10:30 AM - 10:45 AM
[T15-O-12] Diatom assemblages of the Oyamada to Iimuro Formation of the Lower Pleistocene Kazusa Group in the Tama Hills, central Japan: focusing on the occurrence of Lancineis rectilatus
Keywords:Early Pleistocene, Diatom fossil, Biostratigraphy, Kazusa Group, tephra
Lancineis rectilatusは関東平野中央部の地下に分布する沿岸浅海成の更新統から記載された化石珪藻である(Naya, 2010).関東平野中央部における本種の産出は,前〜中部更新世の約1.45~0.7 Maに限られることから,本種は沿岸浅海成層の層序指標としても重要である(Naya, 2019).関東平野における本種の初産出層準は,埼玉県春日部市の春日部コアにおいて,Kd12 Typeテフラ(納谷ほか,2017)の下位に挟まるKK-M15海成層(納谷ほか,2017)の中に認められた(Naya, 2019).しかし,Kd12 Typeテフラの対比候補となるテフラが房総半島や多摩丘陵の上総層群に複数存在するため(納谷ほか,2017),Kd12 Typeテフラとの層位関係から推定されるL. rectilatusの初産出層準の層位と年代は正確には分かっていない.
多摩丘陵の上総層群においてKd12 Typeテフラと特徴が類似し対比候補となるテフラは,連光寺層の田中(TN)テフラ,稲城層の黒川(KK)テフラ,読売(YM)テフラ,飯室層の西久保(NK)テフラである(納谷ほか,2017).本研究では,多摩丘陵の上総層群におけるテフラ(鈴木・村田,2011)とL. rectilatusの産出層準の層位関係を明らかにすることを目的として,多摩川河床と支流および横浜市本牧の多摩丘陵に露出する,小山田層から飯室層に産出する珪藻化石群集を検討した結果を報告する.
多摩川河床および多摩川支流では,小山田層,連光寺層,稲城層下部,飯室層から珪藻化石が産出した.小山田層と連光寺層層では,内湾性の海〜汽水生浮遊性珪藻を主体とし,稲城層下部では海〜汽水生付着性珪藻を主体とする珪藻化石群集が得られた.飯室層の珪藻化石産出状況は悪く,海〜汽水生浮遊性および付着性珪藻がわずかに産出する程度だったが,その中にL. rectilatusが含まれることが明らかになった.現在多摩川河床においてNKテフラは観察できないが,かつては今回観察した露頭よりも下位にNKテフラが露出していた(小泉,1995).横浜市本牧の露頭では,王禅寺層と飯室層相当層から珪藻化石が産出した.この露頭から産出する珪藻化石は内湾〜外洋性の海生浮遊性珪藻が優占し,低緯度珪藻化石帯(NTD)の指標種である,Nitzschia reinoholdiiなども含まれる.飯室層相当層のNKテフラ直上の層準から,ごく少量であるがL. rectilatusが産出した.
以上の結果から,多摩丘陵の上総層群では少なくとも飯室層のNKテフラの上位からはL. rectilatusが産出することが分かった.小山田層,連光寺層,稲城層からはL. rectilatusは産出しないことから,TN,KK,YMテフラがKd 12 Typeテフラに対比される可能性は低く,L. rectilatus 産出層準であるNKテフラがKd 12 Typeに対比される可能性が高い.この対比が正しければ,L. rectilatusの初産出年代は,NKテフラの年代(1.392 Ma: 鈴木・村田,2011)よりも少し古い年代に制約される.ただし,今回はNKテフラより下位の層準からはL. rectilatusの産出が確認されなかった.これは,露頭の連続性が悪く稲城層,王禅寺層,飯室層の全区間を連続的に検討できていないからかもしれない.今後,ボーリングコア試料の検討なども含め,連続した層序区間での検討が望まれる.
文献:小泉(1995)川崎市青少年科学館紀要,(6),41–47.納谷ほか(2017)地質学雑誌,123,637–652.Naya, T. (2010) Diatom Research, 25, 111–124. Naya, T. (2019) Quaternary International, 519, 131–143. 鈴木・村田(2011)地質学雑誌,117,379–397.
多摩丘陵の上総層群においてKd12 Typeテフラと特徴が類似し対比候補となるテフラは,連光寺層の田中(TN)テフラ,稲城層の黒川(KK)テフラ,読売(YM)テフラ,飯室層の西久保(NK)テフラである(納谷ほか,2017).本研究では,多摩丘陵の上総層群におけるテフラ(鈴木・村田,2011)とL. rectilatusの産出層準の層位関係を明らかにすることを目的として,多摩川河床と支流および横浜市本牧の多摩丘陵に露出する,小山田層から飯室層に産出する珪藻化石群集を検討した結果を報告する.
多摩川河床および多摩川支流では,小山田層,連光寺層,稲城層下部,飯室層から珪藻化石が産出した.小山田層と連光寺層層では,内湾性の海〜汽水生浮遊性珪藻を主体とし,稲城層下部では海〜汽水生付着性珪藻を主体とする珪藻化石群集が得られた.飯室層の珪藻化石産出状況は悪く,海〜汽水生浮遊性および付着性珪藻がわずかに産出する程度だったが,その中にL. rectilatusが含まれることが明らかになった.現在多摩川河床においてNKテフラは観察できないが,かつては今回観察した露頭よりも下位にNKテフラが露出していた(小泉,1995).横浜市本牧の露頭では,王禅寺層と飯室層相当層から珪藻化石が産出した.この露頭から産出する珪藻化石は内湾〜外洋性の海生浮遊性珪藻が優占し,低緯度珪藻化石帯(NTD)の指標種である,Nitzschia reinoholdiiなども含まれる.飯室層相当層のNKテフラ直上の層準から,ごく少量であるがL. rectilatusが産出した.
以上の結果から,多摩丘陵の上総層群では少なくとも飯室層のNKテフラの上位からはL. rectilatusが産出することが分かった.小山田層,連光寺層,稲城層からはL. rectilatusは産出しないことから,TN,KK,YMテフラがKd 12 Typeテフラに対比される可能性は低く,L. rectilatus 産出層準であるNKテフラがKd 12 Typeに対比される可能性が高い.この対比が正しければ,L. rectilatusの初産出年代は,NKテフラの年代(1.392 Ma: 鈴木・村田,2011)よりも少し古い年代に制約される.ただし,今回はNKテフラより下位の層準からはL. rectilatusの産出が確認されなかった.これは,露頭の連続性が悪く稲城層,王禅寺層,飯室層の全区間を連続的に検討できていないからかもしれない.今後,ボーリングコア試料の検討なども含め,連続した層序区間での検討が望まれる.
文献:小泉(1995)川崎市青少年科学館紀要,(6),41–47.納谷ほか(2017)地質学雑誌,123,637–652.Naya, T. (2010) Diatom Research, 25, 111–124. Naya, T. (2019) Quaternary International, 519, 131–143. 鈴木・村田(2011)地質学雑誌,117,379–397.