130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T2[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics【EDI】

[3oral101-05] T2[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

Tue. Sep 19, 2023 8:45 AM - 10:00 AM oral room 1 (4-11, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Ryosuke Oyagi(Kokushikan Univ.)

9:15 AM - 9:30 AM

[T2-O-20] (entry) Steady-state recrystallization microstructures of wet quartz: Influence of temperature, strain rate, and confining pressure

*【ECS】Kazuma NAKAKOJI1, Ichiko SHIMIZU2 (1. The University of Tokyo, 2. Kyoto University)

Keywords:quartz, high-PT deformation experiment, dynamic recrystallization, dislocation creep

石英は地殻や沈み込みプレート境界のレオロジーを担う重要な鉱物であり、塑性流動した石英の動的再結晶組織は、結晶粒径や粒子形状、結晶方位について様々なパターンを示すことが、高圧変成帯や剪断帯におけるフィールド試料の観察から報告されている。これらの組織は温度や歪速度などの変形条件を反映したものだと考えられ、その関係を調べるために、高温高圧変形試験機を用いた室内実験において、温度や歪速度を様々に変えた研究が行われてきた。

Masuda and Fujimura (1981) (以下、M & F)は、細粒含水石英岩(メノウ)を用いて、封圧0.4GPa, 温度700℃―1000℃, 歪速度10-6 /s-10-4/sで高温高圧変形実験を行ない、低温-高歪速度条件下では、扁平な結晶粒と鋸状の結晶粒界を持つSタイプの再結晶組織、高温-低歪速度条件下では、等粒状結晶粒と直線的な結晶粒界を持つPタイプの再結晶組織が発達することを報告した。彼らはこれら2つの石英組織が、時間や歪によらない定常組織であると解釈した。一方、Hirth and Tullis (1992)(以下、H & T)は、メノウに比べより粗粒な石英岩 (quartzite) を出発物質として、封圧1.5 GPa、温度約500℃ -1200℃, 歪速度はおよそ10-7/sec-10-5/secの範囲で高温高圧変形実験を行い、主要な再結晶機構によって、3つの組織に分類した。

M & FのSタイプ-Pタイプの境界線を天然系に外挿するためには、定常組織の封圧に対する依存性を考慮する必要があるが、M & Fより高封圧で行われたH & Tでは粗粒石英岩を用いていたため再結晶が遅く、定常組織にはなっていない。また、H & Tの組織の分類基準がM & Fとは異なるため、S-P境界の封圧依存性についてはわかっていない。そこで、本研究ではM & Fと同じ出発物質であるメノウを用いて、M & Fより高圧 (封圧1.5 GPa)で、温度800℃~1000℃, 歪速度10-6/s ~ 10-4/sの条件で変形実験を行った。

実験試料には、メノウの初期組織の繊維状結晶に平行に、直径8.0 mm, 長さ8.0 mmでコアリングしたものを用いた。圧媒体にはタルクを使用し,試料を囲むスリーブには,試料に水を供給し塑性変形を促進するため, 800℃の条件ではパイロフィライト(脱水温度約500℃), 900℃以上の条件ではタルク(脱水温度約800℃)を使用した。水が試料に加わりやすいように、試料は金属ジャケットで覆わなかった。実験装置は京都大学理学部設置の熊澤型固体圧式変形試験機を使用した。熊澤型試験機では,上下のピストンに取り付けたロードセルを用いて固体圧媒体中の内部摩擦を実験中にリアルタイムに補正し、差応力を精度よく求めることができる (Shimizu and Michibayashi, 2022)(以下、S & M)。

実験後の試料薄片の偏光顕微鏡観察では、M&FのSタイプとPタイプに類似した2種類の組織が、低温-高歪速度領域と高温-低歪速度領域でそれぞれ見られた。鋭敏色検板を通した結晶方位観察により、ほとんどの実験の回収試料において、メノウの初期組織が失われていることを確認した。得られた力学データは、Fukuda and Shimizu (2017)が拡散係数を用いて半経験的に導出した石英の転位クリープ流動則と、温度・歪速度依存性及び流動応力の大きさにおいて、よい一致がみられた。

S-P境界線の封圧依存性については、M & F(封圧0.4 GPa)ではPタイプが観察されていた温度900℃-1000℃, 歪速度10-5/sの条件でSタイプが見られたことから、高封圧ほどS–P境界線が高温-低歪速度側へ移動すると考えられる。S & MによるM&FのSタイプの実験試料のEBSD解析によると、比較的大きい扁平な石英再結晶粒子のc軸方向がσ方向に集中しており、石英の底面すべりがSタイプ組織の発達に有利に働いていたことが示唆される。また、別の変形実験 (Ave’Lallemant & Carter, 1971) では、高封圧ほど石英の底面滑りが卓越するという結果が報告されている。これらの実験事実から、S–P境界線のシフトが、石英の卓越滑り系の変化に影響された可能性が考えられる。

引用文献  
Fukuda, J. and Shimizu, I. (2017) J. Geophys. Res. Solid Earth, 122, 5956–5971.
Masuda, T. and Fujimura, A. (1981) Tectonophysics, 72, 105–128.
Shimizu, I. and Michibayashi, K. (2022) Minerals, 12, 329.
Ave’Lallemant, H. and Carter, N. (1971) American J. Science, 270, 218–235.