10:15 AM - 10:30 AM
[T11-O-6] Metamorphic rocks with different pressure-temperature-time paths at Menipa, Sør Rondane Mountains, East Antarctica
Keywords:East Antarctica, Sør Rondane Mountains, Menipa, P-T-t paths
東南極セール・ロンダーネ山地は,ゴンドワナ超大陸形成に伴う造山活動で形成された高度変成岩類や貫入岩で構成される(Shiraishi, 1997 Antarctic Geol. Map Ser.).変成岩類は,変成履歴および砕屑性ジルコンの年代分布によって北東テレーンと南西テレーンに区分され,両者はMain Tectonic Boundaryを境界として約650-600Maに衝突したと考えられている(Osanai et al., 2013 Precambrian Res.).最近南西テレーンに位置するブラットニーパネにおいて,異なるP-T-t履歴を示す変成岩同士が接する境界が見出された(Adachi et al., in review JMPS).ここでは構造的上位の泥質片麻岩からは620-550Maが検出される一方,下位の珪長質片麻岩からは約570-550Maのみが検出され,これに両者の変成経路を組み合わせた結果,約570-550Maにも地殻衝突イベントがあった可能性が示唆されている.本発表では,ブラットニーパネの東方に位置するメーニパにおいて同様の関係性が認められるかを検証した.
メーニパには珪長質変成岩や泥質変成岩が分布し,全体として東西方向の走向と低角の傾斜を示す.本発表では,当地域において構造的上位に位置する珪線石-ザクロ石-黒雲母片麻岩(試料番号1302B)と,構造的下位のザクロ石-カミングトン閃石-黒雲母片麻岩(1902A)の解析結果を示す. 1302Bに含まれるザクロ石はPの濃度の違いで,Pが高いリム,低いマントル,やや高いコアに区分でき,コアからリムにかけてCaとMnが減少しMgが増加する組成累帯構造を示す.また,コアにはチタン鉄鉱・斜長石(An=51-65)が,マントルにはチタン磁鉄鉱・ルチル・斜長石(An=44-58)が,リムにはルチル・斜長石(An=35-39)がそれぞれ含まれる.この包有物の組み合わせや化学組成の変化は,
チタン磁鉄鉱+灰長石+石英⇒鉄ばんザクロ石+灰ばんザクロ石+ルチル (Ghent&Stout, 1984 CMP)
の反応が起きたことを示唆し,この岩石が圧力上昇を経てピーク変成条件に達したことを示唆する.ザクロ石のリムに含まれるルチルと,ザクロ石のリムおよびマトリックス中の斜長石のコアの化学組成を用いて,Zr-in-Rt温度計(Tomkins et al., 2007 JMG)とGASP圧力計(Holdaway 2001, Am. Mineral.)をそれぞれ適用すると,720-810 ℃,0.7-0.9 GPaが見積もられる.また,この岩石に含まれるジルコンの変成リムからは,618 ± 7 Ma (n=11; MSWD=1.7; Th/U: 0.05-0.00; Ybn/Gdn: 66-1.3)が得られた.ザクロ石のコアに含まれるジルコンにも変成リムが認められることから,この年代はザクロ石が成長する昇温期の時期であると考えられる.これらの変成条件・年代は,Kawakami et al.(2021, GEOSEA abstract)によって1302Bの近傍に産する変成岩類から見積もられた結果とおおむね一致する.
1902Aに含まれるカミングトン閃石は集片双晶が発達し,そのリムにホルンブレンドが薄く産している.これらの角閃石中には残晶として直方輝石と単斜輝石が認められることから,角閃石は加水反応生成物であると考えられる.一方でザクロ石には加水反応の痕跡はほとんど認められない.この岩石中のザクロ石のリム,マトリックスの斜長石・直方輝石のコアの化学組成を用いてザクロ石-直方輝石地質温度計(Ganguly et al.,2004 CMP)およびザクロ石-直方輝石-斜長石-石英地質圧力計(Eckert et al., 1991, Am. Mineral.)を適用すると,約780 ℃,0.7 GPaが見積もられた.この岩石に含まれるジルコンの変成リムの年代は566 ± 5 Ma (n=13; MSWD=1.3; (Th/U: 0.10-0.00; Ybn/Gdn: 320-4.4)を示す.ザクロ石のコアに含まれるジルコンにも変成リムが認められることから,この年代はザクロ石が成長する昇温期変成作用の時期を示していると解釈できる.
今回の結果に基づくと,メーニパの変成岩類は,構造的上位と下位で昇温期変成作用の時期が異なる可能性がある.また構造的上位および下位の変成岩が記録するそれぞれの昇温期変成作用の時期は,ブラットニーパネに分布する構造的上位および下位の岩相の年代と一致する.このことはブラットニーパネで観察された地質境界がメーニパにも延長される可能性を示唆する. ただし,1902Aの年代については,後退変成作用の時期である可能性もあるため,今後ザクロ石中の変成ジルコンの年代をin-situで分析してその意味を確認する予定である.
メーニパには珪長質変成岩や泥質変成岩が分布し,全体として東西方向の走向と低角の傾斜を示す.本発表では,当地域において構造的上位に位置する珪線石-ザクロ石-黒雲母片麻岩(試料番号1302B)と,構造的下位のザクロ石-カミングトン閃石-黒雲母片麻岩(1902A)の解析結果を示す. 1302Bに含まれるザクロ石はPの濃度の違いで,Pが高いリム,低いマントル,やや高いコアに区分でき,コアからリムにかけてCaとMnが減少しMgが増加する組成累帯構造を示す.また,コアにはチタン鉄鉱・斜長石(An=51-65)が,マントルにはチタン磁鉄鉱・ルチル・斜長石(An=44-58)が,リムにはルチル・斜長石(An=35-39)がそれぞれ含まれる.この包有物の組み合わせや化学組成の変化は,
チタン磁鉄鉱+灰長石+石英⇒鉄ばんザクロ石+灰ばんザクロ石+ルチル (Ghent&Stout, 1984 CMP)
の反応が起きたことを示唆し,この岩石が圧力上昇を経てピーク変成条件に達したことを示唆する.ザクロ石のリムに含まれるルチルと,ザクロ石のリムおよびマトリックス中の斜長石のコアの化学組成を用いて,Zr-in-Rt温度計(Tomkins et al., 2007 JMG)とGASP圧力計(Holdaway 2001, Am. Mineral.)をそれぞれ適用すると,720-810 ℃,0.7-0.9 GPaが見積もられる.また,この岩石に含まれるジルコンの変成リムからは,618 ± 7 Ma (n=11; MSWD=1.7; Th/U: 0.05-0.00; Ybn/Gdn: 66-1.3)が得られた.ザクロ石のコアに含まれるジルコンにも変成リムが認められることから,この年代はザクロ石が成長する昇温期の時期であると考えられる.これらの変成条件・年代は,Kawakami et al.(2021, GEOSEA abstract)によって1302Bの近傍に産する変成岩類から見積もられた結果とおおむね一致する.
1902Aに含まれるカミングトン閃石は集片双晶が発達し,そのリムにホルンブレンドが薄く産している.これらの角閃石中には残晶として直方輝石と単斜輝石が認められることから,角閃石は加水反応生成物であると考えられる.一方でザクロ石には加水反応の痕跡はほとんど認められない.この岩石中のザクロ石のリム,マトリックスの斜長石・直方輝石のコアの化学組成を用いてザクロ石-直方輝石地質温度計(Ganguly et al.,2004 CMP)およびザクロ石-直方輝石-斜長石-石英地質圧力計(Eckert et al., 1991, Am. Mineral.)を適用すると,約780 ℃,0.7 GPaが見積もられた.この岩石に含まれるジルコンの変成リムの年代は566 ± 5 Ma (n=13; MSWD=1.3; (Th/U: 0.10-0.00; Ybn/Gdn: 320-4.4)を示す.ザクロ石のコアに含まれるジルコンにも変成リムが認められることから,この年代はザクロ石が成長する昇温期変成作用の時期を示していると解釈できる.
今回の結果に基づくと,メーニパの変成岩類は,構造的上位と下位で昇温期変成作用の時期が異なる可能性がある.また構造的上位および下位の変成岩が記録するそれぞれの昇温期変成作用の時期は,ブラットニーパネに分布する構造的上位および下位の岩相の年代と一致する.このことはブラットニーパネで観察された地質境界がメーニパにも延長される可能性を示唆する. ただし,1902Aの年代については,後退変成作用の時期である可能性もあるため,今後ザクロ石中の変成ジルコンの年代をin-situで分析してその意味を確認する予定である.