[T12-P-2] (entry) Reconstruction of hydrothermal oceanic chert and banded iron formation in Archean by mineral identification in Pilbara terrane, Western Australia
Keywords:Archean, BIF, Berthierine
1. 緒言
太古代BIFの形成作用について,光合成による酸化作用や異化鉄還元作用(DIR)などの鉄還元菌による2価鉄の沈殿作用など議論されている (eg. Bekker et al. 2012) .しかし近年,太古代BIFの鉄沈殿物の形成は,生物活動を伴わなず,初生鉱物としてグリーナライト(Greenalite:Fe2+2 Si2 O5 (OH)4)として沈殿した報告がなされてきた (Rassmussen et al. 2013, Rasmussen et al. 2023) .本研究では,32~31億年前において世界で最も保存状態が良いデキソンアイランド層(DX層)・クリバービル層(CL層)中のチャート・BIF中に含まれる鉱物について, 電子顕微鏡観察および化学分析を行こない鉱物同定し,当時の海底堆積物に含まれる物質を明らかにした.
2. 層序
西オーストラリア,ピルバラ海岸グリーンストーン帯のクリバービル海岸地域では,32億年前の熱水系チャート層(DX層)から黒色頁岩からBIFに移り変わる31億年前の連続層(CL層)が存在する.本地域は低変成作用で,変形作用も比較的弱く堆積時の地層状態が記録されている(Kiyokawa et al. 2012) .特に,DX層は,下位からコマチアイト-流紋岩部層,黒色チャート部層,多色チャート部層からなり,珪化した火山岩からチャート層に移り変わる32億年前の熱水活動が復元できる(Kiyokawa et al., 2006).またCL層は,下位から黒色頁岩部層,BIF部層に区分され, 黒色頁岩層からBIF層に移り変わる31億年前の連続層が保存良く残っている.
3. 方法
DX層BC部層のデキソン島の海岸線に露出する岩石,CL3掘削コアの薄片を作成し,肉眼及び偏光顕微鏡観察を行った.化学組成分析及び微細構造観察はSEM(JEOL JSM-6500M),EPMA(JEOL JXA-8200)を用いた.また,一部の試料に対し九州大学超顕微解析研究センターのFIB-SEM(FEI Quanta 3D 200i,HITACHI MI4000L)を用いて針状結晶を含むチャート中の石英より薄膜試料を作成し,電子顕微鏡(JEOL JEM-ARM300F2)を用いて組織観察,鉱物種の同定を行った.
4. 結果
DX層についてはSEM観察により,パイライトが濃集し層として並んでいることがわかり,またバイオマット層直上の黒色チャート層よりアパタイト(直径約3 μm)の結晶が見つかった.DX層のチャート中のアパタイトは熱水環境下において生物の活動が行われていた可能性を示唆しており,地層中に残されているバイオマット化石や微生物の化石(Kiyokawa et al. 2006)とも整合性がある. CL層について層状チャート層は,1 cm以下の淡緑色の粘土質ラミナと白色のチャート質ラミナの互層になっている.XRDの結果から,構成鉱物はシデライトと石英,マグネタイトであった.偏光顕微鏡およびSEM観察により粘土質ラミナは,細粒のシデライトによって構成され,続成作用により堆積構造を失っていた.一方,チャート質ラミナは,主に直径2~10 µm石英によって構成されているが,一部自形結晶のシデライト,10~50 μm程の板状結晶の緑泥石がみられ,シリカ基質中には5 μm以下の針状結晶が観察できた. FIB-SEMで観察した針状結晶を含む試料は,石英のほか,球状で直径約2 µmの鉄酸化物,石英中や石英の粒界に数μmの針状結晶が観察でき,これらの針状結晶は14 Åの底面反射の緑泥石鉱物からなる.これらは,STEM-EDSマッピングにより化学組成は(Fe2+3.92, Al1.49, Mg0.64)Σ6.05 (Si2.43Al1.57)Σ4.00O10(OH)8であり,鉱物種はシャモサイトであった.また,薄膜試料中の石英粒の一部に1 μm以下の空隙が多数存在するものがある.この石英中に500 nm以下の針状結晶がいくつか見られた.これらの針状結晶は7 Åの底面反射の蛇紋石鉱物で,STEM-EDSマッピングより化学組成は(Fe2+1.94, Al0.73, Mg0.28)Σ2.95 (Si1.38Al0.62)Σ2.00O5(OH)4であり,鉱物種はベルチェリンであった.ハマスレーで報告されるグリーナライトと本地域で見つかったベルチェリンとは,分布やその惨状は非常によく似ている.このことはBIF形成時に,ベルチェリンも沈殿している可能性を示唆する.今後,当時の海洋に大陸由来のAlもすでに供給されていた可能性について,大陸形成作用も含めて考察する.
5.引用文献
・Kiyokawa, S., et al., 2012, Island Arc, 21, 118–147.
・Rasmussen, B.et al., 2013, Geology, 41, 435–438.
太古代BIFの形成作用について,光合成による酸化作用や異化鉄還元作用(DIR)などの鉄還元菌による2価鉄の沈殿作用など議論されている (eg. Bekker et al. 2012) .しかし近年,太古代BIFの鉄沈殿物の形成は,生物活動を伴わなず,初生鉱物としてグリーナライト(Greenalite:Fe2+2 Si2 O5 (OH)4)として沈殿した報告がなされてきた (Rassmussen et al. 2013, Rasmussen et al. 2023) .本研究では,32~31億年前において世界で最も保存状態が良いデキソンアイランド層(DX層)・クリバービル層(CL層)中のチャート・BIF中に含まれる鉱物について, 電子顕微鏡観察および化学分析を行こない鉱物同定し,当時の海底堆積物に含まれる物質を明らかにした.
2. 層序
西オーストラリア,ピルバラ海岸グリーンストーン帯のクリバービル海岸地域では,32億年前の熱水系チャート層(DX層)から黒色頁岩からBIFに移り変わる31億年前の連続層(CL層)が存在する.本地域は低変成作用で,変形作用も比較的弱く堆積時の地層状態が記録されている(Kiyokawa et al. 2012) .特に,DX層は,下位からコマチアイト-流紋岩部層,黒色チャート部層,多色チャート部層からなり,珪化した火山岩からチャート層に移り変わる32億年前の熱水活動が復元できる(Kiyokawa et al., 2006).またCL層は,下位から黒色頁岩部層,BIF部層に区分され, 黒色頁岩層からBIF層に移り変わる31億年前の連続層が保存良く残っている.
3. 方法
DX層BC部層のデキソン島の海岸線に露出する岩石,CL3掘削コアの薄片を作成し,肉眼及び偏光顕微鏡観察を行った.化学組成分析及び微細構造観察はSEM(JEOL JSM-6500M),EPMA(JEOL JXA-8200)を用いた.また,一部の試料に対し九州大学超顕微解析研究センターのFIB-SEM(FEI Quanta 3D 200i,HITACHI MI4000L)を用いて針状結晶を含むチャート中の石英より薄膜試料を作成し,電子顕微鏡(JEOL JEM-ARM300F2)を用いて組織観察,鉱物種の同定を行った.
4. 結果
DX層についてはSEM観察により,パイライトが濃集し層として並んでいることがわかり,またバイオマット層直上の黒色チャート層よりアパタイト(直径約3 μm)の結晶が見つかった.DX層のチャート中のアパタイトは熱水環境下において生物の活動が行われていた可能性を示唆しており,地層中に残されているバイオマット化石や微生物の化石(Kiyokawa et al. 2006)とも整合性がある. CL層について層状チャート層は,1 cm以下の淡緑色の粘土質ラミナと白色のチャート質ラミナの互層になっている.XRDの結果から,構成鉱物はシデライトと石英,マグネタイトであった.偏光顕微鏡およびSEM観察により粘土質ラミナは,細粒のシデライトによって構成され,続成作用により堆積構造を失っていた.一方,チャート質ラミナは,主に直径2~10 µm石英によって構成されているが,一部自形結晶のシデライト,10~50 μm程の板状結晶の緑泥石がみられ,シリカ基質中には5 μm以下の針状結晶が観察できた. FIB-SEMで観察した針状結晶を含む試料は,石英のほか,球状で直径約2 µmの鉄酸化物,石英中や石英の粒界に数μmの針状結晶が観察でき,これらの針状結晶は14 Åの底面反射の緑泥石鉱物からなる.これらは,STEM-EDSマッピングにより化学組成は(Fe2+3.92, Al1.49, Mg0.64)Σ6.05 (Si2.43Al1.57)Σ4.00O10(OH)8であり,鉱物種はシャモサイトであった.また,薄膜試料中の石英粒の一部に1 μm以下の空隙が多数存在するものがある.この石英中に500 nm以下の針状結晶がいくつか見られた.これらの針状結晶は7 Åの底面反射の蛇紋石鉱物で,STEM-EDSマッピングより化学組成は(Fe2+1.94, Al0.73, Mg0.28)Σ2.95 (Si1.38Al0.62)Σ2.00O5(OH)4であり,鉱物種はベルチェリンであった.ハマスレーで報告されるグリーナライトと本地域で見つかったベルチェリンとは,分布やその惨状は非常によく似ている.このことはBIF形成時に,ベルチェリンも沈殿している可能性を示唆する.今後,当時の海洋に大陸由来のAlもすでに供給されていた可能性について,大陸形成作用も含めて考察する.
5.引用文献
・Kiyokawa, S., et al., 2012, Island Arc, 21, 118–147.
・Rasmussen, B.et al., 2013, Geology, 41, 435–438.