後にバルク試料30個のTS,δ34Sを東京大学大気海洋研究所にて安定同位体比質量分析装置(Isoprime 100)を用いて測定した.
3.地層の特徴と炭素/硫黄分析結果
・中部ユニット上部(戸楽) リップルや地域的に斜交層理を伴う砂岩主体の砂岩泥岩互層からなる.堆積環境は蛇行河川の氾濫原と考えられる.鏡下観察ではほとんど石英粒子が入らない粘土であり,10-40μmの黒色紐状有機物が確認された.全5試料測定し,TOCは0.03~0.19 %,δ13Corgは-25.4~-23.9‰であった. 2試料のみTSは0.13及び0.36%であり,δ34Sは0.3と5.6‰であった.
・上部ユニット下部(登屋ノ首) イプシロン型の斜交層理を伴う厚さ10mを超える砂岩主体の砂岩泥岩互層からなる.砂岩中には平行葉理に発達した,厚さ数cmの木炭を挟む.堆積環境は巨大河川周辺部に広がった氾濫原と考えられる.鏡下観察ではシルトサイズの石英や植物片を含む.全7試料測定し, TOCは0.32~0.62 %,δ13Corgは-32.8~-25.0‰,2試料のTSは0.10%であった.また木炭のTOCは5.80%,δ13Corgは-25.4%であった. 特異的に泥岩試料中には大きさ20μmの白色楕円形の殻を持つ炭酸塩粒子があり,δ13Corgは-30‰よりも軽い.
4.生物と堆積環境
陸上植物は大気中の二酸化炭素の自由交換による光合成回路の違いによりC3植物とC4植物に分けられる(Cormie and Schwarcz, 1994).低温と湿った環境を好むC3植物のδ13Cは-21~-35‰の範囲内であり,一方で比較的温暖で乾燥した環境を好むC4植物のδ13Cは-6‰~-19‰と高い.五島層群の泥岩中の炭素安定同位体比は-32.8~-23.9‰であり,C3植物を由来と考えられる.また全硫黄量は29試料で0.3%以下を示しており,淡水性を示す領域を示す.本地域の泥岩は海水の影響を受けない淡水での堆積環境を示し,五島層群が河川や湖起源とする堆積相解析の結果を支持する.
5.まとめ
五島層群の泥岩層の平均のTOCは0.2%,δ13Corgは-25.4‰を示す.これは単体で測定した木炭の値と一致しており,当時その地域に茂っていた木々やイネなどのC3植物が起源と考えられる.これらの湿地帯では,海の影響がなく,硫酸還元菌が繁栄するようなヘドロ状態ではない比較的酸化的な湿地帯であったと推察する.
引用文献
Cormie, A. B. and Schwarcz, H. P., 1994: Stable isotopes of nitrogen and carbon of North American White-tailed deer and implications for paleodietary and other food studies. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 107, 227-241.
Kiyokawa, S. et al, 2022, Stratigraphic reconstruction of the lower-middle Miocene Goto Group, Nagasaki Prefecture. Japan, Islands arc, p.1-39. https://doi.org/10.1111/iar.12456