130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T2[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics【EDI】

[3oral101-05] T2[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

Tue. Sep 19, 2023 8:45 AM - 10:00 AM oral room 1 (4-11, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Ryosuke Oyagi(Kokushikan Univ.)

9:30 AM - 9:45 AM

[T2-O-21] (entry) Experimental constraints on talc formation and slip events at slab-mantle interface by CO2-metasomatism at mantle wedge

★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★

*【ECS】Shunya OKINO1, Atsushi OKAMOTO1, Yukiko KITA2, Sando SAWA2, Jun MUTO2 (1. Graduate School of Environmental Studies, Tohoku University , 2. Department of EARTH SCIENCES, Graduate School of Science, Tohoku University)

Keywords:subduction zone, slow slip, carbonation, mantle wedge, rheology

沈み込み帯において大量の炭素が炭酸塩や炭酸塩鉱物として地球内部に持ち込まれるが、マントルウェッジにおいて、どれほどの炭素が固定されるかはよく制約されていない。一般的に、マントルウェッジの地殻とマントルの境界では、地殻からマントルへのSiの供給によってSi交代作用が起こり、滑石や角閃石が形成されると考えられている。滑石は摩擦係数が小さく、沈み込み帯のレオロジーに影響を与える可能性があり、スロースリップ現象の発生との関連性も指摘されている1。 近年、三波川帯などで、マントルウェッジ起源の蛇紋岩体において、滑石に伴う炭酸塩鉱脈の存在が報告されている2。しかし、マントルウェッジでの炭酸塩化とそれに伴う滑石形成のメカニズムについては、その再現実験が行われておらず、その具体的な過程はよくわかっていない。本研究では、マントルウェッジの条件の地殻―マントル境界を再現した高温高圧実験により滑石形成に及ぼすSiとCO2の影響を評価した。本実験はGriggs型固体圧式変形試験機を用い、500℃・1GPaにおける地殻-マントル境界を模擬した反応実験を行った。実験試料は、泥質片岩(長瀞)のコア試料を、かんらん岩(幌満)と蛇紋岩(アンチゴライト+クリソタイル、長瀞)で上下に挟み、沈み込む堆積物が無水または含水マントルと接する境界を模擬した。流体としては、純粋なH2O流体と、シュウ酸二水和物(OAD)の分解によるH2O-CO2流体の2種類を用いた。H2O-CO2流体の実験では、H2Oを4 wt%、XCO2を0.2とした。H2O流体を用いた静水圧実験では、かんらん岩と泥質片岩の境界に厚さ約10µmの滑石層が形成され、反応帯の先端から滑石で埋められた引張クラックの形成も観察された。蛇紋岩と泥質片岩の境界では、蛇紋岩の境界付近にAlに富む蛇紋石が薄い層として形成され、より内部には細い滑石脈が形成された。一方、両境界の泥質片岩内では、曹長石斑状変晶が選択的に反応して、Mg-スメクタイトによって置換されていた。H₂O-CO2流体を用いた実験では、泥質片岩と接するかんらん岩と蛇紋岩の両方において、滑石+マグネサイトの形成が確認された。蛇紋岩―泥質片岩の境界近傍では、一部、石英+マグネサイトの組み合わせも見られた。一方、泥質片岩では白雲母の縁がわずかに緑泥石に変質した。かんらん岩内では、滑石とマグネサイトが網目状の割れ目を伴って形成され、滑石はかんらん石よりも斜方輝石中に多く生成した。蛇紋岩では、マグネサイトはちょうど境界部分に優先的に生成し、内部には多量の細孔と細い滑石マグネサイト脈のネットワークが形成された。鉱物マップを用いたマスバランス計算を行った結果、蛇紋岩―泥質片岩の境界では、いずれの条件においても、地殻からマントルへのSiの移動に加えて、マントルから地殻へのMgの移動が進行することがわかった。また、その移動度はH2O-CO2流体のほうがH2O流体よりも小さかった。また、マントル岩石中の滑石の形成に着目すると、H2O流体を用いた実験で示される地殻から供給されるSiによるSi交代作用による生成量と比べて、含水・無水マントルともに、H2O-CO2流体を用いた実験で起こるCO2交代作用において、約5-30倍もの量の滑石が形成することが示された。このようなH2O-CO2流体での反応では、Si交代作用の効果は小さい。無水マントルの炭酸塩化は顕著な体積増加と著しい破壊を伴っており、含水マントルは脱水と空隙の形成が特徴として観察された。さらに、Griggs型固体圧式変形試験機を用いて同じ温度圧力条件下における石英岩-かんらん岩の変形実験を行った。試料は反応実験と同じコア試料で、片面にソーカットを施し、石英岩とかんらん岩が45°で接するようにした。流体はOADを導入したH2O-CO2流体で、XCO2は0.1とした。変形開始前に3時間静水圧下で反応させ、8.3×10-5/sの歪速度で12時間変形させた。その結果、境界には滑石とマグネサイトの厚さ約20μmの層が生成したのに対し、数μmの滑石層にのみ変形が集中した。差応力は歪がおよそ0.03のときに最大(約300MPa)となり、その後150MPaまで単調減少した。摩擦係数はおよそ0.25であり、わずかな滑石のみが変形をまかなったことにより影響が与えられたと考えられる。このような一連の結果から、CO2流体の浸透が、純粋なH2O流体と比べて、沈み込み帯のマントルウェッジの滑石ーマントル境界の強度を降下させる可能性があることを示唆しており、反応と変形のカップリングについての議論を行う予定である。

1. Tarling et al., Nat. Geosci., 2019
2. Okamoto, A. et al., Commun. Earth Environ., 2021