130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology【EDI】

[2poster26-52] T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Mon. Sep 18, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T6_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T6-P-27] Reconstruction of depositional systems using organic chemical analysis in the Eastern Limb of Hachikoku Anticline, Niigata Prefecture, central Japan

*【ECS】Kai Asano1, Natsumi Kasai1,2, Koichi Hoyanagi1 (1. Shinshu Univ., 2. Satoen Co., Ltd.)

1.はじめに
 北部フォッサマグナ新潟堆積盆地は日本海拡大に伴って形成されたリフト堆積盆地であり,厚い新第三系-第四系によって埋積されている.研究地域は北部フォッサマグナの一部であり,新潟県長岡市南部の渋海川西岸の丘陵地帯に位置する.この地域周辺には鮮新世から続く構造運動によって多くの褶曲構造が形成されており,本研究地域は八石背斜・渋海川向斜・山屋背斜・不動沢向斜の影響を受けている.研究対象としたのは更新統の魚沼層群であり,非海成層と海成層の繰り返しで形成さされており,堆積相解析に化学分析を加えて,堆積環境の変遷をより詳細に考察した.
2.研究手法
 八石背斜東翼の東西3km,南北15kmの範囲に分布する魚沼層群について,東西方向の19ルートの野外調査によって1/2500のルートマップを作成し,堆積相の記載を行った.なお,一部ルートでは1/1000で堆積相を記載した.これらの結果から堆積相分布図を作成し,堆積相解析を行い堆積システムを復元した.さらに,調査地域北部の奔走川と南部の芝ノ又川で泥岩試料を厚さで約10m間隔になるように採取し,全有機炭素量(TOC),全窒素量(TN),有機物の安定炭素同位体比(δ13C)分析を行った.これらの結果を総合して,堆積システムを考察した.
3.堆積相と堆積環境
 野外調査による岩相の組み合わせと堆積構造から,礫質主要河川道,氾濫原,分流河川河道,河口洲,干潟,前浜,上部外浜,下部外浜,内側陸棚,外側陸棚,海進期外浜の11の堆積相が見いだされた.さらに,調査地域南部の芝ノ又川では,下部魚沼層以下にのみ外浜以深の堆積環境を示す堆積相が見出されたが,北部の奔走川では中部魚沼層にも陸側環境下で形成されたと解釈される堆積物が存在する.
4.堆積システムと化学分析
 前述した堆積相の組み合わせから,本研究地域では,河川システムとエスチュアリーシステム,海岸平野システムの3つの堆積システムを設定した.河川システムは,下部魚沼層から上部魚沼層にかけて,チャネルの深さに相当する厚さ数mの粗粒な堆積物と,氾濫原に対応する厚い泥質堆積物とから構成される.エスチュアリーシステムは,下部魚沼層,また中部魚沼層から上部魚沼層の一部にかけて見られ,生物擾乱を強く受けた砂岩層から構成される.河川性の堆積物を覆って,砂質干潟の堆積物が見られることから,河川システムが海進に伴ってエスチュアリーシステムに変化したと考えられる.またその上位に河川システムが発達することから,海進によって形成されたエスチュアリーが,その後の海退によって河川成堆積物で埋積されたと考えられる.海岸平野システムは南部では下部魚沼層のみに,北部では下部魚沼層と中部魚沼層に見られ,漸移的にエスチュアリーシステムに移り変わる.これは研究地域の北側に隣接する,保柳ほか(2000)の堆積システム変遷と一致する.また,本研究地域の北部と南部を比較すると,南部の方がより河川の影響を受けている.このことから,本研究地域は南部から海洋が河川の影響を受けて埋積されたと考えられる.
 化学分析のTOC値とC/Nは,上位に向かうにつれ値が大きくなる.これは上位へ向かうにつれ,陸源有機物を含む堆積物が増加することを示す.TOC値が3%を超すような値の堆積物は,河川の影響を非常に強く受けていると考えられ,礫岩に伴う亜炭層が見られる陸上環境の特徴を持つ地層中に見られる.また,上部にもC/Nから海洋の影響を受けていると考えられる部分がある.岩相でも生物擾乱や生痕化石などエスチュアリーの環境であったこと推測でき, C/Nの結果と一致する.δ13C値は,下位から上位へ向かうにつれて,値が小さくなる傾向を示す.これは上位へ向かうにつれて陸源性の有機物が増加したと考えることができる.また,分析値のほとんどの値が-25‰より低いのは,魚沼層群堆積期を通して陸源性有機物の寄与が大きかったと考えられる.δ13C値がやや高い値を示している部分でのC/Nの増加は,海洋有機物の供給が増加したと捉えられるため,エスチュアリー環境を示す堆積相とも一致する.
5.結論
 研究地域の魚沼層群は,一部海岸平野システムを挟在しながら,主に河川システムとエスチュアリーシステムの繰り返しで形成される.また,上位へ向かうにつれ河川システムの影響が強くなっていくことが考察される.さらに南部には河川環境が比較的多く見出され,北部には海洋環境が見出される.堆積システムの累重と化学分析の結果は,海進,海退の繰り返しと堆積盆地埋積に起因すると考えられる.
6.文献
保柳康一他,2000,地球科学,54,393-404.