130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T5[Topic Session]Tectonics

[3oral106-11] T5[Topic Session]Tectonics

Tue. Sep 19, 2023 10:15 AM - 12:00 PM oral room 1 (4-11, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Toshiki HAJI, Satoshi Tonai(Kochi Univ.)

11:00 AM - 11:15 AM

[T5-O-3] (entry) Formation process and depositional age of chaotic beds in the Paleogene Muroto Formation at Muroto Peninsula, Kochi Prefecture, Japan

*【ECS】Hinako MATSUMOTO1, Satoshi TONAI2, Hidetoshi HARA3 (1. Faculty of Science and Technology Kochi University Graduate School, 2. Faculty of Science and Technology Kochi University, 3. Institute of Geology and Geoinformation, Geological Survey of Japan, AIST)

Keywords:Shimanto Belt, Muroto Formation, Paleogene, chaotic beds, Mass transport deposit

【はじめに】
 四国沖におけるフィリピン海プレートの沈み込みは前期~中期中新世に始まったとされており,それ以前のプレート収束域の様子については議論が続いている(例えば,Taira and Ogawa, 1991).この課題の解決には,その時に堆積した地層について岩相や変形の情報を集める必要がある.また,詳細な堆積年代の制約は,地質体の広域対比・比較や,同時代に生じた地質現象との関連の議論にもつながる.高知県室戸半島に露出する古第三系室戸層は,プレート収束域で堆積したとされており,乱堆積層および砕屑注入岩が多く見られることで特徴づけられる(平ほか,1980).これらの乱堆積層の多くは未固結な堆積物が海底地すべりに伴って変形してできたとされる(例えば,DiTullio and Byrne, 1990).室戸層の堆積年代は放散虫化石と浮遊性有孔虫化石より,後期始新世から漸新世に対比されている(例えば,須鎗ほか,1989).本研究では,室戸層を特徴づける乱堆積層の変形過程と堆積年代について,従来よりも詳細な情報を得ることを目的とした.そのために,本層が露出する高知県室戸半島の海岸露頭を中心に野外調査を行い,乱堆積層および砕屑注入岩の分布や内部構造について調べた.また,調査地域西部の行当岬と黒耳海岸で採取した珪長質凝灰岩2 試料と,黒耳海岸の砂岩1 試料からジルコンを抽出し,そのU–Pb年代を測定した.
【乱堆積層の内部構造】
 野外調査の結果,室戸層では複数の乱堆積層が確認され,海岸に露出する本層の約40%を占めることがわかった.個々の乱堆積層の厚さは,行当岬では1–25 mであるが,黒耳海岸で観察した大規模なものでは100 mを超える.岩相は,一部に欠如はあるものの下位より,泥から中粒砂が混在する砂質泥岩層,砂質泥岩を基質とする変形した砂岩あるいは頁岩,互層からなる偽礫を含む砂礫質泥岩層,砕屑注入岩が貫入する砂岩頁岩互層,が累重する.乱堆積層内には小規模な褶曲が数多く見られ,行当岬のものは褶曲軸面とヒンジ線の方向がまとまっている.一方で黒耳海岸の大規模な乱堆積層内の小規模褶曲群は,ヒンジ線の方向はまとまるのに対して,褶曲軸面は層理面に対してさまざまな角度で存在する.これらの乱堆積層の移動方向は,周囲の古流向とほぼ平行である.
【ジルコンU–Pb年代】
 珪長質凝灰岩は2 試料ともに約35–31 Maの顕著なピークを示すジルコン集団からなることで特徴づけられる.ピークを構成するジルコンU–Pb年代から得られた加重平均値は,行当岬で約32.5 Ma,黒耳海岸で約32.2 Maを示し,いずれも前期漸新世の最前期を示す.砂岩の1試料から得たジルコンU–Pb年代は,主に約540–54 Ma (78.3%) と約1900–1700 Ma (15.0%) の集団を示し,最も若い単一粒年代は約54.1 Maを示す.600 Maより若い年代に注目すると,主に先カンブリア時代から白亜紀のジルコンからなり,ペルム紀からジュラ紀のジルコンの割合がやや高い.
【考察】
 乱堆積層内部の褶曲構造の方向より,乱堆積層をつくった海底地すべりは陸側斜面やトラフ軸でレビー堆積物が崩れ,深海チャネル内を流れたものだと考えた.また,乱堆積層内部の岩相は,下部で砂質泥岩層や,互層のブロックをもつ砂礫質泥岩層であり,上部で砂岩頁岩互層であることより,砂岩頁岩互層を起源とするものが多いことがわかる.これは,室戸層では,乱堆積層が移動する前は砂岩頁岩互層が堆積する環境であったことを示す.
 珪長質凝灰岩のジルコンU–Pb年代は,前期漸新世の最前期を示す.この年代は,化石年代で推定されている後期始新世〜漸新世の範囲にあり,堆積年代をより制約することができた.一方,砂岩からは堆積年代を示唆するようなジルコンを見いだせなかった.四万十帯南帯において乱堆積層を含む地層は,和歌山県の後期始新統~漸新統牟婁層群や宮崎県の前期漸新統~後期漸新統の日南層群(久富ほか,1980;酒井,1988)で確認されている.これら西南日本弧のプレート収束域広域で乱堆積層は,室戸層での堆積年代の制約により,前期漸新世以降に発生した海底地すべりであった可能性がある.

参考文献 DiTullio and Byrne, 1990, Geol. Soc. Amer. Bull., 102, 1420–1438 ; 久富ほか,1980,地球科学,34, 73–91;酒井,1988,地質学雑誌,94, 733–747; 須鎗ほか,1989,徳島大学教養部紀要自然科学/徳島大学教養部編,22,33–57.;Taira and Ogawa, 1991, Episodes, 14, 205–212;平ほか,1980,四万十帯の地質学と古生物学-甲藤次郎教授還暦記念論文集,319–389.