3:30 PM - 3:45 PM
[T5-O-9] (entry) Geochronology and provenance of the Bonborigawa and Gongenyama formations in the Shimanto belt, Kanto mountains
Keywords:Shimanto belt, U–Pb dating, zircon
【はじめに】
四国や紀伊半島の四万十帯では,砕屑性ジルコンU–Pb年代分析を通じた後背地解析や堆積年代拘束の研究が進んでいる(例えば、Hara et al., 2017;Tokiwa et al., 2021).一方,関東山地の四万十帯は同様な研究事例に乏しく,特に小仏層群や相模湖層群での研究事例がない.そこで,本研究では小仏層群盆堀川層と相模湖層群権現山層で砕屑性ジルコンU–Pb年代測定を実施し,堆積年代の拘束と後背地の解析を試みた.
【地質概説】
関東山地四万十帯は,北から順に白亜系の大滝層群,小河内層群,小仏層群,及び古第三系の相模湖層群に区分される(例えば,酒井,1987;Hara and Hisada, 1998).盆堀川層では,酒井ほか(1987)が,酸性凝灰岩からAlbian 階に対比される放散虫化石を,Yagi (2000) などが,珪質・凝灰質頁岩及び頁岩から後期白亜紀Turonian~Campanian 階に対比される放散虫化石をそれぞれ報告している.権現山層は,泥岩及び頁岩から産出した放散虫化石より,暁新~始新統(酒井ほか,1987;猿田・高橋,2012)に対比される.
【手法】
盆堀川層(0401, 0304)及び権現山層(2901, 2902)より,砂岩試料をそれぞれ2試料採取し,抽出した砕屑性ジルコンのU–Pb同位体組成を名古屋大学大学院環境学研究科設置のLA-ICPMSで分析した.206Pb/238U値と207Pb/235U値の誤差楕円(2σ)がコンコーディア曲線に重なるものをコンコーダントデータとして採用した.206Pb/238U年代から最若年代及びそれと誤差範囲(±2σ)が重なる年代を最若年代クラスターとして抽出し,それらの加重平均値(YC2σ:Dickinson and Gehrels, 2009)の誤差を踏まえた最大値を堆積年代上限値(MDA)とした.試料2902では,最若年代と誤差範囲の重なるデータが存在しなかったため,2番目に若い年代及びそれと誤差範囲(±2σ)が重なる年代(n = 3)からYC2σを算出した.
【ジルコンU–Pb年代測定結果】
測定結果を添付の表に示した.
【考察】
盆堀川層のMDAは71.4 Ma(後期白亜紀Maastrichtian 期)であり,既報の化石が示す時代より若い時代に堆積した蓋然性が高い.権現山層のMDAは, 68.7 Maである.試料2901でのMDAが63.4 Maであるため,権現山層の堆積年代は古第三紀暁新世以降に及ぶ蓋然性が高く,暁新世を指示する放散虫化石が産出した事実(猿田・高橋,2012)と調和する. 関東山地では,砂岩の岩片の割合が小仏層群(42ポイント)で最も高い(酒井ほか,1987).本研究で得た盆堀川層の砕屑性ジルコンは,50 %以上が後期白亜紀以降であり,その中の約50 %が75 Ma以降であった.従って,盆堀川層の,白亜紀以降の砕屑性ジルコンの主要供給源は,西南日本内帯の湖東流紋岩類(74 Ma:Sato et al., 2016)や濃飛流紋岩類(72 Ma:星ほか,2016)などの後期白亜紀火山岩・火山砕屑岩類であった蓋然性が高い. 一方,相模湖層群では,砂岩の岩片の割合が,小仏層群と比べておよそ13ポイント減少する(酒井ほか,1987).また,本研究で得た権現山層の砕屑性ジルコン年代は,前期白亜紀にもピークが認められる分布となった.故に,相模湖層群堆積時に後背地の火成活動は相対的に沈静化し,後期白亜紀以外の岩体からの砕屑物供給も受けるようになった蓋然性が高い.
【引用文献】
Dickinson and Gehrels (2009) Earth Planet. Sci. Lett., 288, 115–125./Hara and Hisada (1998) Sci. Rep. Inst. Geosci., Univ. Tsukuba, Sec. B, 19, 43–60. /Hara et al. (2017) Isl. Arc, 26, e12218. /星ほか(2016).日本地質学会学術大会講演要旨, 81/君波ほか(1998)地質雑,104,314–326./酒井ほか(1987)五日市地域の地質 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,75 p. /猿田・高橋(2012),地質雑,118(1), 53–58./Sato et al. (2016) J. Volcanol. Geotherm. Res., 310, 89–97. /Tokiwa et al. (2021) J. Asian Earth Sci., 207, 104657./Yagi (2000) Sci. Rep., Inst. Geosci., Univ. Tsukuba, Sec. B, 21, 13–40
四国や紀伊半島の四万十帯では,砕屑性ジルコンU–Pb年代分析を通じた後背地解析や堆積年代拘束の研究が進んでいる(例えば、Hara et al., 2017;Tokiwa et al., 2021).一方,関東山地の四万十帯は同様な研究事例に乏しく,特に小仏層群や相模湖層群での研究事例がない.そこで,本研究では小仏層群盆堀川層と相模湖層群権現山層で砕屑性ジルコンU–Pb年代測定を実施し,堆積年代の拘束と後背地の解析を試みた.
【地質概説】
関東山地四万十帯は,北から順に白亜系の大滝層群,小河内層群,小仏層群,及び古第三系の相模湖層群に区分される(例えば,酒井,1987;Hara and Hisada, 1998).盆堀川層では,酒井ほか(1987)が,酸性凝灰岩からAlbian 階に対比される放散虫化石を,Yagi (2000) などが,珪質・凝灰質頁岩及び頁岩から後期白亜紀Turonian~Campanian 階に対比される放散虫化石をそれぞれ報告している.権現山層は,泥岩及び頁岩から産出した放散虫化石より,暁新~始新統(酒井ほか,1987;猿田・高橋,2012)に対比される.
【手法】
盆堀川層(0401, 0304)及び権現山層(2901, 2902)より,砂岩試料をそれぞれ2試料採取し,抽出した砕屑性ジルコンのU–Pb同位体組成を名古屋大学大学院環境学研究科設置のLA-ICPMSで分析した.206Pb/238U値と207Pb/235U値の誤差楕円(2σ)がコンコーディア曲線に重なるものをコンコーダントデータとして採用した.206Pb/238U年代から最若年代及びそれと誤差範囲(±2σ)が重なる年代を最若年代クラスターとして抽出し,それらの加重平均値(YC2σ:Dickinson and Gehrels, 2009)の誤差を踏まえた最大値を堆積年代上限値(MDA)とした.試料2902では,最若年代と誤差範囲の重なるデータが存在しなかったため,2番目に若い年代及びそれと誤差範囲(±2σ)が重なる年代(n = 3)からYC2σを算出した.
【ジルコンU–Pb年代測定結果】
測定結果を添付の表に示した.
【考察】
盆堀川層のMDAは71.4 Ma(後期白亜紀Maastrichtian 期)であり,既報の化石が示す時代より若い時代に堆積した蓋然性が高い.権現山層のMDAは, 68.7 Maである.試料2901でのMDAが63.4 Maであるため,権現山層の堆積年代は古第三紀暁新世以降に及ぶ蓋然性が高く,暁新世を指示する放散虫化石が産出した事実(猿田・高橋,2012)と調和する. 関東山地では,砂岩の岩片の割合が小仏層群(42ポイント)で最も高い(酒井ほか,1987).本研究で得た盆堀川層の砕屑性ジルコンは,50 %以上が後期白亜紀以降であり,その中の約50 %が75 Ma以降であった.従って,盆堀川層の,白亜紀以降の砕屑性ジルコンの主要供給源は,西南日本内帯の湖東流紋岩類(74 Ma:Sato et al., 2016)や濃飛流紋岩類(72 Ma:星ほか,2016)などの後期白亜紀火山岩・火山砕屑岩類であった蓋然性が高い. 一方,相模湖層群では,砂岩の岩片の割合が,小仏層群と比べておよそ13ポイント減少する(酒井ほか,1987).また,本研究で得た権現山層の砕屑性ジルコン年代は,前期白亜紀にもピークが認められる分布となった.故に,相模湖層群堆積時に後背地の火成活動は相対的に沈静化し,後期白亜紀以外の岩体からの砕屑物供給も受けるようになった蓋然性が高い.
【引用文献】
Dickinson and Gehrels (2009) Earth Planet. Sci. Lett., 288, 115–125./Hara and Hisada (1998) Sci. Rep. Inst. Geosci., Univ. Tsukuba, Sec. B, 19, 43–60. /Hara et al. (2017) Isl. Arc, 26, e12218. /星ほか(2016).日本地質学会学術大会講演要旨, 81/君波ほか(1998)地質雑,104,314–326./酒井ほか(1987)五日市地域の地質 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,75 p. /猿田・高橋(2012),地質雑,118(1), 53–58./Sato et al. (2016) J. Volcanol. Geotherm. Res., 310, 89–97. /Tokiwa et al. (2021) J. Asian Earth Sci., 207, 104657./Yagi (2000) Sci. Rep., Inst. Geosci., Univ. Tsukuba, Sec. B, 21, 13–40