10:45 AM - 11:00 AM
[T9-O-8] Homogenization experiments and composition analysis of met inclusions in zircon from granitoid: example of application as geobarometry
Keywords:zircon, melt inclusion, granitoid, geobarometry
<はじめに> メルト包有物はマグマ溜まり中で成長する鉱物中に周囲のメルトが取り込まれたものであり、メルトの化学組成や含水量といった情報を保持している。ジルコンに含まれるメルト包有物は、物理化学的に安定な鉱物であるジルコンがメルト包有物の変質を妨げるため、メルトの組成情報を復元するために適した研究対象である(Thomas et al. 2003, Rev Mineral Geochem)。一方で、深成岩中のジルコンに含まれるメルト包有物はマグマ冷却中の結晶化により不均質な多相包有物となっているため、分析の前処理として高温高圧発生装置を用いた封圧下での均質化実験がおこなわれている(たとえばGudelius et al., 2020, Geochem Cosmochim Acta)。本発表では、花崗岩に含まれるジルコン中のメルト包有物について、ピストンシリンダー型高温高圧発生装置を用いた均質化実験と、SEM-EDSによる主要元素組成分析から得られたメルト包有物組成の検討結果(Taniwaki et al., 2023, Lithos; Kawashima et al., in preparation)について報告する。
<実験試料> 研究に使用した試料は、領家帯花崗岩類の蒲野花崗閃緑岩から採取した黒雲母花崗岩と、外帯花崗岩類の御内岩体から採取した黒雲母花崗岩である。野外産状の特徴として、蒲野花崗閃緑岩は、母岩の変成岩の構造に調和的に貫入し、またその境界近傍では変成岩がミグマタイト様を呈するのに対し、御内岩体は母岩に対して非調和に貫入しており、母岩との境界近傍にしばしば発泡痕や球状の石英―電気石連晶がみられる。蒲野花崗閃緑岩試料は、主成分鉱物として石英、斜長石、黒雲母、少量のカリ長石を、副成分鉱物としてジルコン、燐灰石、不透明鉱物を含む。ジルコンは自形を呈し、主成分鉱物の粒間やリム部にみとめられる。御内岩体試料は、主成分鉱物として石英、斜長石、カリ長石、黒雲母を、副成分鉱物としてジルコン、燐灰石、スフェーン、電気石、不透明鉱物を含む。ジルコンは自形を呈し、主成分鉱物の粒間にみとめられる。分離したジルコンをSEM-EDSで観察したところ、両者の試料とも、ジルコン中に微細な石英、斜長石、カリ長石および空隙からなる多相包有物が認められた。
<実験方法> 分離・抽出したジルコン試料をNaClとともに白金カプセルに封入し、ピストン-シリンダー型高温高圧発生装置を用いて実験を行った。実験の設定圧力は0.3 GPa、温度条件と実験時間は、蒲野花崗閃緑岩試料では900℃で4.5時間、御内岩体試料では1000℃で1時間保持した後、840℃まで降温させ24 時間保持し、その後それぞれ室温まで急冷させた。回収したジルコン試料をエポキシ樹脂でマウントし、鏡面研磨を行い、SEM-EDSでの観察・組成分析とFE-SEMでのカソードルミネッセンス像観察を行った。
<結果と考察>反射電子像観察および元素組成マッピングから、実験によりジルコン中のメルト包有物が均質化したことが確認できる。一方で、カソードルミネッセンス像観察ではジルコンに累帯構造が認められ、実験後もジルコンの内部構造は保存されているものと考えられる。ジルコン中のメルト包有物のSiO2含有量は蒲野花崗閃緑岩試料で76.3〜79.4 wt %、御内岩体試料で74.6〜79.9 wt %であり、両者ともジルコンを分離した試料の全岩SiO2含有量(蒲野花崗閃緑岩試料:72.4 wt %、御内岩体試料:71.8 wt %)より高く、ハーカー図上では全岩化学組成トレンドのSiO2含有量の高いところに位置する。したがって、ジルコンは結晶成長時に鉱物粒間の分化したメルトを包有物として取り込んだものと考えられるが、このことは偏光顕微鏡観察からジルコンが主成分鉱物の粒間やリム部に認められることと調和的である。得られたメルト組成について、Rhyolite-MELTS地質圧力計を用いた圧力検討を行った。その結果、蒲野花崗閃緑岩試料からは、293~158 MPa(N = 7)の圧力が、御内岩体試料のジルコンのリム部のメルト包有物組成から114〜80 MPa(N = 4)の圧力が得られ、それぞれジルコンが結晶成長して周囲のメルトを取り込んだときの圧力を示すものと解釈できる。また、蒲野花崗閃緑岩と比較して御内岩体は有意に低い圧力が得られたが、このことは御内岩体については野外産状から地殻浅所への貫入が示唆されること(発泡痕が認められるなど)と調和的である。このように、ジルコン中のメルト包有物の均質化実験と主要元素組成分析により、花崗岩質マグマ固結過程の圧力情報を得ることができるものと考えられる。
<実験試料> 研究に使用した試料は、領家帯花崗岩類の蒲野花崗閃緑岩から採取した黒雲母花崗岩と、外帯花崗岩類の御内岩体から採取した黒雲母花崗岩である。野外産状の特徴として、蒲野花崗閃緑岩は、母岩の変成岩の構造に調和的に貫入し、またその境界近傍では変成岩がミグマタイト様を呈するのに対し、御内岩体は母岩に対して非調和に貫入しており、母岩との境界近傍にしばしば発泡痕や球状の石英―電気石連晶がみられる。蒲野花崗閃緑岩試料は、主成分鉱物として石英、斜長石、黒雲母、少量のカリ長石を、副成分鉱物としてジルコン、燐灰石、不透明鉱物を含む。ジルコンは自形を呈し、主成分鉱物の粒間やリム部にみとめられる。御内岩体試料は、主成分鉱物として石英、斜長石、カリ長石、黒雲母を、副成分鉱物としてジルコン、燐灰石、スフェーン、電気石、不透明鉱物を含む。ジルコンは自形を呈し、主成分鉱物の粒間にみとめられる。分離したジルコンをSEM-EDSで観察したところ、両者の試料とも、ジルコン中に微細な石英、斜長石、カリ長石および空隙からなる多相包有物が認められた。
<実験方法> 分離・抽出したジルコン試料をNaClとともに白金カプセルに封入し、ピストン-シリンダー型高温高圧発生装置を用いて実験を行った。実験の設定圧力は0.3 GPa、温度条件と実験時間は、蒲野花崗閃緑岩試料では900℃で4.5時間、御内岩体試料では1000℃で1時間保持した後、840℃まで降温させ24 時間保持し、その後それぞれ室温まで急冷させた。回収したジルコン試料をエポキシ樹脂でマウントし、鏡面研磨を行い、SEM-EDSでの観察・組成分析とFE-SEMでのカソードルミネッセンス像観察を行った。
<結果と考察>反射電子像観察および元素組成マッピングから、実験によりジルコン中のメルト包有物が均質化したことが確認できる。一方で、カソードルミネッセンス像観察ではジルコンに累帯構造が認められ、実験後もジルコンの内部構造は保存されているものと考えられる。ジルコン中のメルト包有物のSiO2含有量は蒲野花崗閃緑岩試料で76.3〜79.4 wt %、御内岩体試料で74.6〜79.9 wt %であり、両者ともジルコンを分離した試料の全岩SiO2含有量(蒲野花崗閃緑岩試料:72.4 wt %、御内岩体試料:71.8 wt %)より高く、ハーカー図上では全岩化学組成トレンドのSiO2含有量の高いところに位置する。したがって、ジルコンは結晶成長時に鉱物粒間の分化したメルトを包有物として取り込んだものと考えられるが、このことは偏光顕微鏡観察からジルコンが主成分鉱物の粒間やリム部に認められることと調和的である。得られたメルト組成について、Rhyolite-MELTS地質圧力計を用いた圧力検討を行った。その結果、蒲野花崗閃緑岩試料からは、293~158 MPa(N = 7)の圧力が、御内岩体試料のジルコンのリム部のメルト包有物組成から114〜80 MPa(N = 4)の圧力が得られ、それぞれジルコンが結晶成長して周囲のメルトを取り込んだときの圧力を示すものと解釈できる。また、蒲野花崗閃緑岩と比較して御内岩体は有意に低い圧力が得られたが、このことは御内岩体については野外産状から地殻浅所への貫入が示唆されること(発泡痕が認められるなど)と調和的である。このように、ジルコン中のメルト包有物の均質化実験と主要元素組成分析により、花崗岩質マグマ固結過程の圧力情報を得ることができるものと考えられる。