[T12-P-1] Carbon isotope analysis of individual graphite grains in the Early Archean sedimentary rocks from Labrador, Canada using NanoSIMS
Keywords:Early Archean, graphite, Carbon isotope ratio
太古代(25億年前以前)の岩石から生命の痕跡を検出することは、地球の初期生命史を解明するための最も直接的な方法である。従来、生命活動を認定する指標として堆積岩に保存される炭質物の安定炭素同位体比が用いられてきた(例えばSchidlowski, 2001)。
地球上で最古の表成岩とされる約39.5億年前のカナダ・ラブラドル地域から採取された堆積岩から、生命由来と考えられる低い炭素同位体比を持つ炭質物が発見され、約39.5億年前に生命活動が行われていたことが示唆された(Tashiro et al., 2017)。しかし、炭素同位体比は主に全岩から得られたものであり、個々の炭質物については2試料からしか得られていない。そして、その2試料のうち一方の試料は個々の炭質物の炭素同位体比が全岩のそれと調和的であり、もう一方は一致しなかった(Tashiro et al., 2017)。本研究では、カナダ・ラブラドル地域の堆積岩に対し、薄片内でのグラファイトの空間分布やラマンスペクトルを考慮し、初生的なグラファイトの炭素同位体比を得ることを目的とする。
Tashiro et al. (2017)において全岩の炭素同位体比が報告された堆積岩29試料から、光学顕微鏡観察および顕微ラマン分光分析の結果を基に、泥質岩5試料、礫岩3試料、炭酸塩岩2試料、炭酸塩岩中のチャートノジュール2試料を選定した。ラマンスペクトルから初生的な炭質物(グラファイト)と判断した粒子を鉱物に包有されるもの・鉱物粒間に存在するものに分類し、二次イオン質量分析計(NanoSIMS)でスポット分析を行った。
その結果、全体として炭素同位体比は-30‰~7‰であった。炭素同位体比は、泥質岩、礫岩、チャートノジュールで鉱物に包有されるか否かに関わらず不均質であった。その一方、炭酸塩岩では比較的均質であった。また、大局的に見ると、岩相ごとに、泥質岩 < 礫岩 = 炭酸塩岩 = チャートノジュールの大小傾向があった。先行研究(Tashiro et al., 2017)で報告された全岩の炭素同位体比に比べ、礫岩では重い値を示す傾向があり、泥質岩、炭酸塩岩とチャートノジュールでは概ね調和的だが一部で重い値が観察された。
以上の結果から、ラブラドル地域における堆積岩中の個々のグラファイトの炭素同位体比は大きなバリエーションを持つことがわかった。本地域の炭酸塩の炭素同位体比は-3.8‰~-2.6‰と報告されている(Tashiro et al., 2017)ことから、炭酸塩とグラファイト間の炭素同位体比の差が20‰を超える粒が存在する。これらのことから、本地域のグラファイトの一部は無機的に生成された可能性があるが、一部は生物起源であると考えられる。
引用文献 Schidlowski (2001) Carbon isotopes as biogeochemical recorders of life over 3.8 Ga of Earth history: evolution of a concept. Precambrian Research 106, 117–134. Tashiro et al. (2017) Early trace of life from 3.95 Ga sedimentary rocks in Labrador, Canada. Nature 549, 516–518.
地球上で最古の表成岩とされる約39.5億年前のカナダ・ラブラドル地域から採取された堆積岩から、生命由来と考えられる低い炭素同位体比を持つ炭質物が発見され、約39.5億年前に生命活動が行われていたことが示唆された(Tashiro et al., 2017)。しかし、炭素同位体比は主に全岩から得られたものであり、個々の炭質物については2試料からしか得られていない。そして、その2試料のうち一方の試料は個々の炭質物の炭素同位体比が全岩のそれと調和的であり、もう一方は一致しなかった(Tashiro et al., 2017)。本研究では、カナダ・ラブラドル地域の堆積岩に対し、薄片内でのグラファイトの空間分布やラマンスペクトルを考慮し、初生的なグラファイトの炭素同位体比を得ることを目的とする。
Tashiro et al. (2017)において全岩の炭素同位体比が報告された堆積岩29試料から、光学顕微鏡観察および顕微ラマン分光分析の結果を基に、泥質岩5試料、礫岩3試料、炭酸塩岩2試料、炭酸塩岩中のチャートノジュール2試料を選定した。ラマンスペクトルから初生的な炭質物(グラファイト)と判断した粒子を鉱物に包有されるもの・鉱物粒間に存在するものに分類し、二次イオン質量分析計(NanoSIMS)でスポット分析を行った。
その結果、全体として炭素同位体比は-30‰~7‰であった。炭素同位体比は、泥質岩、礫岩、チャートノジュールで鉱物に包有されるか否かに関わらず不均質であった。その一方、炭酸塩岩では比較的均質であった。また、大局的に見ると、岩相ごとに、泥質岩 < 礫岩 = 炭酸塩岩 = チャートノジュールの大小傾向があった。先行研究(Tashiro et al., 2017)で報告された全岩の炭素同位体比に比べ、礫岩では重い値を示す傾向があり、泥質岩、炭酸塩岩とチャートノジュールでは概ね調和的だが一部で重い値が観察された。
以上の結果から、ラブラドル地域における堆積岩中の個々のグラファイトの炭素同位体比は大きなバリエーションを持つことがわかった。本地域の炭酸塩の炭素同位体比は-3.8‰~-2.6‰と報告されている(Tashiro et al., 2017)ことから、炭酸塩とグラファイト間の炭素同位体比の差が20‰を超える粒が存在する。これらのことから、本地域のグラファイトの一部は無機的に生成された可能性があるが、一部は生物起源であると考えられる。
引用文献 Schidlowski (2001) Carbon isotopes as biogeochemical recorders of life over 3.8 Ga of Earth history: evolution of a concept. Precambrian Research 106, 117–134. Tashiro et al. (2017) Early trace of life from 3.95 Ga sedimentary rocks in Labrador, Canada. Nature 549, 516–518.