130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T15[Topic Session]Regional geology and stratigraphy: review and prospect

[3oral701-11] T15[Topic Session]Regional geology and stratigraphy: review and prospect

Tue. Sep 19, 2023 9:00 AM - 12:00 PM oral-07 (38-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Hajime Naruse, Akihide Kikukawa, Yasufumi Satoguchi

9:30 AM - 9:45 AM

[T15-O-9] Morphological features of dolines around the Mt. Wakatakeyama, Akiyoshidai Plateau, western Japan: an examination using digital terrain model data

*Takafumi SONEHARA1 (1. Hiruzen Institute for Geology and Chronology Co., Ltd.)

Keywords:Akiyoshidai Plateau, doline, digital terrain model, GIS, image analysis

はじめに
 日本最大のカルスト台地である秋吉台(東西15 km,南北8 km)には,多数の溶食ドリーネが分布している.秋吉台のドリーネについては,室 (1975)による10個のドリーネに対するCvijić式形状分類やMatsushi et al. (2010)による5個の地形断面が報告されているが,ドリーネは一般的地形図で示される縮尺よりも小規模なものが多いため,定量的調査は少ない状況にある.しかし,近年の技術進歩により,UAV写真測量等で詳細な地形情報が容易に得られるようになった.この発表では,秋吉台の地形地質に係る現況調査(美祢市教育委員会)において得られた数値地形モデルデータを用いて,曽根原 (2022)および曽根原 (2023, 投稿中)が検討したドリーネの形状的特徴について報告する.

対象
 対象地は秋吉台南部の若竹山(標高253.4 m)を含む北東-南西約1.0 km,北西-南東約0.8 kmの範囲である.標高は230–270 m程度であり,地形面区分では若竹面に該当する. 数値地形モデルデータは,2020年3月5日(山焼きの11日後)に撮影されたUAV連続写真(813枚,OL率約80%,SL率約70%,解像度約3.5 cm/px)から作成されたDTMデータ(約0.16 mメッシュの標高データ)と,それらを用いて作成したドリーネ形状のShapeファイルからなり,美祢市教育委員会より借用した.解析対象としたドリーネは全238個である.

方法
 GISソフトQGISを用いた解析(寸法の計測: Fig. 1)および画像解析ソフトImageJを用いた解析(寸法・形状記述子の計測)の2つを実施した.

結果:深さと形状の関係
 溶食が進むにつれドリーネが深くなることを想定し,ドリーネの深さと各諸元の散布図を作成して検討したところ,以下の傾向が認められた.
 a. ドリーネ底面の平面形状は,浅いと円形度(circularity),真円度(roundness)および面積包絡度(solidity)のバリエーションが大きいが,深くなるにつれ,円形度は0.65~0.85,真円度は0.5~0.8(=アスペクト比1.25~2),面積包絡度は0.88~0.95程度の値に収束する.
 b. ドリーネの断面形状は,深くなるにつれ,「皿型」(ドリーネ底面の平均半径/深さ:10前後)から「すり鉢型」(同:1未満)を呈するようになる.

考察:ドリーネの形状変化モデル(案)
 ドリーネの深さが溶食程度を反映すると仮定した場合,深さと断面形状(寸法の比)の関係は,ドリーネの成長過程の検討材料になると期待される.深さ(Dp)と底面平均半径/深さ(Rf/Dp)の形状モデル(回帰曲線Rf/Dp = 5.2694Dp-0.722, 決定係数R² = 0.6434, データ数N = 238を外挿)および深さ(Dp)と外縁平均半径/深さの比(Rr/Dp)の形状モデル(Rr/Dp = 8.8984Dp-0.457, R² = 0.6599, N = 90を外挿)をFig. 2に示す.深さを溶食程度の指標(敢えて縦軸表示)として捉えた場合,溶食が進むにつれて外縁(集水域)が大きく広がるのに対し,底面(表流水の収束域)の拡大は顕著ではない.このことから,秋吉台の溶食ドリーネの形成過程として,一度形成された表流水の収束域(地下への排水口)に周囲から表流水が流れ込むことで,周囲が次第に溶食され集水域が拡大するとともに,収束域が深くなる(標高が低下する)という過程が示唆される.この形状は,Péntek et al. (2007)による4つのタイプ分類のうち縁辺部拡大型(doline widening at rim)に相当するものと考えられる.

文献
Matsushi, Y. et al., 2010, Evolution of solution dolines inferred from cosmogenic 36Cl in calcite. Geology, 38, 1039‒1042.
室 良雄, 1975, 秋吉台のドリーネ形態. 地理科学, 23, 45‒49.
Péntek, K. et al., 2007, A morphometric classification of solution dolines. Zeitschrift für Geomorphologie N.F., 51, 19‒30.
曽根原崇文, 2022, 秋吉台若竹山周辺におけるドリーネの形状的特徴の予察研究. 地質技術, no. 12, 19‒31.
曽根原崇文, 2023, 秋吉台若竹山周辺におけるドリーネの深さ,底面寸法および形状記述子. 地質技術, no. 13, 投稿中.