[T12-P-5] Reconstruction of paleoenvironmental changes based on the planktic foraminiferal assemblages in the Pleistocene Tomikawa Formation distributed in the Hokuto area, southwestern Hokkaido
Keywords:Pleistocene, Planktic foraminifera, mid-Pleistocene climate transition, Japan Sea
日本海沿岸に沿って分布する最上部新生界は,石油坑井の層序検討にともなって古くから層序の検討がおこなわれてきた.なかでも上部鮮新統から更新統の海成堆積岩類は微化石を豊富に含むことから,層序学的検討とともに堆積当時の環境復元に有用である.北海道西部には,更新統の海成堆積物が小規模に分布し(嵯峨山,2010),秋田県や青森県など本州と北海道を含めた広域的な環境変動を検討するのに役立つ.北斗市に分布する更新統富川層は化石礁が発達し,軟体動物化石や微化石が産する(金谷・須鎗,1951;根本,1997).近年,嶋田ほか(2021)による珪藻化石層序の検討により,富川層のとり得る地質年代は2.43−0.3 Maと指摘され,同層が日本海北部地域の更新統の環境変動を議論するうえで重要であることが判明した.富川層では既に,根本(2006)により有孔虫化石に基づく環境変動の議論がなされているが,本研究では,さらに試料数を増やし,珪藻化石層序に加えて,浮遊性有孔虫化石群集により古環境変動の復元をおこなった.
調査をおこなった細小股沢では,暗緑灰色塊状泥岩を主な岩相とする鮮新統茂辺地川層と,その上位を不整合で覆う基質支持礫岩から緑灰色塊状シルト岩の粒径変化に富む更新統富川層が分布する.岩相調査の結果から富川層の岩相は4つのユニット:下位からI〜IVに分けられた.ユニットⅠは中礫から巨礫サイズの亜角礫からなる淘汰の悪い基質支持礫岩,ユニットⅡは主に暗緑灰色や暗青灰色で淘汰の悪い塊状粗粒から細粒砂岩よりなり,中礫から細礫サイズの亜円礫ないし円礫からなる淘汰の悪い基質支持礫岩薄層が挟在する.ユニットⅢは炭質物や海緑石を伴う緑灰色塊状シルト岩や緑灰色塊状砂質シルト岩,ユニットⅣは炭質物を伴い生痕の発達する暗緑灰色や暗青灰色で淘汰の悪い塊状中粒ないし細粒砂岩である.これらの岩相調査に基づくと富川層の調査層序区間は,基本的に外浜以浅で堆積したが,一時的には波の営力の及ばないシルトの堆積場も出現したと推測される.
群集解析では採集した全40試料のうち17試料から6属21種の浮遊性有孔虫化石が産出した.Neogloboquadrina pachydermaが最も多産し,次いでGlobigerina bulloidesとTurborotalita quinquelobaが随伴した.そのほか,Neogloboquadrina incompta,Globigerinita glutinata,Globigerinoides ruberがわずかながら産出した.調査層序区間の下部からは熱帯~亜熱帯を指標するG. ruberや暖流関連種が産出したことから,暖流の影響下にあったことが推測されるものの,それより上位では,寒冷環境を指標するN. pachydermaが最も産出したことから,調査層序区間の最下部を除き,富川層堆積時は基本的に寒冷な環境であったことが推測される.さらに調査層序区間の中部から上部では海氷関連珪藻種群が多産し(嶋田ほか,2021),寒冷化傾向が著しく進行したと推測される.珪藻化石層序による地質年代に基づくと,寒冷環境へと移行する層準は,中期更新世気候遷移期(mid-Pleistocene climate transition; MPT)の開始期(McClymont et al., 2013)に対比されると推測される.
引用文献 金谷・須鎗, 1951, 新生代の研究, 9, 131–137; McClymont et al., 2013, Earth Sci. Rev., 123, 173–193; 根本, 1997, Oshimanography, 4, 22–27; 根本, 2006, 化石研究会会誌, 39, 12–20; 嵯峨山,2010, 日本地方地質誌, 1, 235–239; 嶋田ほか, 2021, 地球科学, 75, 217–229.
調査をおこなった細小股沢では,暗緑灰色塊状泥岩を主な岩相とする鮮新統茂辺地川層と,その上位を不整合で覆う基質支持礫岩から緑灰色塊状シルト岩の粒径変化に富む更新統富川層が分布する.岩相調査の結果から富川層の岩相は4つのユニット:下位からI〜IVに分けられた.ユニットⅠは中礫から巨礫サイズの亜角礫からなる淘汰の悪い基質支持礫岩,ユニットⅡは主に暗緑灰色や暗青灰色で淘汰の悪い塊状粗粒から細粒砂岩よりなり,中礫から細礫サイズの亜円礫ないし円礫からなる淘汰の悪い基質支持礫岩薄層が挟在する.ユニットⅢは炭質物や海緑石を伴う緑灰色塊状シルト岩や緑灰色塊状砂質シルト岩,ユニットⅣは炭質物を伴い生痕の発達する暗緑灰色や暗青灰色で淘汰の悪い塊状中粒ないし細粒砂岩である.これらの岩相調査に基づくと富川層の調査層序区間は,基本的に外浜以浅で堆積したが,一時的には波の営力の及ばないシルトの堆積場も出現したと推測される.
群集解析では採集した全40試料のうち17試料から6属21種の浮遊性有孔虫化石が産出した.Neogloboquadrina pachydermaが最も多産し,次いでGlobigerina bulloidesとTurborotalita quinquelobaが随伴した.そのほか,Neogloboquadrina incompta,Globigerinita glutinata,Globigerinoides ruberがわずかながら産出した.調査層序区間の下部からは熱帯~亜熱帯を指標するG. ruberや暖流関連種が産出したことから,暖流の影響下にあったことが推測されるものの,それより上位では,寒冷環境を指標するN. pachydermaが最も産出したことから,調査層序区間の最下部を除き,富川層堆積時は基本的に寒冷な環境であったことが推測される.さらに調査層序区間の中部から上部では海氷関連珪藻種群が多産し(嶋田ほか,2021),寒冷化傾向が著しく進行したと推測される.珪藻化石層序による地質年代に基づくと,寒冷環境へと移行する層準は,中期更新世気候遷移期(mid-Pleistocene climate transition; MPT)の開始期(McClymont et al., 2013)に対比されると推測される.
引用文献 金谷・須鎗, 1951, 新生代の研究, 9, 131–137; McClymont et al., 2013, Earth Sci. Rev., 123, 173–193; 根本, 1997, Oshimanography, 4, 22–27; 根本, 2006, 化石研究会会誌, 39, 12–20; 嵯峨山,2010, 日本地方地質誌, 1, 235–239; 嶋田ほか, 2021, 地球科学, 75, 217–229.