130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T12[Topic Session]History of earth【EDI】

[2poster53-67] T12[Topic Session]History of earth

Mon. Sep 18, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T12_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T12-P-11] Latest Pliocene to early Pleistocene paleoenvironmental changes from planktic foraminiferal assemblages in the central to northern Akita Prefecture

*Shu Ozawa1, Makoto Yamasaki1, Sota Baba2, Yuki Mukae3, Masaki Tsubakino4 (1. Akita Univ. , 2. Oyo Corporation, 3. Japan Gas Energy Corporation, 4. East Japan Railway Company)

Keywords:Late Pliocene, Early Pleistocene, Planktic foraminifera, Northern Hemisphere Glaciation

後期鮮新世は北半球高緯度域の氷床拡大とそれに伴う寒冷化が起こったとされ,汎世界的な環境変動を理解するために重要な時代である.日本海側地域で石灰質ナンノ化石対比基準面 A が追跡される(Sato and Kameo, 1996)ことから,日本海側でも様々な指標から鮮新世末から更新世始めの古環境の変遷に関する多くの研究が行われた.その結果,後期鮮新世は温暖で,前期更新世で急激な寒冷化が起きたことが明らかになった(北村・木元,2004;天野ほか,2011など).しかし寒冷化のタイミングに関しては異なった見解も得られており(Yamamoto and Kobayashi, 2016 ; 山﨑ほか,2020など),鮮新世の末で一貫した環境変動を示すわけではないことも指摘される.寒冷化の影響やその時期について統一的な見解が得られていないことから,秋田県中部から北部に分布する上部鮮新統から下部更新統について岩相調査と浮遊性有孔虫化石群集の解析を行った.
 岩相調査については,調査対象の層序区間が比較的良好に露出する秋田県中部黒川地域で説明を行う.調査層準区間下部の天徳寺層で塊状な青灰色砂質シルト岩,上位の笹岡層では下部から順に塊状な青灰色シルト質砂岩,塊状な青灰色極細粒砂岩,細粒砂岩,中粒砂岩が観察され,上方粗粒化の傾向を示す.笹岡層中部ではトラフ型斜交層理が観察され,調査層序区間は,シルトの堆積する場から上部外浜のような環境にまで浅海化したことが推測される.
 浮遊性有孔虫化石群集解析では,北から順に,北部峰浜地域は6属16種,北部柾山沢地域は5属13種,中部井川町大菅生沢地域では6属13種,中部黒川地域では6属14種がそれぞれ同定された.いずれの地域でもGlobigerina bulloides Globorotalia inflata praeinflataNeogloboquadrina incomptaTurborotalita quinquelobaが比較的多産する傾向にあるが,峰浜地域の笹岡層を除いてNeogloboquadrina pachydermaの産出は稀である.これらの特徴から,本研究で対象とする調査層序区間はいずれも米谷(1978)のGlobigerina pachyderma(dextral)/Globorotalia orientalis Zoneに対比される.これは,本研究で対象とする調査層序区間において石灰質ナンノ化石基準面A(2.75 Ma)が追跡されるという佐藤ほか(1988,2003)の結果と調和的である.G. bulloidesT. quinquelobaの相対頻度を足し合わせた,低塩分で富栄養な環境を示す指標に注目すると大菅生沢地域では2.75 Ma以降で減少傾向を示すものの,他の三地域では増加傾向を示す.また,温帯性中層水の指標とされるG. inflata s.l.は,柾山沢地域と大菅生沢地域で多産し,最大で71%に達する.同種の調査層序区間の層位分布をみると間欠的な産出で特徴づけられ,2.75 Ma前後で際立った変化は認められない.寒冷な環境を指標するN. pachydermaは,峰浜地域でのみ2.75 Ma以降に多産するが,他の3地域では,その産出は極めて少ない.以上から大菅生沢地域を除く秋田中部から北部地域では2.75 Ma以降には,北半球高緯度域での氷床拡大に伴う海水準の低下と関連して沿岸からの低塩水の影響が強くおよぶ堆積場となったことが推測される.また,調査層序区間を通して断続的な暖流の流入が示唆される.講演では,岩相変化と浮遊性有孔虫化石群集の比較も加えて,秋田県中部から北部地域の海洋環境変動について議論する.
 
引用文献 天野ほか, 2011, 地質雑, 117, 508–522; 北村・木元, 2004, 第四紀研究, 43,417–434; 米谷, 1978, 池辺展生教授記念論文集, 35–60; 佐藤ほか, 1988, 石技誌, 53, 475–491; Sato and Kameo, 1996, Proc. Ocean Drilling Program, Scientific Results, 151, 39–59; 佐藤ほか, 2003, 地質雑, 109, 280–292; Yamamoto and Kobayashi, 2016, Deep-Sea Res. II, 125–126, 177–183; 山﨑ほか, 2020, 白神研究, 14, 35–48.